第五話「一歩」

「では、今日の授業はここまで」


 教師が六限目の終了を告げると同時に、教室はざわつき僕の嫌いな時間がまたやって来た。こうやっていつも一人の時間を過ごすことには慣れたが、掃除の時間はなんとも疲れる。


「おー、章。今日のは参加するのか。先輩としてあの部活の何たるかを、教えてやらんこともないぞー」


 だいたいこの男は一体全体僕にどうして絡んでくるのか。


「こら、隼人、そうやってうっとしい事ばかりしてるから友達がうざがるんだよ」


 さっき話しかけてきた四葉が、割って入ったおかげで安心したのも束の間。


「彰くんって、魔法使いだよね。きっと彰くんも気づいているんだよね。私が…………魔法使いだって」


 確かに、魔法使いには特有の粒子がお互いに見える。だが、僕は極力抑えている。どうして。


「ゴメンね、部活に入るって噂を聞いて、いてもたっても居られなかったんだ」


「今日は……参加するつもりです」


 僕は決意を胸にその控えめな声量の言葉を発した。


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