3

「もうっ、冬斗、なにしてるの!!」

お母さんは俺を強く抱きしめ、そう言った。

「お母さん、どうし…っ。」

「冬斗、ごめん、ごめんね。ちゃんと聞いてあげればよかったね。」

「ごめんなさい、お母さん。何も言わないでこんなことしようとして…。」

「怒ってないよ。大丈夫。さ、お家に帰ろ?」

「…うんっ、帰る…!」

「今日はね〜!!お父さんも居るから冬斗の好きな

焼肉にする??」

あ、そっか…そういえばこの日、お父さんが行ってらっしゃいって言ってくれた気がした。

「ん?違うのが良い?」

「ううんっ、嬉しい、ありがとう。お母さん。」

お母さんと久しぶりに並んで帰る。なんだか懐かしい気がした。

どうして、お母さんが居たんだろう?まぁ、今は考えなくてもいいかな。


「ただいま。」

「冬斗、おかえり。」

優しい笑顔でお父さんが迎えてくれた。なんだかその顔を見ると泣きそうになってしまう。

「冬斗、なにがあったかは分からないけど頑張ったな。」

泣きそうな俺を優しく、力強く抱きしめてくれた。


「おとうさんっ…おれっ、おれっ、おとうさんみたいになるって、つよくなるっていったのにっ、にげようとしてっ、ごめんなさいっ、よわくて、ごめんなさいっ………!!」

お父さんは優しい声で

「…冬斗は弱くないよ。1人で全部全部抱えて辛かったよな。気付いてやれなくてごめん。冬斗は強いよ。かっこいいよ。誰も傷付けないように1人で戦ったんだもんな。偉いぞ、冬斗。」

お父さんに抱きしめられながら、今までの辛かった事、苦しかった事、吐き出したいこと、全部言った。声を上げて泣いた。


「……お父さん、ありがとう。」

俺が落ち着いた頃

「さぁ〜、焼く??」

ってお母さんがニコニコしていた。

「俺、焼くの上手いんだから!」

「その焼き方教えたの俺だし、やっぱり俺の勝ちでしょ!」

「お父さんよりも上手いし!ね?お母さん!」

「あははっ、ん〜、どっちも上手いよ!」

「えぇ〜!!」

「2人とも息ぴったり!!」


久しぶりの家でのご飯、笑顔で溢れていた。帰ってきて後悔はしていない。むしろ言えてこまくんに感謝している。


俺がした選択はもちろん、家族と居ること。家族を守れる強いひとになりたい。

るきや、あいり、陽向くん、陽菜乃ちゃん…こまくん。みんなと過ごした時間も楽しかった。大好きだった。だけど、家族と居たい。いじめられても、俺は大丈夫。もう逃げたりしない。

みんなと過ごした日々の記憶が無くなるのは寂しいけど……。

また、きっと会えると思うから。その時まで、みんなバイバイ、ありがとね、大好きだよ。


…生きたい。


そう心の中で呟いた。

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