精役少女 TSまひる!

エプソン

プロローグ

 砂漠で身が溶けるような夢を見て、真昼まひるは逃げ出すように飛び起きた。

 全身寝汗で濡れており、衣服が肌に纏わり付く感触が気持ち悪かった。


「うぅ……」


 頭が痛い。それに胸も重い気がする。

 ベッド脇の棚に置かれた目覚まし時計に視線を移す。午前六時。起きるには早いが眠気よりも汗を流したい気持ちが勝った。

 ベッドから脱出しようとして、恐竜のぬいぐるみが布団の上に鎮座していることに気付く。

 クッション用として作った手製のオリジナル恐竜アケボノザウルス。寝起きなこともあり記憶が混濁して思い出せないが、少なくとも布団の上に置いた記憶はなかった。


「ま、いっか」


 大して気に掛けることなく真昼は部屋から出た。そしてまだ就寝中であろう母を気に掛け静かに階段を降りると、一目散に脱衣所へと向かった。

 胸は重いけど身体全体は軽い。それに髪も何時もより何だか鬱陶しいような。

 濡れた上着を脱ぎドラム型洗濯機へと投入する。入浴時のルーチンに従いながら下着も同じように処理し浴室へと赴く。

 白いバスチェアに腰を降ろし蛇口を捻る。


「つめたっ!」


 頭上にあったシャワーからお湯に切り替わる前の水を浴びてしまい、思わず声が出る。しかしながら、やたらと火照った身体のせいか驚きと同じくらい気持ちよさがあった。


「ふぇぇ……」


 シャワーヘッドを持ち水流を頭に当てると、低めの温水が形容しがたい快感をもたらした。また、渇いた皮膚に水分が染み込む感覚が生きているという感情を高まらせた。


 上がったら今日はボクが朝ごはん用意しよう。


 段々と覚醒しつつある思考。不意に手を胸へと持ってくと今度は猛烈な違和感が真昼を襲った。


「ん、んんん?」


 太った?


 何か柔らかい感触が手に辺り現実的な感想を抱く。今度はしっかりと目で確認すると、確かに昨日までなかった脂肪が胸に付いていた。


 え、え、えー!


 今度は両の手で掴む。大きいとはいえないが女性らしい乳房が存在していた。

 突如訪れた訳の分からない恐怖に頭が支配される。だが、確かめる必要があるものがもう一つあった。


「……」


 恐る恐る視線を股間へと移す。

 悪い意味で胸が高鳴り、シャワーを浴びている最中だというのに背中が凍り付いたように冷たくなった。


 無い。

 無い。

 無い!


 何度確認してもあるべき場所にあるべきものが無い。それが非常に恐ろしく、真昼が恐怖に囚われるには十分すぎる程の事実だった。


「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!」


 感情が整理出来なくなり叫び声を上げる真昼。


「どうしたの真昼くん!」


 浴室の扉を突き破るような勢いで寝巻き姿の女性が飛び込んでくる。真昼が叫んでからたった数秒しか経っていないにも関わらずだ。


「どうしようお母さん……」


 両手で股間を押さえながら真昼は母の方へと振り向いた。未知の病気に対する恐怖により顔を真っ青にさせながら。


「ボク、女の子になっちゃった」

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