今、私たちと共に歩むエッセイ。舞台はフランスです!

 このエッセイが始まったのは、丁度新型コロナウイルスが世界中に広がったころ。作者の柊さんはフランスで生活をされている方で、当時の様子をここで語って下さっています。
 あのころのフランスは、外出制限がかけられた時期だったので、最初の方を読んでみると当時の大変さが思い出されます。

 それから少しずつ季節が移ろい、春、夏、秋、冬、と柊さんが経験したことを、とても丁寧な言葉で書き綴っています。
 私が特に好きなのは、「南仏記④ ミツバチとラベンダー」。
 これは新型コロナウイルス蔓延中でありながらも、バカンスに行きたがる同居人のフランス人と、南仏へ行ったお話。そこで、ミツバチとラベンダーとの出会いがあるのですが、読んでいるとまるで自分もそこに行ったような気分になります。「旅行に行きたくても行けてない!」という人には、少し旅行気分を味わえるのではないでしょうか。

  また、食べ物の話もあります。
 「バゲットの味」という話には、書き綴られる言葉から想像すると、本当にバゲットを食べているような気分になります。
 焼きたて、出来立てのバケットを食べる時の感覚!
 文章からバターの良い香りがしてきて、とても美味しそうです。

 他にも魅力的なお話が沢山。
 時々現実に引き戻されるように新型コロナウイルスの話がありますが、お陰で「世界中どこでもこの感染症と闘っているんだな」という、「私たちは私たちが我慢しているんじゃない。世界の皆が大変な思いをしているんだ」ということを、思い出します。
 このエッセイは、今、新型コロナウイルスが生活にある、私たちと共に歩んでいます。きっとこの先少しずつ、作者さんが人々との交流を楽しむお話が登場するのではないかと、ちょっぴり期待しています。その小さな期待を胸に秘め、続きを楽しみたいです。

 最後になりますが、『犬とオオカミの間』というタイトル、何だか不思議ではありませんか?
 実はちゃんとした意味があるんです。それがエッセイのエピソードの中にあるので、気になる方は読んで探してみてはいかがでしょうか。

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