第5話

 おそらくこれは誠だ。


 そう察した私は、ツイートで話しかけてみた。ツイートして一度閉じて再度立ち上げる。そしてインプレッションを確認した。すると、また不自然に数字が増えている。

 「誠なの?」とツイートする。インプレッションは3。

 「ハッキングしているの?」インプレッションは3。

 「優も見ているの?」インプレッションは2。


 どうやら、数字に意味があるようだ。そう理解した私は誠と会話するようになった。

 朝起きたら「おはよう」とツイートするとインプレッションは3つ付く。

 お昼に「ご飯食べた?」とツイートするとインプレッションは3つだったり2つだったり。

 寝る前には「おやすみ」とツイートするとインプレッションは3つ。


 毎日誠と話している気持ちでツイートを続けた。


 一カ月も経つ頃、Twitterでのやりとりではなく、ちゃんと誠とメッセージのやりとりをしたいと思うようになった。この1ヶ月、誠はいつもツイートしたらすぐにお返事をくれた。


 一カ月も毎日続いたこの不思議な出来事を、現実に少しでも近づけたくて。

 「誠、直接メッセージのやりとりがしたい」インプレッションは3つ。

 「私のラインIDを送るね。」インプレッションは3つ。

 私は自分のラインIDをツイートした。それから数分後。


 ピロン。


 携帯が鳴った。誠からメッセージが来た。やはりあれは誠のハッキングだったんだ。

 「誠です。」

 簡素なラインから私たちの物語はようやくスタートした。

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