episode⒉ 1時59分

駆け出した足、止まらず・・

 今日は僕の誕生日、二月十一日金曜日。

 深夜二時に橋から飛び降りる

 

 ドッ!と激しく波打つ。

 波の衝撃音により、

 近くの住人がびっくりして

 目を覚まして、

 川辺の方に走り出す。

 

 そしてまた一人、一人が気になってその場は騒つく。

 

 1人の男性が携帯電話を取り出して、パトカーと救急車を呼ぶ。


 偶然にも一台の救急車が近くに来てたので、

 我々住人は助かった。


 救急車から降りた一名の緊急救命士が目撃した男性に降りた人は誰かを聞いて、探して行った。

 

 どこを探しても見つかりっこ無い。

「はぁ・・」とため息つく。

 ちょうど良い所にサイレン鳴らすパトカーが数台着いた。

 

 これから本格的に溺れた人を探し出す事となる事を私は少し嫌がった。

 

 それは私と警官三人で近くの防犯カメラ、監視カメラの映像を見てしまうことからだった。

 

 当時刻一時四十五分頃、左の方向から叫びながら走って来る人がいる。 「うっ・・・くっ、くっ、来るな!」と録音された声が耳の鼓膜を破れる程の声量で伝わってくる。


 何か異変が起こる 

 砂嵐がいきなり起き始め五十秒後に元に戻る。

 橋の手すりに立って、背面を川に向ける。

 

 僕は大きなため息をし、

 それからゆっくりとまぶたを閉じて、

 両手を羽のように広げて、かかとに重心を掛け、

 川に身を投げる。


 ちょうどその一部始終を見届けた一台の救急車の側に居た人が突然倒れた。

 

 そこで動画は終了した。

 

 私は動画に映る私を見て、ふと過去の思い出が巡る巡るあたかも昨日のように感じたあの日の出来事が眼前に浮かぶ。

 

 一面に広がる自然は私を包み込む。

 包んでいたのは彼の優しさであり、謙虚さでもあった。

 

 私とあなたは手を繋いで、

 心地好い鳥の鳴き声に癒されながら、

 足並み揃えて軽やかに歩いてる。

 

 私の右手の小指が薄らと光り輝く

 あなたは満面の笑みを浮かべてる。

 

 私は初めて小さな青春を深く味わった。

 

 もの凄く嬉しい気持ちであなたに愛を捧ぐ。

 

 私は夢から覚めて、失ってた思い出を思い出した。

 

 川に飛び込んだ人が彼に見えた私は、

 感傷の涙を手で拭いながら、

 彼の無事を確かめる為に川へと走る。

 

 波のうねりが近くまで来る。

 パシャパシャ、っと波の足音が聞こえる。

 

 目の前にいるあなたが微笑んで

「僕を探して」と、呼んでいる。

 

 どこか遠く、誰かの声が聞こえてくる。

 静けさの中に潜む微かな声が呼んでいる。


 遠い橋の中心部に人が見える。

 私はありったけの力を振り絞って

 中心部まで走っていく。


 段々近くまで着いた頃、

 私の見る世界が一瞬に変わった。

 

 今踏んでる渇き切った雑草が、

 踏み心地の良い砂利道になっていた。

 

 驚きの余り私の口が空いたままになっていた。

 

 それから十分経って、口は閉じれた。

 

 この目で、この身体で彼の存在を感じ取れたのは、

 私が彼を強く求めていたから。

 

 この瞳は決して嘘を付けない。

 

 だから私は泣きじゃくりながら、

 彼のいるところに駆け寄り、

 冷えて濡れている頭を私のひざに乗せて、休ませる。

 

 あなたを見てると、

 溢れる思い出が底なし穴に落ちて、目蓋が開けない。

 

薄く濁る夜空に雲が集まり、

私たちのいる所だけに土砂降りの雨粒が身体を濡らす。

 

 この情景は常世に留まっている。

 


 

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