第22話 エピローグ

「それじゃあギルドに行くか」

「アランさん。戻ってきましたか」

「少し遅かったな」


 外で待っていたステラとフライアの二人と合流しギルドに向かった。


「シェラさんと何かありました?」

「えっ? そ、そんな事ないぞ」

「ふぅん」


 ステラは何かを怪しんでいる様子で俺に問いかけてくる。


「どうしてそんな事を……」

「何となくですよ。まぁアランさんには分からないと思いますよ」


 ステラは少し不機嫌になっていた。

 何故だ? 全く分からん。


「アランさん。私は今少し不機嫌です」

「はい」

「なので私のわがままを一つ聞いてもらえませんか?」

「それは別にいいが……」

「ではっ!」


 ステラに許可を出すととても早い速度で俺の手を握ってくる。握り方も指を絡めるような握り方だ。

 ステラの手はとても細く少しでも握り締めたら折れてしまいそうな程だった。


「ステラ⁉︎」

「ギルドまでこれでいきましょう」

「わ、分かった……」


 シェラと言い、ステラと言いどうしたんだろう。急にこんな積極的にスキンシップを取ってくるようになるなんて。


 そんな時ふとフライアの方へ目を向けてみた。

 フライアは「やはり時間が——」的な事をぶつくさと呟いていた。


「どうしたフライア?」

「えっ? いや、何でもないぞ! 少し考え事をしていただけだ」


 手を振って大袈裟にそう言ってくる。


 少し気まずい雰囲気の中ギルドまで着いた。


「ここで終わりですね」

「そ、そうだな」


 ステラは名残惜しそうに俺の手を離す。


「ウェールズの事きっちりと言っておかないとな」


 頭の中の考えを変えるように俺はそう言葉を続けた。


「そうですね」

「なんで出たかも分かってないからな。ギルドに調べてもらいたい」


 フライアは口を開いてそんな事を言った。

 確かに原因を知っておかないと次は確実に死人が出る。


「それじゃあそろそろ入るか」

「ですね」

「ああ」


 俺たちは少し話し合った後ギルドの中へと入っていった。


「おお、アラン! ようやく帰ってきたか」


 ギルドに入って最初に出迎えてきたのは、すっかり元気になったアイギス達だった。


「ここに居るって事は倒してきたのよね?」

「アランさん。凄いですね」


 今までの態度とは一変してそれぞれ言葉を発していく。


「何なんだ。急に」


 今まで俺のことを侮蔑する様な言葉しかかけてこなかったのに、いきなり誉めてくるなんて絶対におかしい。

 そう思って問いかけるとアイギスが口を開いた。


「アラン。お前うちに戻ってくる気はないか?」

「はっ? お前らが俺を追い出したんだろ?」

「アランは実は強かったんだろ。今まで隠してたなんてずるいぜ」

「そうですよ。あの時とは別人の様な強さでした」

「今なら私たちと肩を並べられるって事なのよ」


 アイギス達は好き勝手に話していた。その言葉を聞いている内にどんどんと腹が立ってきた。


「あの時からほとんど変わっていない。それに変わっていたとしてもお前らの様な自己中チームには居たくないな」

「はぁ? あんた何言ってんの? せっかくの私たちの誘いを断るつもり⁉︎」

「俺はそう言ったつもりだが?」


 出来るだけ冷淡に表情を変えずに俺は答える。その言葉にサーラはいち早く反応して声を荒げる。


「それに誰が自己中なんだよ」


 次にアイギスが俺の言葉に反論する様な口ぶりで答えていた。


「自己中だろう。お前達の戦闘を見たら誰だってそう言う。フライアもそう思わないか?」


 この中で唯一アイギス達の戦闘を体験したことがあるフライアに問いかける。


「ああ。あれははっきり言って初心者の動きだ。個々の能力が高い事だけで成り上がっていったパーティなのだろう」


 フライアは嘘は言わない。そんなフライアにここまで言わせるのは相当やらかしたのだろう。


「それにお前達が先に追放してきたんだ。それなのに今更戻ってこいなんて言うのか?」

「っ……」

「それでもですよ」


 アイギスが言い詰まっている時にソフィアは何かを言い始めた。


「あなたも出来るだけ早く100階層に行きたいのでしょう? それならこのパーティに戻ってきた方が早いと思うんです」

「ああ。確かに100階層には行きたい」

「それなら——」

「だが、お前らと行くくらいなら100階層に行け無くてもいい」


 きっぱりと断言する。100階層に行けなくてもシェラやステラ最高の存在がそばにいるんだ。それだけで十分すぎる事なんだ。


「もういいだろう。行こう。ステラ、フライア」


 そう言って俺はその場を後にしようと、足を動かす。


「フライアは戻ってくるよな」


 少し心配した様な様子でアイギスは訊いていた。


「私も今回の戦闘で分かった。お前達とは戦えないと」


 それだけ言ってフライアは俺の後ろをついてくる。


 後ろでは悪態をつくアイギス達の姿があったが、それを無視してギルドの受付へと進んでいった。



***



 ウェールズを討伐してから数日が経った。


 あの後からアイギス達はどんどんと落ちぶれていった。ギルドでもアイギス達の悪評が広がっておりこの街から出て行ったそうだ。

 俺からしたらとてもありがたいことだが。


 対する俺たちのチームはフライアが新しくチームに加わって新体制でダンジョンに挑む予定だ。

 そしてそのダンジョンに挑む日が今日だ。


「本当に私が行ってもいいのでしょうか?」


 今回のダンジョンはシェラも連れて行くことにした。そこまで下の階層には行かないから守り切れるだろうと言う判断だ。それに


「材料の事はシェラが一番詳しいし」

「分かりました」


 シェラは頷いてくれた。


「それじゃあ行こうか」

「はい。アランさん」

「行きましょう! アラン様」

「このパーティでは負ける気がしないな」


 それぞれの想いを胸に俺たちは今日もダンジョンに入る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勇者パーティを追放された剣士の俺が魔法適性カンストしていた件〜今まで培ってきた剣技と合わせて史上最強の魔法剣士になる。今更戻って来いと言われてももう遅い〜 鳴子 @byMOZUKU

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ