第6話

「おはよう」

 朝ラインを誠に送る。

「おはよう」

 帰ってくる返事。


 誠と連絡を取っていたとき、私は転職をしていた。この地では珍しいライターの職業。

 朝職場に着いたら電話取材の準備。今日書き上げる原稿の本数のチェックと今日のスケジュールの確認。夜7時には帰れるかな。そんなことを思いながら仕事に手をつける。


 「お昼休憩だよ。誠はお昼食べた?」

 「うん。俺も食べたよ。」

 そんなたわいもないやりとりが続く。


 午後は午前中に電話取材した内容と明日掲載するイベント情報のまとめ原稿を書く。特別なことが無ければ夜7時には帰れる。


 「帰ったよ」

 「おかえり」

 「ご飯食べてお風呂から上がったらまた連絡するね」

 「うん」

 

 動画で見ていた誠とのやりとり。お風呂に入りながら今日のやりとりを思い出す。明日が楽しみで、今日が幸せで、これがいつ終わってしまうのか不安も同時にあって。お風呂から上がると、もう誠と何を話そうか考えている。


 「今日仕事で先輩に注意されたんだ。わたしポンコツだからさ、、、」

 「ポンコツじゃないよ。大丈夫」

 誠はいつだって優しい。誠のことで毎日がどんどん染まっていく。精神的に弱くなったとき、私は一人で生きて行くんだと心に決めた時期だってあった。

 でも、そんな気持ちは誠の優しさにどんどん溶かされていく。


 「おやすみ」

 「おやすみ」

 今日も一日が終わる。誠ではじまって、誠で終わる。布団に入り、電気は消して携帯は充電しながら寝るまで誠とやりとりする。眠くなったら寝る。誠の存在が大きくなるほど、影は濃くなっていっていた。

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