第4話 魔法の威力

「取り敢えず、ダンジョンに行ってみるか」


 昨日の件でお金を使いすぎたせいで、今にも底をつきそうだしな。


 ダンジョンとは言っても、行くのは20階層程度の小さめなダンジョンだが。それでも魔法の威力を確かめるには十分だろう。


 足早にダンジョンへと向かった。



 俺が入ったダンジョンは『満天のダンジョン』と呼ばれている場所だ。その名の通り、地下なのに星空が見えている様にキラキラと輝いているのが特徴的だ。


 そして地面は水場なため、光を反射して神秘的な様子をより一層強くしている。


「さあ、やってみるか」


 魔物を誘き寄せて早速魔法を使ってみる。

 まだ一階層であるため、最弱の魔物と呼ばれているゴブリンがやってきた。


 一度だけ勇者パーティの魔法使いであるサーラに教えてもらったことがある。(教えてもらったと言うよりは、自慢されていただけかも知れないが)


(全身に魔力を通すとか言ってたよな)


 何となくでイメージを頭の中で描いてみる。


(そして詠唱……)


 そう思って、炎の初級魔法の詠唱しようと口を開いた瞬間


 ボン!


 と、俺の手から握り拳程度の大きさの火がゴブリンへと向かっていった。


「……何が起こったんだ……?」


 自分でもよく分からず、放心状態に陥っていた。

 魔法は詠唱が絶対に必要ってサーラは言ってたのに。サーラでも詠唱の簡略化が限界だった筈だ。

 それなのに全くの詠唱無しの無詠唱で魔法が使えるのか……。


 サーラは間違い無くの天才だ。それを超えるなんて俄かには信じ難い。


 その後も下の階層に行って魔法を使ってみても無詠唱で魔法は使うことができた。


「どうなってるんだ……」


 魔物を倒したときに出てくる魔石を拾いながら、呟いていた。

 この魔石がお金になるため、第二の目的である魔石収集を忘れるわけにはいかない。


「確かにこれほどの魔法使えるなら潜在能力が高くても不思議じゃない」


 もっと早くに気づいていれば、勇者パーティを抜けることはなかったのだろうか。

 ……いや、それでも俺の事は邪魔者扱いしていたに違いないだろうな。

 リーダーであるアイギスは男である俺を煙たがっていたしな。


 そんなたらればを言っていても仕方ないな。

 魔石を拾い終わると、もっと下の階層へと潜っていくことにした。


 このダンジョンの最下層である20階層まで降りてきた。

 これほどの魔法が使えるなら大丈夫だと判断したからだ。



「ここまできたら多少は強くしてもいいよな」



 ここまでくるまでに、使ったのは中級の魔法まで。今まで魔法を使った事が無かったため、中級は凄い方だと思うのだがまだ体には余裕があった。


 知識だけは身につけといて損はないと覚えていた魔法の種類が役に立っている。取り敢えずは上級魔法まではイメージできるため何の問題もなく魔法が扱える。


 ここでは、剣を振るいながらの魔法も試してみようと思う。

 せっかく使える魔法も剣を振るいながら使えなければ意味がない。


 辺りを探索しながら歩いていると、ロックゴーレムを見つけた。

 岩の塊で作られた生き物だ。図体はとても大きく俺の三倍は有に超えているだろう。


 早速近づいていく。


 近づく時に火の玉を一発飛ばして牽制してみる。


 ゴーレムの体には当たったが、無傷であった。

 それに加え、俺の姿に気づいていなかったゴーレムも鈍い体を動かしてこちらを向いた。


「魔法が効きにくいんだっけか。まぁそれなら」


 ゴーレムに近づくと、腰に下げてあった剣を抜き取り構えをとりながら一発の太刀を入れる。


 ガッ!


 そう鈍い音を立てたものの痛がっている様子も無く、反撃しようと拳を向けてくる。


『ウィンドブースト』


 その刹那、攻撃しようとしてくるゴーレムを風魔法で吹き飛ばす。

 やっぱりだな。口に出した方がイメージは比較的しやすくなる。コンマ数秒の違いだが、魔法を放つのも早くなる。


 そう呑気に解釈している暇もなく、ゴーレムは起き上がりこちらへ走り出してくる。


「やりたい事は大体終わったから良いか」


 俺は剣を構える。


『大和の太刀。龍斬剣』


 ゴーレムがこちらにくるよりも早く近づき、ゴーレムを八つ裂きにする。


 『大和の太刀』これが師匠に教わり俺が使っている剣技だ。全部で10個の剣技がある中で『龍斬剣』は相手を素早く何度も斬りつける剣だ。


 剣を鞘に収めると同時にゴーレムが消え、一つの魔石へと変わる。


「魔法と剣の組み合わせも強いな。このダンジョンなら余裕だ」


 ゴーレムの魔石を拾うと、地上に戻ることにした。

 もっと強い魔法を覚えなければいけないと言う事、魔石をギルドに届け無いといけないと言う事、色々やらなければならない事があったからだ。


 外に出てみてもまだ空が赤く染まっているくらいの時間帯だった。


(これくらいの時間に帰るなんて初めてかもな)


 そんな事に少しだけ高揚感を覚えながらもギルドへと向かった。

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