そこにある赤い花

ツヨシ

第1話

それは県の委託で短期間、林業の仕事をしていたときのことだ。

自分の車で細くて舗装もされてなく、おまけに道のあちこちが大きくひび割れている林道の一つを進むと、少しひらけたところに出る。

そこにみんな車を停めて作業にはいるのだ。

作業は過去に植林した木の周りにある雑草や雑木を刈り取ることだ。

車を停めたところから順次下から上に向かって行なうのが今回の仕事だ。

初日、山に入ってしばらく進んだところに、赤い花を見つけた。

まわりに花など一本もなく、その花だけが咲いていたので嫌でも目立っていた。

その造形はなんとなくスミレに似ていたが、スミレにしては大きくしかも花が真っ赤だ。

何の花かわからないのでベテランの先輩に聞いたが、先輩もこんな花は見たことがないと言う。

私は毒々しいほどの赤が気味悪く感じたが、ただの一本の花だ。

当然周りの雑草と一緒に刈り取られた。


次の日に同じところを通ると、また同じ花があった。

みな口々にいろいろと言い合っていたが、生えていることは間違いないので、刈り取った。

すると次の日も。

また次の日も、同じ花が同じ場所に生えているのだ。

「特別成長が早いとか」

「いや、けっこう大きいぞ。一日でこんなになるなんて」

一週間もすると、みんな不思議がるよりも明らかに怖がるようになった。

しかしそこの作業が終わって次の現場に移ることになったので、それ以来その花を見ることはなかった。


それから一年が過ぎた頃、そのとき私は林業の仕事は満期終了で、町工場で働いていた。

ある日、仕事が終わり、私は家でのんびりテレビを見ていた。

テレビではニュースをやってる。

そのニュースは、一年ほど前の行方不明事件の犯人が捕まったというニュースだ。

結局行方不明だった女性は殺されていて、死体が犯人の供述により発見されたとの事。

画面が護送される犯人から、山の中に切り替わった。レポーターが言った。

「犯人は殺した女性をここに埋めていたようです」

レポーターの後ろ、立ち入り禁止のテープが張られた先に、あの赤い花があった。


       終

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そこにある赤い花 ツヨシ @kunkunkonkon

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