悩み

 弟が書籍の前で悩んでいる。


「君が料理で悩むなんて珍しいね」

「資料もレシピも集まらないんだよね……」


 言うのは、三兄弟のご機嫌取りのために贈られた、無毛猫。

 妻はもっと、ふかふかした毛並の猫が好きだ。それでも放り出すのは気が引けるのか、使用人に丸投げせずせっせと世話を焼いていた。全く好みでない物を押し付けられるのは、嫌がらせの範疇だ。


「どうやって黒猫ちゃんにおいしく食べてもらおうかな……」

「躾してあるしお年寄りでもないしね、寄付すればいい」

「それもそっか」


 その日の夜、猫の顔を模ったサフランライスに肉球の形をした人参を乗せたカレーが食卓にあがった。

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