第12話 「くるみ割り人形」東京へ

 地方公演をなんとか乗り切り後は関東圏の公演のみになった。

神奈川から始まり東京4公演そして最後は埼玉だ。

ここにきてまだ詩織の日のスケジュールが埋まっていない日がある。青山が迷っているというより団員をうまくはめられないのだ。明子以外のプリマは他の日は雪の女王をやったりアラブをしていたりする。プリマというよりファースト・ソリスト扱いだ。純粋なプリマは明子と詩織だけと言えるだろう。明子で始まり詩織でしめる、青山の構想だったものが崩れたのだ。明子はそんな彼を静観している。あまりの態度で助けようとは思わないのだ。自分のことに集中したい。

 できれば明美を東京で踊らせたいでもそんなことをまた出すと青山がどんな態度するかはわかっている。明美を1日入れいれば簡単に済むのにバカだ。

 そんなとき明子に"鎌倉のバァバから連絡があった。東京に戻っているなら食事でもしたいと言ってきた。バァバと言っても本当のバァバではなく風貌から団員みんながそう呼んでいる。

 鎌倉のバァバは大谷順子おおたにじゅんこと言い金持ちの令嬢で大のバレエファンだ。もともとは大阪なので関西に自分の名を配したバレエ団まで作った。順子の父はいわゆる成り上がりで不動産やホテルまで手広く商売をし巨額の富を一代で築いた。その後を順子が今は亡き夫と引き継ぎさらに大きくした。順子はそれを子供たちに譲り今は鎌倉で何不住なく暮らしている。

 そして大のバレエファンの彼女は大大大の明子のファンだ。

関西の順子のバレエ団にゲスト出演を明子に度々依頼するようになり元々関西のバレエ界のドン的な存在だったので交流するようになると順子の人柄やバイタリティー、経験豊富な人生など逆に明子が彼女のファンになり大好きになる。

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