第14話:謀略

「公爵、どうかね、ドナレイル王家の王位継承権を余に譲らないかね。

 もし譲ってくれるのなら、それ相応の領地を与えようではないか」


 別に見たくもないのに、他国でかわされる会話の内容と映像が心に映されますが、どうやら魔獣の一頭が他国にまで入り込んでくれているようです。

 魔獣がそこまでやってくれることを嬉しく思うと同時に、面倒な事だと思ってしまいます。

 他国の謀略を見聞きしても、私に何ができる訳でもないのです。


「国を捨てて逃げてきた私に、領地を割譲してくださるというのですか?

 それは大変ありがたい事ではありますが、我が家が王家から別れたのは五代も前の事でございますが、それでも宜しいのですか?」


「くっくっくっくっくっ、そんな事は構わんよ。

 体裁さえ整えられればいいのだよ。

 王家が滅び全ての貴族が逃げ出したドナレイル王国は、食卓に投げ出された肉も同然で、先に手に取り喰らった者の勝ちなのだよ。

 五代前だろうが六代前だろうが、先に王都に入り戴冠を宣言した者のモノだ。

 なんなら一緒に来るか、公爵。

 この国で領地をもらった上に、故国の領地も取り戻せるぞ?」


「滅相もございません!

 あのような恐ろしい場所に、もう二度と戻りたくはありません。

 天罰の恐ろしさは、喰らった者にしか理解できません」


「くっくっくっくっくっ、憶病者よなぁ。

 そんな事だから領地も富も全て無くすのだ。

 どれほど恐ろしくても、その場に踏ん張り続けるからこそ、領地も富も手に入れることができるのだ。

 よく覚えておくのだな、公爵」


「国王陛下のお言葉はごもっともでございますが、私のような臆病者に行えることではございません。

 私はこの国で心静かに余生を送らせていただきます。

 この国に置いていただけるのなら、王位継承権でもなんでもお渡しいたします。

 ただあの国に戻るのだけはご勘弁願います」


「よかろう、臆病者など足手纏いでしかない。

 だが、形だけは整えてもらうからな。

 その方の娘でも孫娘でも構わんから、余の側室にもらい受ける。

 そうして王位継承の正当性を整える、

 喜べ公爵、そなたの孫か曾孫が、ドナレイル王国の国王となるかもしれんのだぞ」


 何とも言いようのない、陰謀と言うべきか、それとも田舎芝居と言うべきか、他国を侵攻するための言い訳創りに、馬鹿げたことを話しています。

 それにしても、どこの誰とも分らない国王ですが、天罰が怖くないのでしょうか?

 逃げてきた公爵がこれほど恐れいているというのに。


 まあ、自分が加わらず、配下に指揮を任せるのなら、天罰を恐れる必要もないのかもしれませんね。

 それにしても、魔獣は何故のこのような場面を私に見せるのでしょうか?

 どうして他国にまで入り込んでいるのでしょうか?

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