第8話 獄炎のダンジョン後半戦

 10階層で休憩を取った後すぐに、11階層へと向かった。


 11階層では10階層以前の魔物とは強さも全く変わる。現にマグマゴーレムが何体もうろちょろと歩いている。

 これが超級と呼ばれる所以だ。


 そしてマグマゴーレムの真逆と言ってもいい、レッドウルフを見つけた。


『ロックバインド』


 レッドウルフはマグマゴーレムと違って足が速いため、動きを止めてから攻撃する。

 自分が早く動くより効果的だ。


「ふう。——このアイテム袋本当に役に立つな」


 ひと段落つくとシェラに貰った袋を見ながらそう呟いていた。

 もう相当な量の魔石が入っているはずなのに、全くと言っていいほど重さを感じない。


 やはりシェラは天才だったのだなと納得させられる。


「そのシェラのためにも頑張らないとな」


 休憩もそこそこにして立ち上がるとどんどんと先へ進んでいった。


 そして20階層についた。

 ここまでくるまで結構しんどい。だが魔力も体力も全然余裕はある。

 ここのボスも余裕だろう。

 この階層のボスはレッドゴブリンだった。素早さと攻撃力を、兼ね備えた地味に強い魔物だ。


 俺はいつも通りの魔法で機動力を上げてレッドゴブリンの元へと向かっていく。


「はぁっ!」


 ガン


 俺が放った剣はレッドゴブリンの持つ棍棒に防がれてしまった。


「これじゃ遅いか。なら」

『エアーバースト』


 今まで使っていたのは初級の風魔法の代わりに、中級の魔法を使ってスピードを上げた。


「これで……どうだ!」


 素早くレッドゴブリンの後ろへと移動し、背中を切り裂いた。


「青龍の太刀。神斬剣』


 そしてふらついたゴブリンの背中を、急所を的確に突く『神斬剣』で確実に仕留める。


「終わりだな」


 ゴブリンが魔石へと変わる。


 20階層のボスも突破して先へと進んでいった。


「一人だけで来た20階層突破はいつも以上に達成感があるな」


 20階層について俺はそんな事を思った。

 他に三人もいて突破していた所を一人で突破したという達成感があったのだ。


「今日はもう休もうかな」


 悦びに浸かっている中、俺は20階層で一泊する準備をすることにしていた。


 1日で深い階層に行くことは厳しいので何泊かしながら向かうのだ。


 俺はアイテム袋に入れていた毛布の中で今日の反省会をしていた。


(20階層はまだ余裕があった。だがこれからは回復が間に合うかどうか)


 20階層までは敵が少なめだ。その為一対一に持ち込むことができる。しかし20階層以降はどうしても複数隊を相手にしなければならない。

 自分でポーションを使って回復する暇は無くなるかもしれない。


(こんな時支援魔法を使える人がいればな)


 そんな無いものねだりする様な気分になっていた。

 そんな事を考えながらも、緊張からか、攻略の疲れからか、いつの間にか眠りに落ちていた。



***



[青龍の太刀。龍斬剣』


 次の日になって身支度をした後、早速21回層からダンジョンを攻略していた。


「やはり数が多いな……」


 戦闘中そう呟いていた。一体一体の強さはなんとかなるのだが……。


「このままじゃジリ貧状態だ……」


 風魔法で飛ばして出来るだけ早く階層を抜けることにした。


『ウィンドブースト』


 ダッ!


 風の上級魔法を使いどんどんと階層を抜けていく。途中途中、追ってくる敵は水の超級魔法で倒しながら進んでいった。


 そして


「30階層だな……」


 目標の30階層ボスの前まで辿り着いた。このダンジョンに来る前に超級魔法を覚えておいてよかったと思った。


 昨日シェラと別れてすぐに魔導書を買って超級魔法を覚えたのだ。


 30回層のボスはオークキングだ。その名の通りオークの王であり桁違いに強い。


 30回層に入るとその大きさに圧倒される。普通のオークの数十倍はあるだろう図体。

 『獄炎のダンジョン』最初の難関と言われているボスだ。


『サイクロンストーム』


 風の超級魔法を使い最大まで俊敏性を高め


『ブリザード』


 これまた水の超級魔法で体全体を覆い、攻撃、防御共に最大まで高めた。


「本気で行く」


 ダンッ!


 鞘から剣を抜きオークキングの元へ駆けていく。


『青龍の太刀。月斬剣』


 薙ぎ払う様に剣を振るう『月斬剣』でオークキングの首を斬りつける。


 スパッ


 とそんな音が鳴りオークキングの首が綺麗に真っ二つになり、魔石へと変わった。


「まさか一撃だとはな……」


 負けることはないと思っていた。しかしあのオークキングを一撃で倒すなんて思いもしなかった。これなら本当に90階層も夢じゃないのかもしれない。


「……だが、流石にちょっとしんどいな」


 魔法の中で最強クラスの超級魔法を二つ使った上に剣技まで使ったのだ。疲れるのは当然だろう。


 一度深呼吸をして体を落ち着かせ、先に進んでいった。

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