第三十九話「乱戦」

「隼人!……どこに居るんだ」

「――――! しょう君、こっち来て」


 みどりの声がする方へと進むと、隼人が、校舎の裏でうなだれている。


「よお。あきら……」

「何やってんだよ。バカ野郎――――」


 良かった無事だ。

 でも、腹部から出血している。魔法で、止血したり出来ないだろうか。


「みどり、止血出来るか」

「うん任せて。…………隼人。治ったら、ちゃんと説明するんだよ?」

「みどり、ありがとう。でも……。章、お前に言わなくちゃならないことがある」


「――――それって、僕が居たらまずい話かい?」

 後ろに突如として気配が現れる。振り向くと、そこには一ノ瀬未来の姿があった。

 その瞬間、一ノ瀬との距離が遠のく。


「章。悪い、みどりと逃げてくれ……」

「――何言ってんだよ」

「そうだよ。私達そんなにやわじゃないよ」


「違うんだ。あいつの力は言うなれば俺らの元の形。魔法の先祖みたいなもの。それに敵うのは同じ力だけ」


 やはり、後ろには赤眼の少女がいる。ドラゴンには敵わないと直感が告げている。


「いいか。俺がお前らとの距離、空間をせき止めた力を解放して、上空へと飛ばすから、俺を置いて逃げろ」

「作戦ごっこは、よしなよッ――――リベラ、ブレスだ」


 少女が大きく口を開く。まずい。広範囲に火炎放射でも放つつもりだ。


「――――ウぅ、なんじゃ」

 なんだ?前は聞こえなかったのに、ドラゴンの声が聞こえる?

 何が起こったんだ。



 

 瞼を開くと、目の前に立っていたのは、深界と琴吹だった。


「ふう、何とか、間に合ったみたいだね」

「ごめんなさい。遅れました」

 

 手を赤眼の少女へと向けながら後退する琴吹の姿には頼もしさを感じる。


「リベラ……言葉が奴らにも聞こえてるのか?」

「まずい、契約に侵入されたようじゃ」


 契約に侵入?

 

「――章。奴らの魔法は、あの赤目と繋がって発動できる。それを妨害しろっ」

 

 石墨が助言を出すと、琴吹が精神魔法で撹乱する。

 どうやら、効いているようだ。



「――――隼人っ、俺らを逃がすんじゃ無かったのか?」

「へッ、気が変わった」

「……ようやくいつもの隼人が戻ってきた」


「ちょっと、よそ見しないの」

 琴吹の口調は、俺と話す時とは違うが、前よりも砕けたみたいだ。


 このメンバーならもしかすると、一ノ瀬すらを退けることが出来るかも知れない。


「それじゃあ。行くよ!」


 
















 

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