お寿司の黙示録
先にお米を研いでおけば良かったと気づいたのは、湯船に浸かってからのことでした。腹ペコはぐんぐん加速しちゃってました。でも、せっかくお湯を張ったので、すぐにあがるのはもったいない気もしちゃいます。葛藤でした。人生とは、葛藤の連続なのです。マッハで百数えてあがりました。ドライヤーをかけてる最中でも、お腹の鳴るのがわかりました。
さて! お米を研ぎましょう! 二合もあれば十分でしょうか? むむむ。何しろ握り寿司なんて初めてのチャレンジですので、どのくらいの量が必要なのか、今ひとつ見当がつきません。念のために、三合炊いておきましょうか……葛藤です。が!
腹ペコは待ってはくれません!
というより、待たせっぱなしです!
ここは自分を信じて、三合にします!
酢飯を作る時のための目盛りが炊飯釜の内側についてました。とてもありがたいです。ちゃちゃっとお米を研いで、ピッとスイッチを入れました。
『料理の初手は、お湯を沸かすこと』
今日は先にお米を研いじゃいましたが、そんなのは誤差です。お鍋にちょっと多めに水を入れて火にかけます。これは、油揚げの油抜きのためのものです。ぐずぐずしてはいられません。お湯が沸いてしまう前に、買ってきた油揚げを処理しないとです。
油揚げを半分に切って、ごはんを詰められるように中を開いておくのですが、その前にいったん、麺棒を転がして油揚げを軽く潰しておきます。すると開きやすくなります。中は、角までしっかり開いておきます。指が油まみれになります。油揚げですもんね。……よし、できました!
お湯が沸いたら油揚げを入れて1分ほどグツグツします。そうしたらざるにあけて、水に漬けて流して、冷ましておきます。
油抜きをしたお鍋もちゃちゃっと洗いまして、次はお稲荷さんの煮汁を作ります。
油揚げは5枚入りのを買ってきて、それを切ったので全部で10枚です。
これに対して、
・醤油 大さじ2
・みりん 大さじ2
・砂糖 大さじ2
・めんつゆの素 (濃さにもよりますが)小さじ1程度
・水 油揚げがちょうど浸かるくらい
をしっかり混ぜておきます。
油揚げの水気を搾って、いざ投入です。火にかけるとすぐに沸騰しますので、焦がさないように火加減に気をつけて、キッチンペーパーで落とし蓋をしてグツグツ煮ます。いかにもお稲荷さんな感じの匂いがしてきます。めんつゆを入れすぎると、お稲荷さんじゃなくてただの煮物になってしまうので注意です!
さて、その間に寿司酢を用意しましょう。市販の寿司酢もありますが、簡単に作れますので、わたしは普通のお酢を使います!
・お酢 ごはん1合あたり大さじ2
・砂糖 お酢よりちょっと少なめ 4分の3くらいの量
・塩 ひとつまみ程度
これはまず、お酢に砂糖を入れてしっかり溶かして、酸っぱさと甘さのバランスを見ます。そう、バランスです。お酢が強いとちょっとつらい気持ちになっちゃいますし、砂糖が多いと味わいがべっとりしちゃいます。ほどよくボディのある酸味を目指しましょう! お好みですけど!
そして最後に塩を入れると、酸味も甘味もキュッと引き締まります。「あ! これお寿司だ!」ってなります。お寿司な気分が盛り上がります!
ごはんが炊けるまでまだ時間があります。ちょいと油揚げの様子を見てみましょう。まだ煮汁が見えます。では、ネタを用意しましょう。
ホタテの貝柱は、横から包丁を入れて開いておきます。おいしそうです。白ごまやレモン汁なんかでアクセントを入れるのもいいですね。おいしそうです。
マグロとサーモンは、身がバラけないよう、包丁を引くように入れます。
買ってきた冊がそんなに大きくないので、かなり斜めにしました。これ、包丁の切れ味が命です! わたしはちゃんとした砥石(中砥と仕上砥です!)を持ってますので、そのへんはバッチリです!
そしてここで、冊の端っこの中途半端なサイズになっちゃった身を、フライングでわさびと醤油でいただきます。お行儀が悪いです。でもおいしいです。こういう時って、五割増しくらいにおいしく感じます。いざお寿司ができあがったら、それはきっと十割増しです。期待が高まります。あとは握るだけ。ネタは上がってんです!
油揚げは、煮汁がほとんど無くなりました。鍋を傾けると確認できるくらいです。火を止めます。すると、油揚げが残った汁を吸ってくれて、ふわっふわの揚げになります! ひとまずそのまま放置して、冷ましておきます。
ここまですこぶる順調です。しかし! 勝負はこれからです。酢飯混ぜ混ぜミッションと、そして、お寿司にぎにぎミッションが待ち構えているのです。ちなみに、お稲荷さんは今まで何回か作ったことがあります。
そして、わたしの後ろの方で、
ピピーッ ピーッ ピーッ ピーッ
ちょうどのタイミングでごはんが炊けました。私が炊飯器の封印を解いた時、もわっと立ちのぼる湯気が「来たれ」と言うのを、わたしは聞きました。
そこでわたしは、
『見よ、シャリは、輝いておられる』
寿司酢が行き渡ると、ごはんがつやつやっと輝きだします。これ、かなり感動します。お寿司ムードが全開になります。
そうそう、「切るように混ぜる」なんてよく言いますし、わたしも言いましたけど、これ、ごはんに斬り込んだしゃもじを返す時にボウルを揺する動きでアシストしてあげると、練らないで浮かせるように混ぜられます。チャーハンを炒める時にフライパンを振るのと同じです!
さて! というかそういえば! シャリを握る時にも寿司酢があるといいんでした! おにぎりを握る時に手に水を付けるように、寿司酢を少し付けるといいみたいなんです。なので少しだけ作ります。要領は心得てますからね! そしてわさびも出しておきます。わさび、平気ですか?
よし、握りましょう!
手のひらの温度も低いほうが、シャリが手につきにくいです。これもおにぎりと一緒ですね。ただ、おにぎりと違って、寿司ではおにぎりみたいにギュッとは握りません。きゅっと整える、くらいの気持ちでいきます。すると、食べた時にシャリがほぐれるんです。これはお稲荷さんでも一緒です。
ネタを左手に取ります。手のひらではなく、指の上です。わさびをつけて、そして右手でシャリを取ります。あ、ちょっと取り過ぎました。ネタに乗せてみたら全然大きかったです。欲張ってはいけないということですね。焦ってはいけません、大丈夫です! 今度はもっと少なくして……あ、まだ大きいです。そうですか……。
初めはちょっとこんな感じでしたが、わりとすぐ慣れました。ネタの大きさに対して、こんなもんでいいの、くらいで十分です。とは言っても、お寿司屋さんのみたいに綺麗にはいきませんが……手際もそんなに良くはないですけど……でも、お皿の上に置いてみると、握り寿司! って感じがします! 並べて見比べると、だいぶ不揃いですが……。
そんなふうにして、マグロから握り始めましたが、サーモンのほうが楽な気がしました。ホタテを握る頃には、かなり上手になったかな? というか、ホタテが一番、ネタの形と大きさが揃ってますので、ホタテから握り始めたほうがいい練習になったような気がします。……あるいは、こんにゃくを握るとか? つるつる滑っちゃうからだめですね、きっと。
いつだったかのギョーザの時みたいに、お皿というお皿に、三色の握り寿司が並びました。いい眺めです。
では続いて、お稲荷さんを包みましょう!
いい感じに冷めた揚げを、両手のひらで押し潰すみたいにして、煮汁を少し搾ります。口を開いて、俵っぽく丸めたシャリを詰めます。中でむしろ崩しちゃうくらいの気持ちで入れると、いい感じに詰まります。口の両サイドを内側に折り込んで、そして閉じます。ころんとしたお稲荷さんが誕生します。何かのお祝いみたいです!
うん、やっぱり握りよりも簡単です。ちゃちゃっと包み終えました。最後のほうは、シャリを全部消化しようと思ってどんどんサイズが大きくなっちゃいましたが……ちょうどぴったり、使い切りました! すごいです! 天才ですか?
『事はすでに成った』
はい! 握り寿司とお稲荷さんの完成です!
お吸い物なんかを用意したほうが良かったのかなあと思いましたが……スパークリングワインがあるので、良しとしましょう! それに、これ以上腹ペコにお預けを食らわせるわけにはいきません。
ついに、やっと、いただきますの時間です!
わたし、やりました!
やりました……はいいんですが、えっ、これ、全部食べるんですか?
壮観すぎる七つのお皿を前にして、これはやりすぎだったのではないかと、今さらながらに唖然とするわたしがいました……。
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