それぞれの国の持つ「文化」について、改めて深く考えさせられる。

フランスのその土地土地で心を込めて作られた料理を味わい、窓の外の風景をゆっくりと眺める。まるでそんな贅沢なひと時を過ごすような、深く豊かな味わいのエッセイです。
このエッセイの素晴らしさは、既に多くの方々がレビューに書かれている通りなのですが、私がこのエッセイに触れて改めて深く感じることは、「それぞれの国の文化は、その国の歴史に深く根ざしている」ということでした。
境界線という一本の線でのみ領域を区切られている土地は、侵略などの危険と常に隣合わせの歴史があります。自己をはっきりと主張し、戦うべき時に戦わなければ、自分達の暮らしを守れない。そんな古くからの覚悟というようなものが、そこに住む人々の根底にある。国の文化は歴史によって作られるなんて当たり前だと言われてしまうかもしれませんが、作者様が現在暮らされているフランスの文化を綴る確かな文章に触れ、改めてハッとさせられるのです。日本という、ともすれば閉鎖的な平和を守れてしまうこの国には、明らかに欠けているものがある。自らの主張をはっきりと掲げ、時には衝突してでも自分達の権利を守る力が。
なんとも個人的な感想をぶちまけましたが、その国の「文化」というものについて深く考え、改めて見つめるきっかけをくれる、奥深く濃厚な味わいを持ったエッセイです。

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