知恵集まる貿易都市 ゼーラント王国

母なる海に親愛を

【エイハブ山脈の隠れ里:元々エイハブ山脈には100を超える集落が存在したが、オークの大量発生や大雨により数を減らし、遂に最後の1つが存在を消した。ルシエドは薄っすらとだが、山脈に集落が存在していることに気づいていたようだ。】


馬車がゴトゴト揺れる。

「うっぷ……気持ち悪い……」

「大丈夫ですか?」

元々車の様な狭い空間に慣れていない俺には馬車の旅はかなり厳しいものがあった。

「お水飲みますか?」

「お願いします……」

リゼとミーシャさんは慣れているのか涼しい顔で座っている。

「それにしても……凄い護衛団ですね……」

「ええ、確かにそうですね……」

俺達の他にも屈強な護衛達が馬に乗って周囲を警戒している。その中央にエレノアさんの乗る馬車があるのだ。

「まあ……貴族領主の護衛ですからね。これくらい当然ですよ。」

ミーシャさんが苦笑しながら言う。

「……それにしてもミーシャさん以外の使用人は来ないんですか?」

「私は鍛えてますので!」

ミーシャさんは得意げな表情をする。

「なるほど……所でリゼは何読んでるんだ?」

「魔法書だよ。学園に入る前に勉強しとかないとね。」

流石優等生、もう勉強してるとは……というか俺達、護衛する側なんだが……

「……うぅ。」

酔いを紛らわす為に窓から外を見ると、綺麗な砂浜が見えた。

「クリエム海岸だね。」

確かこの大陸の東端は八割砂浜って聞いたことがある。海は青く透き通っていて、波も穏やかだった。

「あの辺りの海には魔物がいないんですよね?」

「いますよ。」

「えっ?」

……いるらしい。しかし見た感じでは穏やかな海の様だが。

「海は地上以上に食物連鎖が激しいんです。確かトモヤさんはエルドシュリンプとエルドオオウソをご存知ですよね?」

「はい。」

「あの海にはそれ以上の魔物が生息しているので、海に近付くのは危険とされているのです。」

「……何がいるんですか?」

「そうですね……具体的には鯨と鰐ですね。」

鯨と鰐がこの海で一番危険?リゼも「鰐ならともかく鯨?」という顔をしていた。

「ガリアン・ノアムーンとガリアン・アトラスト、どちらも手を出せば死は免れません。」

「そ……そんなに危険な生物なんですか!?」

「はい。鯨の方は深海から突如現れて船を沈没させると言われています。飛行能力もあり、その巨体は武器を全く通しましせん。」

「……鰐の方は?」

「鰐の方も危険です。少しでも近付けば身体が溶けるほどの猛毒や菌を持っているとされています。そして最も厄介なのは数の多さですね。群れで行動する為、一匹でも目撃すれば近くにはその二十倍はいると思って下さい。」

想像しただけで鳥肌が立つ……

「でもそんなに強いなら、なんで地上じゃなくて海に居るんですか?」

リゼが疑問を口にするとミーシャさんは少し困ったような顔になった。

「それは分かりません。一説には海底の財宝を守護しているだとか、地上の獲物の味が嫌になって逃げたとか言われてますね。」

「……それって、ただ食い意地張っているだけじゃないですか?」

「ふふっ確かにそうかもしれませんね。」

ミーシャさんが笑うと同時に馬車が大きく揺れた。どうやら遂に着いたようだ。

「さあ着きましたよ。ここがありとあらゆる知恵が集まる学術都市、ゼーラント王国です。」

そこは白い城壁に囲まれた美しい街だった。主な建造物は赤煉瓦で造られており、中央にある時計塔はこの街のシンボルらしい。

「綺麗な街!!」

リゼは初めて見る光景に感動している。よく見ると街中の水路が張り巡らされており、街の至る所に橋がかけられていた。細い小舟が行き交っている。

「それでは私はお嬢様の所に行ってきますね。お二人は観光でもしていてください。」

と言ってミーシャさんは馬車を降りていった。

「まるでベネチィアみたいだね……」

「行ったことあるのか?」

「うん。一度だけだけどね。」

そう言ってリゼは微笑む。

一応、周囲をしっかり見渡しておくが特に異常は見られない。

「じゃあ行こうか。」

「ああ。」

俺達は馬車から降りると、早速街へと繰り出した。


――――――――――――――――――――――――――

現在のステータス

生命力:B

魔 力:C

体 力:C


攻撃力:B

防御力:C

魔力攻:D

魔力防:D

走 力:B


現在使用可能なスキル

●身体、精神、霊魂に影響するスキル

『旋律』音や歌声を響かせ、自分や他者に影響を与えるスキル。

『鑑定』情報を調べ、表示するスキル。※現在表示できる情報は全情報の10分の1である。

『簡易演算(レベル1)』簡単な計算を解きやすくし、記憶力や思考力を高める。

『仮説組立(レベル2)』考察によって生まれた仮説を組み合わせて信憑性がある考えを導き出す、また記憶力や思考力を高める。

『解読』文や言語を理解するスキル。

『敵意感知』近くにいる人族や魔物の敵意を感知するスキル。

『熱感知』目視可能な範囲の温度変化を感知するスキル。

『多重加速(レベル2)』加速を重ねることにより、更に速度を上昇させるスキル。

『大蛇の育成者』タイタンの幼体を育てる者、レベルアップ時にタイタンのスキルを獲得することがある


●技術

『解体技術』解体の技術を高めるスキル。対象はモノだけではない。

『加工技術』加工の技術を高めるスキル。

『貫槍技術』貫通に特化した槍の技術を高める。

『斬槍技術』斬撃に特化した槍の技術を高める。


●耐性

『寒冷耐性(レベル4)』寒さを和らげて、活動しやすくする。

『苦痛耐性(レベル4)』痛みを和らげて、活動しやすくする。

『毒耐性(レベル1)』毒を弱体化させて、活動しやすくする。

『爆音耐性(レベル2)』爆音を和らげて、活動しやすくする。

『風圧耐性(レベル1)』風や衝撃に対するダメージを和らげて、活動しやすくする。


●魔法

『火魔法(レベル3)』火を操る魔法。

『水魔法(レベル1)』水を操る魔法。

『風魔法(レベル1)』風を操る魔法。

『時魔法(レベル1)』時を操る魔法。

『生活魔法』モノを綺麗にしたり、簡易的な回復を行う。


●加護

『死者の加護』死した者から生きる者に与えられる加護。

『象兵の加護』ヤコバクから異種族に与えられる加護。

『大蛇の加護』タイタンから異種族に与えられる加護。


現在の持ち物

銀の槍(緑王):ヴィクター・アガレスの槍。オークロードの額にあった宝石の欠片で強化し緑王という名前が刻まれた。

冒険者カード:名前、性別、年齢が書かれたカード。特殊な魔法道具が使われているため個人を特定できる。

毛布:ハウンドの皮をつなぎ合わせた物。粗末だが、トモヤがこの世界で初めて作ったもの。

黄色の水晶:エレノアからのプレゼント。微かにオーラを感じる。

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