第3話 マンティコアはバリクソ強い

 私は酔っ払いのサラリーマンの背後に立って、何度も匂いを嗅ぐ。



 うーん、いい香り~。お酒飲みたくなってきたー。



「ん? うわぁ、バケモノ!!」



 振り向きざまにそれはないでしょう。と思ったが、誰だって、2m近いゴリマッチョな獣人を見たら驚くか。オレはむやみに後追いしない。



「いたっ!」



 駆け出したサラリーマンが、明らかに不良の中年男性とぶつかってしまう。ヤンキー男は舌打ちして、サラリーマンを睨む。



「す、すみません」


「すみませんで済んだら警察はいらねぇよなぁ!?」



 ヤンキーは拳をポキポキ鳴らして、頭を左右に揺らしている。おい、これはヤバイんと違うか。



「お、お許しを」


「俺が許さねぇ!」


「暴力反対っ!」



 オレはとっさにヤンキーの拳を右手の平で止めたつもりだった。ところが、一瞬の内にヤンキーの体は宙に浮き、電信柱に激突していた。ヤンキーの頭が半分、電柱にめり込んでいる。



「ひっ、ひぃぃ、お助けー!」



 サラリーマンは現場から逃走する。ヤンキーは死んだように微動だにしない。



「こ、こ、この力は……」



 オレは世界一最凶さいきょうなモンスターになってしまったのだ。



(続く)

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