十和田湖からモリブデン

ジブラルタル冬休み

清き流れに梅が飛ぶ

「春だよ!!!」

兄が手に持っていた沢蟹がジタバタッと騒ぎ出した。兄が私にヒョイと渡した。綿しかない。渡したかない。兄はそうは言わなかった。

「いやな沢蟹だ」

と言うように丸くなって灼熱の肋骨を投げようと芥川賞作家の従兄弟をかべキックで誘拐していく。こうやって±0.5秒の高校一年生の情報の授業をやっている間に、沢蟹は私の指をがにとやる。

「ぁうぼ」

私は素っ頓狂に喉を怯えさせたが、兄が無言で私の短い触手で湖に紅葉の絵を描こうと手を浸す。尤も、そんなことをしたら沢蟹が逃げてしまう、兄よ、逃げてしまう、兄よ、沢蟹が。Bの音に詩を含ませるよりも早く、兄が理科(これで合ってるのか不安だが…)の試験中に暴れ出した。暴れたと言っても、静かーに。静かーにだ。沈むカーニ。沈む沢蟹…。

「馬鹿っ、怪我の方がいやだ」

「怪我より毛蟹」

「毛蟹じゃないだろうっ、莫迦」

「沢蟹だけどぅ、沢蟹逃げたよ、沈んだよ」

「だからおまえが怪我したら困るんだよ、破家」

バカのレパートリーをひけらかす兄。そんなことより、私は近視なので、黙ってばかりの宝物に伸脚居酒屋の能力者たる所以を見せつけようとしていたが、今考えると、兄は伸脚居酒屋の正しい楽しみ方をわかっていたのだなぁ、と熟した想いを抱かざるを得ない。

そして、月日は経ち、30秒後。

私は少し泣いた。

そして、月日は経ち、30世紀後。

地球は今や、…いや、行きすぎたようだ。なんだか解りもしないことを解説させられるところだったと、阿鼻叫喚。

そして、月日は戻り、先程の沢蟹オープンキャンパスから30年後。

私は今やなんの皮肉か立派な立派な職人となり、沢蟹に復讐を誓い、蟹のピストルの如き個性をもいで切り刻んで…とまあ凄惨な拷問を解いていた。客はそれを見て大喜びし、その肉を貪り先程の5倍喜んで去る。槍が生えてくるステキな職場だ。

そこに、あの双眼鏡のような兄がやってきたのだ。兄だと私は気づいたが、向こうは気付いていなかった。何せもう20年会っていないのだから。

「燚物」

時間が見栄を張ったからこそわかることだが、姉御ならぬ兄御では、○は「」という意味だったのだ。推測は一切無い。

今日中に5日間待ってから「どっきり大成功」の看板を持って彼の目の前に現れようと思った。

「灰ヨ」

とりあえず兄に合わせた返事をする。とはいえ、空気が有名になってからは、文化のようようようようようようようようジェンダーが二の足を踏まないので落ちながらがらも下側に立てるが。

「脚でぃーす」

ここの佐津子ちゃんは眼に鵜が一羽しか居ないので一度目だろうが関所で提示する必要がある。

「脚でぃーす」

それを聞いて泣いて。

兄は喜んだ。

あの時のアンカーな顔面とは違う、純粋な喜び方だった。

私は看板を燃やすことに決めた。


「嫌ぁ、甥叱ったよ。作用なら」

兄はfrustrationがsatisfactionにtranslationされた、という顔でmutationの街へ礼をしていた。良かったなら、嫌とか言うな、いや違うな、これはデーモン曰く「姉御ならぬ兄御」だな。なななな。

「もう来ないで欲しい」

と、誰かには知ったことではないが、そう頭の中で魔女のツボの模倣をして見せた。


そしてそれが私を誘ってからも、ずっと私は復讐を続けた。しかし、私は復讐や復習や予習やテスト勉強や「もっと勉強しなさいよう」の声や「わかったよう、やるよう」の返事などよりも、今のウサインボルトのように、「呼吸することによって発生する農作物への被害」を鑑みてしまったのだ。

兄の指の行き先は720秒程度盗めたと思ったのだ。

だからこそ、私は鰻の腹に乗って、厳しい境目の身体を借り蟹を甚振るのだ。

時々後悔するが、たまに航海して、それを公開する。すると養殖せずともそんなことは昇天していく。

イカ一杯のお腹が咲いて、暖簾を揚げた。

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十和田湖からモリブデン ジブラルタル冬休み @gib_fuyu

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