第14話 依頼者たち

 唐突にまったく異なる話しになるが、

 佐藤賢市、71歳はトラックに轢かれ死んだ。


 71歳と高齢であったが、ライトノベルをこよなく愛していた。

 特に巨乳ヒロインの登場するものを好んだ。


 佐藤はライトノベルによくあるように、死んだら転生したいと考えていた。

 そして彼はいま、見渡す限りの草原に一人立っている。

 空には太陽が二つあった。

 ああ、俺は転生したんだ! と思ったが、体がない。


 異世界に転移はしたようだが、転生はしていないようだ。

 異世界転生するとき現れる女神様もいない。

 佐藤は幽霊として異世界に転移したようだ。

 その幽霊は、異世界の草原にプカプカと浮かんでいた。



***



 さて、神崎探偵事務所ではスライムがしきりに神崎太郎のところへ連れていけと言っていてうるさかったが、神崎は無視していた。

 じきに、次の依頼者が来るためスライムに構っている暇はない。



 その依頼者は、予約した時間であった午前10時ぴったりにやって来た。

 神崎に仕事を依頼する人間は、だいたい皆、時間ぴったりにやって来る。


「ココアちゃんがいなくなってしまって、探して欲しいんです~」


 依頼主は20代前半の女性であった。

 ココアちゃんというのは猫である。

 神崎は『探偵ノート』に「ココアを探す若い女」と書いた。



 次の依頼者は、予約した時間であった午前11時ぴったりにやって来た。


「トラスケがいなくなったんや、探して欲しいんや」


 依頼主は神崎と同じくらいの歳の男性であった。

 トラスケというのは猫である。

 神崎は『探偵ノート』に「トラスケを探す男」と書いた。


 こんなに続けて猫探しを依頼されるとはと、神崎は不可解に思った。

 連続猫失踪事件である。

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