第18話:報告

「ユリア太妃殿下、お加減はいかがでございましょう?」


 セザール筆頭城代家老殿が、嘘を見抜こうと鷹のような目で私を見ています。

「私は嘘などつきません」と言っても、全然聞く耳を持っていません。

 忠誠無比の家臣と言うのは、結構鬱陶しいモノだと、最近初めて気がつきました。

 実家にいた頃は両親に虐待されていたせいで、主人である両親におもねるため、私を邪険にする家臣しかいませんでした。

 あの頃は忠臣が欲しいと心から望んでいたのですが、いたらいたでしんどい所もあるのですね、まあ、私は大切な主君の妻としての忠誠を得ているだけですが。


「もう大丈夫ですよ、あまりに不安にさせるような事でなければ、もう心労で倒れるような事はありませんよ。

 セラン皇太子殿下は御無事なのでしょ?

 だったら大抵の報告は負担にならないと思いますよ」


「ですが、元婚約者の方や、ご両親の事でも大丈夫ですか?」


 セザール筆頭城代家老殿は、私にアーサーへの想いが残っているなんて疑っていないでしょうから、処罰が残虐でも大丈夫かという謎かけですね。

 となると、本命は他人のアーサーではなく、血のつながった両親や妹が残虐な刑で処罰されても、大丈夫かと心配してくれているのですね。

 裏切者のアーサーや妹など、どれほど残虐な殺され方をしても大丈夫です。

 私を虐待し続けた両親も同じですが、自分の思いを勘違いしている可能性もありますから、ここは慎重な返事をしておきましょう。


「私を裏切ったアーサーと妹のシャンには恨みしかありません。

 幼い頃から私を虐待し続けた両親も同じですが、心の奥底までは分かりません。

 ですから、報告するかしないかは、セザール筆頭城代家老殿が決めてください」


「承りました、では徐々に軽い話からさせていただきます。

 まずはプラット王家の者達は全員捕らえました。

 重臣や有力家臣も同じように捕らえましたが、その中にエンドラ公爵家も含まれるのですが、その処罰をどうするのか、率直なお気持ちを聞かせていただけますか」


 なるほど、そういう事でしたか、ようやく分かりました。

 セラン皇太子殿下は、私に復讐の機会を与えてくださるつもりなのですね。

 私が自分の手でアーサーと家族を殺したいと言ったら、叶えてくださるでしょう。

 自分の手で処刑はしないが、残虐な拷問をくわえて欲しいと言えば、それも叶えてくださるでしょう。

 もちろん残虐な処刑法をお願いしても叶えてくださるはずです。

 ですが、私の言うべき事は決まっています。


「私はセラン皇太子殿下の太妃です。

 皇国と殿下の不名誉になる事は望みません。

 皇国と殿下の名誉に傷がつかない方法で、適切な処罰を願います」

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