第4話


森に入るととりあえずスキルの隠密行動を気配察知と合わせて発動させる。


左手にバックパックから取り外した魔弓を持ち、周囲を伺いなら進む。


時々見かける傷薬用の薬草と毒消し薬に使われる毒草を採取してバックパックに入れながら進んでいると気配察知に3体で行動する何かの気配が引っかかった。


「さて、ゴブリンか、ウルフか…。」


慎重に気配を感じる方へ足を進める。

すると木と木の隙間に、ちらりと茶色い肌のゴブリンが見えた。


気づかれないように少しづつゴブリン達の後ろ側へと距離を詰めながら移動する。

心の中でステルスゲー、ステルスゲーと呟きながら静かに移動する。


ふぅ~っと息を吐き、最低限の魔力を使いながら魔弓を構え右手を弦を引くように引く。

すると魔力でできた黒い矢が番えられる。

おおよそ50mほどだろうか。


ちょうど3体が一直線になったタイミングで矢を放つ。


ヒュッと風を切る音がして一番後ろを歩いていたゴブリンの後頭部に黒い矢が突き刺さる。

よし、と心でつぶやきつつ二射目の用意をする。


二射目の用意ができると同時に矢が刺さったゴブリンの身体がぐらりと傾き2体目の頭が目に入る。


「ふっ。」


と軽く息を吐きながら二射目。

黒い矢はヒュッと風を切り無事に2体目のゴブリンの後頭部へと突き刺さる。

流れるように三射目の用意。

それと同時に1体目のゴブリンがドサリと倒れこみ、一番先頭に居たゴブリンが振り向いたようだ。


「グギャ」


と間抜けな声をあげた瞬間に三射目。

振り向いたゴブリンの頭部に突き刺さり、ドサッと3体目も倒れこむ。


油断せずに気配察知を使い、周辺に他の魔物や人間がいないかを確認する。


「ふぅー。」


と息を吐き魔弓をバックパックに掛けて短剣を手に取る。

討伐部位は右耳か。

ザクリと3体から右耳を切り取りバックパックに入れようとして思った。


何か袋を買っておけばよかったな…。


インベントリ機能があるから他の物に血や匂いが付いたりはないだろうが不安だ。

辺りを見回して大きめの葉を3枚ほど摘んで耳を包みバックパックにしまう。


バックパックに手を入れると頭の中に今入ってるものが浮かんでくる。

ゴブリンの右耳×3となっているから袋などでまとめていれても問題なさそうだ。

さすがに防水の袋は無いだろうから皮系の袋を今度は買っておこう。


バックパックを背負い直して改めて周囲を観察すると気配察知にまた3体の気配が引っかかる。

ゴブリンとは違うようだが、真っ直ぐこちらに向かってきている。


スキルの身体強化を使って、その場から少し離れた木の上に上り様子を伺っていると茂みの中から1頭のウルフが現れた。


「グルゥウウウ」


と唸り声をあげながら耳をしきりに動かし地面の匂いを嗅いでいる。

他の2頭は少し離れて様子を伺っているようだ。


とりあえず見えている1頭を仕留めて様子を見よう。

魔弓を構えて魔力の矢を番える。


ヒュッと風切り音がなるとウルフが顔をあげるが、同時に首に魔力矢が刺さる。


「ギャン!」


と鳴いたウルフはその場から動かなくなる。


他の2頭の気配は少しづつ今仕留めたウルフの方へ近づいてきている。


二射目を用意して気配のする方向の茂みへと狙いを定める。

ガサリと茂みからウルフが顔を出した瞬間に魔力矢を放つ。


無事に2頭目も仕留める事に成功する。


3頭目も唸り声をあげながら1頭目の死体に近づいてくるので三射目を放ち仕留める。


「ふぅ~。」


バックパックに魔弓を掛け直して木から飛び降りる。

短剣を手に持ち静かに死体に近寄る。


頭の部分は要らないみたいなので、首を切り落とし腹の方に切れ込みを入れ手早く皮を剥いでいく。

3頭分の皮をくるくると丸めてバックパックに詰め込む。

さすがにこの皮をバックパックから取り出すときは目立つな。


頭の中の買い物リストに大きめの皮袋も追加する。


そこでじっとりと汗をかいていたことに気づいた。

どうやら緊張していたらしい。


ゴブリンとウルフの死骸から離れて木の上に上る。

木の上に上ると、太めの枝に腰掛け、薬草煙草を咥え火を付ける。


「ふぅ~。」


と息を大きく吐いて水筒から水を飲む。


タグを握ってステータスと呟くがレベルは1のままだった。


タグを仕舞い、森を観察しながら一服を続ける。

少し気分も落ち着いたので気配察知を広げるように意識しながら調査を再開する。


その後、追加でゴブリン2体を倒したが他に気配察知に引っかかる魔物はいなかった為、一旦草原の方へと移動する。


少し開けた位置でバックパックから弁当を取り出して地面に座る。


包みを開けるとサラダと卵と肉の挟まれたサンドイッチが入っていた。


「ウォーター。」


水をチョロチョロと出して手を洗い、念のためクリーンを掛ける。


「いただきます。」


手を合わせてサンドイッチにかぶりつく。


「美味いな。」


あっという間に平らげてプカプカと紫煙を吐き出しながらボーっとしていると遠くでドォン!と大きな音が鳴った。


そちらの方向を向くと遠くで煙が上がっているのが見えた。


「確かあっちは廃墟の方か…。」


傭兵ギルドで地図を見た時に森の北東側に小さく廃墟と書いてあったのを確認している。


細長い煙が上がっているので、他の傭兵が炎系の魔法でも使ったのかもしれない。


「気になるが今はいいか。」


薬草煙草を燃やし尽くして立ちあがる。


「さて、できればもう少し稼いどきたいな。レベルも2になったらどうなるか気になるしな。」


今はゴブリンが5体、ウルフが3体なので4900ドルグ。

うん、目指せ10000ドルグだな。


そう考えを整理して再度森の中に入っていく。

そうして昼前と同じようにステルスゲーに徹したことにより傷を負うこともなく、追加でゴブリンを6体、ウルフを3体倒して終了とした。


森を出てすこし開けたところでタグを掴んでステータスと呟く。


名前: ハント LV:2

ランク: 1

性別: 男 

種族: 人種

スキル: 魔弓術 短剣術 体術 

     身体強化 気配察知 

     隠密行動 鷹の目 

     魔力操作 職人の目


所持金:40500ドルグ


「お、レベル上がってるじゃないか。」


タグを仕舞って飛んだり跳ねたりしてみるが特段の実感はない。

まあ、そんなものか。


とりあえず街に戻るか。

薬草煙草に火を付けて支援を吐き出しながら街へと歩く。


ふと廃墟の方を見ると、先ほどの煙はもう見えなくなっていた。


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