見据える先はいっしょ。だって前を向いているから。

ひょんなことから研究所の女性職員と実験対象である子供の逃走劇に巻き込まれた、トラック運転手の話……というと、内容をイメージし易すぎるかもしれませんが、中身はその何倍も濃いです! 
まず作者の陽澄すずめさんが人物の造形はもちろん描写もすごく上手い方なので「本当にこういう人いそう」って思えます。舞台としてはパラレルワールドの日本かつ未来なのかな。現実とは少し次元が違う世界なのですが、それでもリアル感は抜群。そしてすずめさんは文章も上手いので心に残る表現もいくつか。皆さんも「好きな文章」が見つかるはず。
平凡な人生を送ってきたはずの(とはいえ紆余曲折ありましたが)トラック運転手が巻き込まれた非日常。前を向いて走り続ける覚悟と、一緒に逃げる研究所の女性職員の、「未来を育みたい」という気持ち。
多分ですけど、最高の関係っていうのは見つめ合うのよりも同じ方向を見ていることを指すのだと思います。
これはそんな、前を見て、未来を守る二人が織りなす、大人の青春ストーリー。
是非読んでみてください。

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