アイマール・フィンの冒険Ⅱ~受け継がれるもの~

イーストバリボー

 プロローグ

 その棺には古代文字でこう記されてあった


”強大な国を治めた王は死んだ”


”総ての権力を手に入れた女王は己を失い、欲望のままに国を操り悪政を布いた”


”そして永遠の命と美しさを求め”


”多くの生贄を殺し、処女の生き血を浴びた”


”しかし老いていく自らに絶望し”


”冥界の魔王と契約した女王は禁断の魔術に手を染めた”


”自らの魂と引き換えに不死の力を手に入れた女王は、人間である事を捨て冥界の眷属となる”


”暗黒の城で贅を貪った女王は無益な戦乱の世を生み、100年の長きに渡って民を苦しめた”


”しかし最後は民衆のため立ち上がった勇者と仲間達の剣に前に力尽きた”


”私たちは多くの犠牲をはらい女王を棺に封印した”


”不死の女王は仮の眠りについた”


”この棺を決して開けてはならない”


”この棺を開けた者には死が訪れ、その国はあらゆる災いをもって償うであろう”



「ゴホッゴホ!」


 ひつぎに積もったほこりを息で吹き飛ばした男がせき込む。


「ゴホッゴホ‥‥恐ろしい文言だが、すべて本当かな?」


 せき込んだ男に若い女の声が答える


「本当の話かどうか…それは大事じゃないわ、重要なのはこれを読んでもまだ棺を開ける気になるかってことよ」


「フフッ確かに……どんな頑丈な鍵よりも効果がある」


 ここはアラベス王国の王都アルビオン。街の中心にある王立博物館の少しカビ臭い部屋の一室。


 埃まみれの服に身を包んだ若い考古学者の男女がいた。


 二人は、棺に彫られた古代文字を解読する作業を徹夜で終えた所だった。


「持ち出してはいけない物を、掘り出してきてしまったようね……」


「発掘隊の方には何っていうんだ? 公開できれば博物館の目玉になるって息巻いてたぞ」


「これは公開出来る代物じゃない、この棺には触れない方がいいと思うわ」


「納得するかな?」


「それは……館長の判断に任せましょう」


「そうだな、それなら間違いない」


 その部屋にはその古い棺以外にも、様々な古代の遺物が所狭しと並べられていた。


 水晶で作られたドクロや、黄金のしゃく、羊皮紙に描かれた古代地図、未知の金属で加工された全身鎧、解読不明の文字が彫られたの黒い石板・・・。


 二人の主な仕事は、博物館の調査隊が大陸中から発掘してくる様々な古代遺物を、危険な物ではないか調査する事だった。


「誓ってもいい……こいつはかなりヤバい物よ」

 

「僕も同感だ、取り合えず今日の作業はここまでにしよう」

 


 二人の若い考古学者は、そう言うと部屋の扉を閉め頑丈な鍵をかけた。

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