第20話 ウェールズついに敗れる

「アランさん頑張ってください」

『我が求めるは強化の奇跡。貴殿に戦神の加護をヴァルキリーエール。フルパワー!』


 励ます言葉を一つかけた後、ステラは魔力を全て使い俺に支援魔法を唱えてきた。


「後は……お願いします」

「任せとけ」


 ステラはその場にペタリと座り込んだ。


 ウェールズの今の状態での速さは異常だ。

 だがステラの支援魔法の効果がここまで効いていれば。

 ウェールズはさっきと同じようにぶつかって来るようだ。すごいスピードでこちらへと飛んでくる。


『大和の太刀。海斬剣』


 海斬剣は全ての攻撃を無効化する海斬剣。

 ウェールズの大きな巨体を利用してダンジョンの壁の方へと吹き飛ばす。


『大和の太刀。神斬剣』


 ウェールズの隙を見逃さず突きを入れようとするが、ウェールズは空中へと飛び上がり、後少しのところで避けられてしまった。


『サイクロンブースト』


 空中に逃げたウェールズを追いかける為、地面に風魔法を放ち空中へと飛び上がり上がる。


『ウォーターバインド』


 水の紐のようなものでウェールズを結びつける。ウェールズはなんとも無しにその拘束を振りほどく。


『大和の太刀。妖斬剣』


 太刀を何個も作り相手を惑わせる剣だ。

 ウェールズの不意を突き胴体に切り込みを入れる。

 が炎によって守られている鱗はびくともしなかった。


「くそっ……」


 攻めているのはこっちなのにほとんどダメージを与えられていない。


「ウェールズに勝つ方法はこれしか無い」



 伝説の神級魔法。数千年前に大賢者が使って以来誰も使い手が現れなかった本当の伝説級だ。


 初めてやる事だからできる自信はあまり無い。だけどやってみるしか無い。


『我が求めるは水の奇跡。万物の息根を止めよ。アブソリュートゼロ』


 アブソリュートゼロ。敵がいる範囲内の気温を最大まで下げて、敵を凍らせる。


 ウェールズの周りはどんどんと氷の世界に包まれていく。ウェールズの脚から段々と氷づいていく。


『我が求めるは土の奇跡。その鋼鉄の槍は全ての万物を貫く。スターランス』


 最大限まで硬度を上げた槍はどんな敵でも簡単に貫くと言われる。


 俺が作った強固な槍はウェールズめがけて飛んでいく。

 凍った世界でウェールズは身動きを取る事ができず、その槍は見事命中した。


 初めてやった二つの魔法は見事発動することに成功した。


「グルラアァー!!」


 しかしまだ魔石には変わらない。

 それどころか最後に俺を道連れに死のうと、今までの中で一番の速さでこちらに向かってくる。


『大和の太刀。最終奥義。天下五剣』


 全て違う斬り方で相手を完璧に倒す最強の剣。師匠が使ったのを一度だけ見た事があった。


「これで終わりだ!」


 "天下五剣"最後の一撃がウェールズに直撃する。


「…………」


 ウェールズは叫ぶこともなくドンっと地面に叩きつけられるように落ちると、魔石に変わった。


「やっ……た……。勝った! 勝ったぞー!」


 静かな空間に一人の男の歓声が地鳴りのように響き渡った。

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