イオリ、帰還する

 地球の様な地球ではない惑星。

 日本の様な日本でない国。


 マコトとイオリが転移した場所。

 眩い光が長時間、発光し、その超常現象の周辺には、警察や自衛隊、マスコミなどが集まっていた。


 そして、光が集約するように、二人の人影を形作った。


 突然、人間が出現したのだ。


 それはマコトとイオリだった。



 二人は病院で精密検査を受けたり、様々な機関から事情聴取を受けたのち、自宅へ約1年ぶりに帰宅することができた。


 ウァサゴに渡された荷物は希望通り、政府の高官に手渡された。

 荷物の内容は、友好関係を望む書簡の他に、異世界の存在や転移に関する資料やこの世界には存在しない特殊な物質などだった。


 マコトの異能はすっかり消えて、普通の男子になっていた。

 イオリは相変わらずの普通の女子だった。


 家族は変わり果てた息子と娘に戸惑いつつも、帰宅をとても喜んだ。

 むしろ性別が変わったことで、歓迎された様子すら伺えた。

 二人の家は隣同士で、性別が変わったこともあり、二人の部屋の荷物はすっかり交換された。

 なぜか、衣類や下着のサイズがいい感じにぴったりだった。

 

 制服は異世界で取り上げられたので新調した。


 一学年下のクラスに編入され、学生生活に戻ることになった。

 もちろん戸籍の性別は変更された。



……



 イオリは、自分の部屋のベッドに寝転がっていた。


 平和で平等な世界のありがたみをひしひしと感じていた。


 女子であることには慣れたつもりだったが、いざ元の世界に戻ってみると、気恥ずかしくて仕方なかった。

 母親は嬉しそうにイオリを買い物やサロンに連れ回すので、かなり戸惑った。

 家事の手伝いや給仕を普通にする元息子に、両親はとても喜んでいた。

 

 ベランダの扉をあけて、マコトが入ってきた。

「イオリ、調子はどお?」


「最悪」


「始まったの?」


「うん」


「そっか、女子は大変だね」


「うっさい。エロ魔王」


「あはは。男子扱いしてくれてありがと」


「褒めてないし」


「マコトは調子良さげだね?」


「うん、父さんが喜んじゃってさ。

 遊びに付き合わされてる。

 プラモとかホビーラジコンとか、そう言うの一緒にやりたかったらしい」


「楽しい?」


「やってみるとハマるね。楽しいよ。

 今度サーキットに一緒に行こうよ。

 何台かあるから貸してあげる」


「えー、私じゃ無理。壊すだけだよ」


「元男子でしょ?」


「すっかり女子だし。

 見てるだけでいいならいく」


「まぁ、試しにやってみると楽しいと思うよ。

 今は無趣味?」


「うーん、母親が喜んじゃって、お洒落関係ばっかりだね。

 サロン巡りさせられてる。

 父親も喜んじゃって財布の紐がゆるゆる」


「箱入り娘か」


「ほんとそれ。門限まであるよ」


「あはは、そういえば僕も女子の時は門限あったな。

 なつかしい」


「したいけどできないのか」


「うん、ごめんね」


「いいよ、終わったらたのしも?」


「うん。奉仕する?」


「え? いいの?」


「いいよ、座って」



……



 夏が終わり、秋へと変わった。

 二人の長がった夏がようやく終わった。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

XP∅F キクイチ @kikuichi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ