論理寿司

夏川冬道

論理寿司本編

今年の全平行世界新人寿司職人トーナメントは大荒れに荒れていた。いや、冷静に考えれば大荒れに荒れているのは恒例行事だった。

発端の事件は3回戦第4試合のことである。優勝候補である、エントリー番号1129番、■■寿司の■■■■は外宇宙の名も知れぬ邪神をネタに不定形の触腕で見事な押し寿司に仕立て、高い技量を審査員に見せつけた。だが対戦相手のエントリー番号0256番、亜素期衣寿司の新発田深青丸は不敵な表情を崩さない。

「■■■■!」(新発田、何がおかしい!早くお前の寿司を出すのだ!)

「私はあなたよりも先に既に寿司を握り終えています。後はネタの鮮度の問題だけです」

■■■■の挑発を受け流す新発田の態度は余裕しゃくしゃくといったところだろうか?

「では新発田深青丸の寿司を実食する!」

審査委員長のグレート竹鶴の一声で寿司皿を覆っていた赤い布を取り払い、新発田の寿司の全貌が明らかになる!

「これは……!?」

審査員一同は新発田の寿司を見て驚愕した。なぜなら、そこにあったのは全てが01で構成された尋常ではない大トロ寿司だったからである。

「こちらは遺伝子レベルで電子的に作成された最高級論理マグロの大トロ中の大トロを使用した私の考える最高の一皿です。どうぞ、じっくりお召し上がりください」

審査員は恐る恐る新発田の寿司を実食するために口に入れる。その瞬間、審査員の脳内に最高級論理大トロのうま味が脳に直撃した!

「グワーッ!高品質な大トロの情報が脳内に入って多幸感が止まらない!」

「雨のサントロペ!恋のサントロペ!」

「あまりの大トロ情報濃度に絶頂(XTC)してしまった!」

「見ろ!千手観音のヤスが柏手衝動を抑えられない!」

「ピガガー!」

新発田の寿司のあまりのおいしさに審査員の心ははちきれんばかりだった!

「■■■■!」(バカな!俺の寿司が修行して数か月の寿司職人に敗れるとは!)

悔しがる■■■■を横目に新発田は勝利を確信した笑いを見せる! 見事なジャイアントキリングに、会場は大歓声に沸きあがる!


ー一方、地球のとある寿司屋、ネオ築地寿司ではモニターでこの試合を真剣な表情で鑑賞する二人の寿司職人の姿があった。

「なんたる尋常ではない腕を持つ寿司職人でやんす!一郎の兄貴はこれからこんな強敵の寿司職人をあいてにしないといけないでやんすか!?」

「安心しろサブmk2、俺の電子頭脳には1万人の伝説の寿司職人のデータがインプットされている、だからどんな相手にも勝ってみせるさ!」

強力な寿司職人である新発田の試合ぶりを見てこう言い切る一人の寿司職人、その名は江戸前一郎、またの名をパーフェクト寿司サイボーグICHIRO! 全平行世界新人寿司職人トーナメントの優勝候補の一人である!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

論理寿司 夏川冬道 @orangesodafloat

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ