第14話 水属性のリザードマンピッチャー現る

 里佐土りさど万太郎まんたろうはプロも注目する好投手だ。左のスリークォーターからMAX147キロのストレートと切れ味バツグンのスライダーを投げ、強豪きょうごう校を抑えてきた。味方のエラーが無ければ、甲子園に出場できただろう。



 そんな彼は、味方の守備に頼らず、相手を三振で抑えられる力を欲していた。



「決めた! 俺はチャップマン級の豪速球が投げられるモンスターになりたい! 悪魔、頼むぜ?」


「ワカッタ。ババババッバーバババーバー!」



 悪魔のクマが手を振れば、里佐土の全身に電撃が走った。



 里佐土の全身が青く染まっていく。触ってみれば、新品の掃除機の表面のようにつるつるしている。腕回りに少し筋肉がつき、制服がきつくなって脱ぐ。腹から胸にかけては水色で、腹の筋肉が6つに分かれていた。



「おー、シックスパッド! 生で見るの初めてだよ」


「ヘヘヘ。憧れてたんだー、この体型」



 彼の太腿は競輪けいりん選手のように太くなる。かかとが浮き上がり、足の指と指の間にカモノハシのような指かきがついた。尻の付け根からは、しなやかな尻尾が床まで伸びて、魚のようにピチピチはねる。彼は尻尾の新たな感覚にはしゃぎ、スマホで撮りまくった。



「スッゲー! 俺、めっちゃ強そう!」


「残るは顔だけだね、里佐土りさど君」



 彼の鼻の穴が広がり、口とともに真っすぐ前へ伸びる。全ての歯がギザギザに尖り、舌の先端が二又に分かれる。坊主頭も青くなり、光を放つ。瞳は昼間の猫のように細長くなり、白目の部分が赤くなった。その顔はトカゲに似ている。



 ただ、背中から尻尾にかけて黒い突起が無数に生えているので、現実のトカゲとは若干違う。



「うおおおおおお! この俺の体は何なんだぁ?」


「リザードマンダヨ。サァワザヲダシテミテ」



 悪魔のクマに言われて、里佐土りさどは何か出そうとする。左手から何やら冷たい物が出てくる。それは、水で出来た野球ボールだった。彼がそれを窓目がけて投げれば、時速180キロの豪速球となり、窓を割った。



「へー。相須あいす先生と違って、俺のは手から出てくんのか」


「これならマンティコアを倒せそうだねぇ」



 アイス・ビーストとリザードマンは互いの顔を見合わせて、ニヤリと笑う。



「イマカラ、フタリトモ、オクジョウニイッテ、マッテテクレ。オレガ、マンティコア、ヨブカラ」


「「わかった!」」



 毛玉巨漢のアイス・ビーストとつるてか細マッチョのリザードマンは、悪魔のクマの忠実な僕と化して、割れた窓から屋上へ駆けていった。



(続く)

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