紫伊

 星見草郵便局は大通りを抜け十二歩歩いたところに佇んでいます。三階建ての建物で古めかしい顔をしています。働いている人は私を含め五人だけ、いつ取り壊されても誰も気づかないでしょう。

 私がアルバイトを始めたのは一ヶ月のじっとり降る雨を風が追い払い夏めいてきた日のことでした。アルバイトを探そうと頁を見ていた時「日曜日十七時から二十二時、夕食付。静かに働ける方。会いたい人はいますか」という広告が目に飛び込んできました。文言に蛍光灯に集まる虫のように引き付けられ、問い合わせメールをしました。翌日に十二歩の事務所で面接、アルバイトすることと相成りました。働き手は局長さん、みざるさん、いわざるさん、きかざるさん、私。そしてここは郵便局と言えども死者からの言葉を配達する郵便局なのでした。




 大通りを抜け、十二歩、事務所に着いたときには、夏雲の連れてきた夕立で服から靴、鞄までぐっしょりです。纏わりつく服の不快さに思わずため息がこぼれそうになります。

「佐藤さん、こんばんは」

「こんばんは」

 後ろから声をかけられ振り返ると、みざるさんが緩やかに微笑んでいました。濡れ鼠の私と対照的にからりと乾いています。

「佐藤さん、しっかり拭いてから来てくださいね」

「はい。みざるさんは雨に降られなかったですか?」

「いえ、降っていましたよ」

 そう言って音もなく三階の事務室に入っていきました。私はぺらぺらの手拭いで水滴をふき取り、みざるさんの後を追いました。

 一階の事務室は壁に沿って腰高の本棚があり、たくさんの葉書と筆記具が置いてあります。中心には小学校にあるような机と椅子があり、机の上にはラジカセが置いてあります。みざるさんはそこに座り仕事をします。

 みざるさんはおばあさんです。私の胸下くらいの背、皺の寄った顔、丸い眼鏡、口元にはいつも笑みが潜んでいます。椅子に腰を下ろすとまずラジカセの電源を入れ、スタートボタンをがちゃんとおろします。みざるさんはすっと前を向き、微動だにしません。黒いラジカセから流れるのはあの世からの声なのです。


 みざるさんは大きく一つ深呼吸をし、スタートボタンをがちゃんとおろしました。年配の女性の声が流れます。私は耳栓をして机のよこにちょこんと置かれた椅子に座ります。聞いていても良いと言われたのですが、人の話を盗み聞ぎするようで居心地が悪かったので聴覚を遮断することにしました。みざるさんは聞き終えるとじっと目を瞑ります。そして再び目を開け私に言います。

「佐藤さん、右から五番目、上から二番目にある紫と薄桃色の朝顔の葉書と右端一番上にある紺色の硝子ペンを」

「はい」

 私は言われた通りのものを指定の棚の中から探し出します。官製葉書、コットン紙の葉書、マーメード紙の葉書……、色柄どれをとっても同じものはありません。筆記具もボールペン、鉛筆、万年筆、見たこともない異国のもの……、いろいろなものが棚の中にしまい込まれています。みざるさんはなにがどこにあるのか百パーセント把握していて私に指示を出します。私は大海原から沈んだ遺物をサルベージするような心持で探します。広い海の中たった一人もぐりこむような、ぐっと息を堪えて飛び込むような気持に襲われます。みざるさんの注文に合うすぐ見つかることも時間が掛かることもあります。どんなに時間が掛かろうとみざるさんは何も言いません。ただじっと前を向いています。最初に言われたのが「どんな時間が掛かっても構いません。ふさわしいものを見つけてください」でした。

 私の抜き出してきた筆記具を握り、葉書にそっとおろします。一度インクが紙に落とされたら最後、その手が止まることはありません。ペン先と紙が擦れ合う音のみが空間を支配します。

書き終えると葉書をそっと持ち上げ、事務所のどこかに置きます。日当たりのよい窓際だったり、本の頁と頁の間だったり、誰かの放置した紙袋の中だったり。それはインクを馴染ませる必要な行為だそうです。寝かせる時間も葉書によって違います。数時間のものも在れば年単位のものもあるそうです。


 みざるさんによって書かれ寝かされた葉書はいわざるさんの元へと運ばれます。

 いわざるさんの仕事は葉書の宛名書きです。みざるさんが書くのは表面だけ、声の当人の名が書かれていることもないこともあります。いわざるさんはぴんと背筋を伸ばし、じっと表面を読みます。そして黒々としたペンで宛名を書きます。それは名前だったり渾名だったり住所だけだったり、時にはなにも書かれないこともあります。

 今日の回収分の葉書を持ち二階にいるいわざるさんの元へと向かいます。いわざるさんの隣にはいつも静寂が座っています。いわざるさんはいつも黒い服を着ています。線の細い男性で、黒い服はその細さを際立させます。背筋がすっと伸び微動だにしない為、いつも声をかけてよいものが逡巡します。私はちいさく息を吐き出して音量を調節してから声をかけます。

「いわざるさん、今日の分です」

「はい」

 ちいさくも澄んだ声が部屋に響きます。いわざるさんのデスクの上に葉書を置くと、いわざるさんは長い指で薄い氷に触れる様に優しく持ち上げます。そしてわが子を見るような眼差しで葉書を見、そして文字を刻むように宛名を書きます。書きあがった葉書は鳩の柄のお菓子の缶の中に入れられていきます。ペン先が葉書を削る音のみが響きます。


 その日の分が書き終わると一階の郵便局長の元へと向かいます。ここの部屋の棚には女の子の人形、ウサギのぬいぐるみ、ミニカーなど玩具や雑貨が散漫と置かれています。部屋の端に置かれているふかりとベッドではきかさるさんが眠っています。

「局長さん、持ってきました」

 キッチンにいる局長さんに声をかけるとピンク地に花柄のエプロン姿の局長さんが顔を覗かせました。お母さんと呼びたくなるような雰囲気を纏っています。

「いつものところに置いておいて。今日は親子丼よ。ご飯にするから皆さんを呼んできてくれるかしら」

「はい」


 局長室に集まりお誕生日席に局長さん、時計回りにみざるさん、いわざるさん、きかざるさん、私と座ります。

「それではみなさん、お疲れ様です。頂きます」

「いただきます」

 基本皆、雑談をせず静かに食事を頂きます。柔らかい鶏肉とふわりと包み込む卵の優しさに舌鼓を打ちます。

「佐藤さん、来週からお盆です。初めにお話ししましたが、明日から朝九時から毎日出勤してくださいね」

「はい」

「それと明日からはきかざるさんのサポートをお願いします。詳しくはきかざるさんに聞いてください」

「分かりました」

 横に座る蕎麦をすするきかざるさんを見ると視線に気づいたのか目があいました。この部屋でいつも寝ているおじさんで何をしているのかは全くわかりません。

「よろしくお願いします」

「ああ」

 それだけ言うときかざるさんは何こともなかったかのように食べ始めました。


 「俺の仕事は郵便配達だ。でもな、普通の配達とは違うんだよ」

きかざるさんは今まで見たことないほど溌剌とした声で話します。

「ふさわしい場所に誰にも気づかれずに届ける、これが一番大切で難しいことだ」

「どういうことでしょう?」

「ここで扱っているのは死者からの手紙だ。それがポストに投函されていたら気味が悪いだろう? あってもおかしくない場所に配達する。例えば孫娘の手提げの中、忘れ去られていたアルバムの間、愛読していた本のページの隙間。そういうところに配達する」

「そんなことができるのですか?」

「できるさ。いうなれば和製サンタクロース。人は害のない赤の他人には大して興味がないものなのさ」

「それはそうですね。好奇心はおせっかいな程旺盛ですが」

 きかざるさんの配達は不思議なものでした。リュックの中に葉書を入れて事務所を出ます。私と雑談しながらふらふらと歩いたり、電車に乗ったりして届けるべき人のものとへと向かいます。事前に調べたりインターネットを使ったりしないけれど、どこにいるのかわかるそうです。受取人を見つけると相手の注意を逸らす方法を見抜き私に指示が下ります。受取人の前でこけたり、道を聞いたり、あるいは近くで買い物をしたりご飯を食べたり。私には無意味に見えることもそれは配達に役立っているそうです。

 きかざるさんは他の二人よりお喋りで配達の最中他愛のない話もします。

「きかざるさんは何故配達の仕事を始めたのですか?」

「話すと長くなるんだが、簡単に言うと会いたい人の名前が見つけたかったから」

「どこにいるか分からないんですか?」

「ああ。いなくなってからどこか埋まらない隙間が出来てしまってずっと探してしまうんだ」

 埋まらない隙間、その言葉が心の奥にするりと入り込みます。

「佐藤さんにもあるのか」

 無意識にうなずいていたのでしょうか、優しく寂しい笑みが私に向けられます。

「未だにその人は見つかりませんか」

「ああ。あっ、来たぞ」

 さっと仕事モードに切り替わりきかざるさんは腰を浮かせました体が溶けだしそうなほど暑い中、私たちは配達を続けます。


 八月十二日、配達に行き戻ってくるとお盆を迎える準備が始まっていました。盆提灯を飾り、盆棚に白布が敷かれています。

「お疲れ様です。そちらが終わったら、精霊馬を作るのを手伝ってもらえますか? 冷蔵庫の前にきゅうりとなすがあるので」

 冷蔵庫の前にはたくさんのきゅうりとなすが置いてありました。

「たくさんありますね。いくつか作るのですか?」

「はい。昨今、精霊馬を作らないご家庭が増えたもので、帰りたくても帰れない方がいるのですよ。そんな方々が乗る分です。今風に言えばタクシーでしょうか」

 きゅうりとなすに割りばしで手足をつけていきます。盆棚にお供え物と一緒にぞろぞろと並んでいる姿はなんとも言えないおかしみがあります。

 夕飯は天ぷらでした。さっくさくな衣が口の中で響きます。海老、サツマイモ、かき揚げ、舞茸、目から口から幸せが広がります。誰も喋りませんが、顔にはにんまり笑みが浮かんでいます。

 お皿の底が見え、お腹も膨れた頃、局長さんが酒瓶をもって戻ってきました。

「明日からは忙しくなりますよ。みなさん頑張りましょうね。例年、お盆の間一人一つ会いたい人の話をすることとなっています。参加は自由ですが、佐藤さんはどうされますか?」

 美味しいものを食べお腹いっぱいになり、どこかとろんとした六つの目がこちらを向いています。私は小さく頷きました。

「それでは」

 日本酒の注がれたお猪口を交わすとちりんと小さな音が響きます。

 局長さんはくっと飲み干し、自分のお猪口におかわりを注ぐと口を開きました。

「私の会いたい人は叔母です。叔母はとても静かな人でした。旦那さんも子どももおらず独り暮らし。親戚一同集まるときには賑やかな音にかき消されてしまいます。ただ唯一、叔母の人が変わったように明るくなる時がありました。それはお祭りの時です。その姿を初めて見たのは十歳の時でした。その時叔母は三十歳くらいでした。

 ちょうど夏祭りの時に祖母の家に行った時でした。祖母の家に着くと浴衣姿の叔母が居ました。叔母は私に明るく話かけ、私に着付けをしてくれました。金魚柄の赤い浴衣。叔母も赤い浴衣を着ていました。私と叔母は手を繋ぎ夏祭りに出かけました。地元の小さなお祭りで地元の人たちで的屋を出しているので大掛かりなものはありません。でも叔母はそんなことを気にせず、右手に林檎飴、左手に水風船、下駄に羽が生えているかのようにくるくる回ります。私には何でも買ってくれました。私は叔母についていくのに必死でした。

 花火が綺麗に見える場所があるのよ、と高台へと向かいました。暗い夜道置いていかれたら戻れないという恐怖の中、慣れない下駄のせいでずきずきする足の痛みを堪え、泣きそうになりながら私は付いていきました。急いで始まっちゃうわ、と急かされ私は涙をこらえるのに必死でした。私が高台に着いたときにはもうお腹に響く音が鳴っていました。隣の叔母さんを見ると一筋涙を零していました。花火が上がり明るくなる一瞬だけ光る雫。私はそればかりに気がとられていました。

 花火が叔母さんの羽を奪っていったかのようにいつもの静かな叔母さんに戻りました。ただ私の胸はどきどきとしていました。それ以来叔母さんと話すことはありません。でも忘れられない涙の訳を今なら一言聞いてみたいと思うのです」

 局長さんはお猪口を口につけました。それが合図かのように皆さんは各々動き始めます。私は残っている苦いお酒を口に含みました。


 八月十三日、準備で気持ちよく疲れた体で故人たちを迎えます。火を消し、食卓を囲みます。今日の夕食は筑前煮、形も保ちつつも柔らかく煮込まれた人参と里芋が口の中でほろりと崩れます。食べ終わると局長さんは日本酒とお猪口を取りに行き、それぞれに注いで手渡しました。

「今日はみざるさん、お願いします」

「はい」

 みざるさんはお猪口に口をつけ語り始めました。

「私が会いたい人は兄です。兄の顔は覚えていません。覚えているのはその背中の温もりだけです。私は幼かった頃、田舎に住んでいました。眩しい光と鳴き声に起こされ、朝鶏の卵を取りに行くのが日課でした。そんな私の生活の中に兄の姿は欠片もありません。いえ、正確には兄はたくさんいます。しかし、私の会いたい兄はいないのです。

 母は隣で野菜の皮むきをしている私にその兄の話をします。誰よりも最初に生まれた兄は力強く優しかったそうです。私たち下の兄弟たちの子守をし、父の畑仕事を手伝う。村で困っている人が居たらすぐ助けに行く。そんな兄だからお国の為に命を張れたのだ、と母は言います。

 私には大きな背中に背負われた記憶があります。父はそんなことをしませんから、あれはきっと兄なのです。忘れられないぬくもりをくれた兄にもう一度会って触れたいのです」

 みざるさんはお猪口に口をつけました。誰も何も口を開かず、お猪口に口を付けました。

「明日からお客様がたくさんいらっしゃいます。おもてなしいたしましょう」


 八月十四日、朝から入れ代わり立ち代わりお客さんがやってきました。食卓にご馳走が並べられ、それぞれが料理とお酒に口をつけます。ほかのひとは自分の持ち場を守り、私は飲み込まれるように消えていく料理が尽きないよう、料理を運び続けます。

「こちらの方々はどちら様ですか?」

 ひっそり局長さんに聞くと、局長さんはにっこり笑って口に指をあてました。

「たくさん視えているのですね。いろいろな方がいらっしゃいます。深入りは厳禁です。お気をつけて。それからつまみ食いは少々、お酒はほどほどに」

 浴衣姿のおじさんが躍り、ポニーテールにジーンズのお姉さんがビールジョッキを傾ける。小学生くらいの女の子がおはぎをつまみ、大学生くらいの男の子が中その女の子の肩に寄りかかっています。皆我関せず、それぞれの時間を過ごしています。

「佐藤さん、視えてんならこっちビール入れてくれよ」

 胸の奥が疼くような声が聞こえ振り返るとおじさん一人がジョッキを傾けていました。一重瞼の細い目、声のトーン、あの人が重なり私は思わず立ち尽くしてしまいました。

「佐藤さん、キッチンのビールサーバーに入っていますからそこから注いでください」

 局長さんに言われ我に返り、おじさんのビールジョッキにビールを注ぎます。

「ちょーっと泡が多いけどそれもご愛嬌だな」

 笑うと目尻に皺が寄りました。胸の奥がぎゅっと掴まれたような感覚に襲われます。

「美味しいですか?」

「ああ、美味いよ。佐藤さんビールは飲むかい?」

「お酒は苦手なんです」

「そうか……、まあ娯楽だからね」

 くかーと飲み干される黄金色の液体は今までで見た中でも一等輝いていました。

「私も飲みます」

 ジョッキにビールを注ぎ戻るとおじさんはジョッキを私に寄せました。

「乾杯」

 カチンとジョッキをならし、ジョッキを口に運びました。しゅわしゅわと苦い液体が喉を滑り落ち口の中にじんわり味を残します。

「不味いって顔してんなア。無理するなよ。いらないんだったらいつでも飲むから」

「自分で、飲みます」

 ジョッキを傾けぐいっと飲むとおじさんの笑い声が気持ちよく頭に響きます。

「いい飲みっぷりだね。顔が残念だけど。皺になってる」

「それ言うならあなたも」

「そんなに皺になっているかな」

 自分の顔を撫でまわすおじさんが妙に幼く見え、私は思わず笑ってしまいました。

 

 日が暮れるころには三々五々去っていきました。四人で食卓に着きます、今日の夕飯はお蕎麦です。ひんやりとした蕎麦と香り豊かな紫蘇がお腹の中にひんやり潜り込みます。

 そして今日も日本酒と共にいわざるさんの話が始まります。

「僕の会いたい人は母です。僕は母のことを知りません。物心ついたときに傍にいたのは祖父母でした。祖父母は優しく甘い繭の中の様でした。柔らかなぬくもりの中僕はすくすく育ちました。

 小学校に行ってとても驚いたことがありました。先生もクラスメートも叫ぶような声で話すのです。声はガンガンと頭に響きます。通い始めた頃は頭が痛くて堪りませんでした。祖父母は最小限のことをひっそりと話す人たちでした。笑うこともほとんどありません。三人で暮らすには広すぎる家が音で満ちることはありませんでした。僕にとってはそれが普通だったのです。

 先生はもっと言葉にしなさい、と言います。面白ければ笑って、嫌だったら怒ってと言います。でも僕には言葉にする意味が分からないのです。僕は心の中で喜怒哀楽を感じています。それらは僕の中で息づき、誰にも邪魔されることはありません。大切で柔らかなそれらを誰かに触られ傷つけられることに意味があるのでしょうか。それをぽつりぽつりと祖父母に話すとゆっくりと頷いてくれました。それは当たり前のことであると彼らの顔は語っています。僕が喋らないと騒がしい人たちは消え、まわりから音が消えます。孤立している、そう思われていたかもしれませんが、僕には心地の良い環境でした。

 クラスのみんなが浮足立つイベントの一つに授業参観がありました。クラスには誰かの母親で溢れかえり、母親たちの声が学校に響きます。その時、僕は気付いたのです。あれだけおしゃべり好きな大人が傍にいるからみんな意味のないことをうだうだ喋り続けるのだと。もし僕に母親が居ればどんな感じなんだろうと初めて思ったのです。喋らない分、人のことをよく見る様になりました。母子というのは不思議です。どんなに似ていないように見えても、奥深くに同じ匂いを潜ませているのです。

 祖父母は母親のことになるとさらに貝のように口が開きませんでした。結局いまでも母のことは生きているのかすら知りません。会えたら感じてみたいのです、母の中に潜む香りを」

 日本酒と共に流し込まれた言葉がお腹の底に溜まります。


 一晩経ってもいわざるさんの言葉が頭を離れません。

「いわざるさん」

「はい」

 いわざるさんの静かな目。私はお腹に力を込めて声を出す。

「子は母と同じ匂いがします、と言っていましたが、それは母と子だけですか?」

「母と子は特に強いですが、家族という繋がりは同等の匂いを持っていると思います。血の繋がりは匂いを醸し出すのです」

「あなたはおじいさまとおばあさまを同じ匂いがするのですか?」

「僕たちは近すぎてもう同じ匂いです。何十年も箪笥にしまい込まれているような決して消えない匂いが染みついているのです」

 私の中にそんな確固たる匂いがあるのでしょうか。自分の匂いが感じ取れたらあの人を感じられるのでしょうか。


「佐藤さん」

 肩を叩かれ、思わず後ろを振り返ると昨日のおじさんがいました。相も変わらずビールジョッキを片手に持っています。

「あ、」

 名前も知らないことに気付き、言葉が続きません。

「どうした?」

「名前を知らないと思いまして」

「ここでは名前なんてないだろ? お嬢ちゃんだってアルバイトだから佐藤さんなわけであって本名は佐藤じゃあないだろ」

「ええ、そうですけど。誰かを指す名前がないのは不便だと思っただけです」

「なるほど。それならニイとでも呼んでくれればいいよ。みんなそう呼ぶから」

「ニイさん」

 なんとも可愛らしく零れ落ちる音が心地よく反芻してしました。

「佐藤さんには会いたい人がいるのかい?」

 唐突に聞かれ、反射的に私は頷きました。

「はい」

「どんな人だい?」

「長い間傍にあった人です。ニイさんは?」

「俺は妹に会いに来ているんだ」

「ニイさんはもう亡くなっているのですか?」

「おいおい……、本気で言っているのか?」

「はい」

 何の気無しに聞いたのにニイさんは目をまんまるにして私を見ます。人間の目ってこんなに大きく見開かれるのだと驚きました。

「今回の佐藤さんは危ういな。局長は何か言ってなかったか?」

「深入りは厳禁と」

「毎度のことだが言葉が足りないな。佐藤さんは今まで幽霊を見たことはあるのか?」

「幽霊かどうかは分かりませんが私にだけ見えている人は良くいました。区別はつかないです」

「それはいろいろと大変じゃあないか?」

「私にとってどういう存在か。それだけですから区別する必要もありません」

「君は生きている。区別は必要だ」

「生きていることこそ正義、そういう考え方がよくわからないのです。生きているからと言って優しいわけではありません。生きているからと言ってずっとそばにいられるわけではありません。私を息づかせてくれるのに生死は関係ないのです。私自分が生きているという自信がありません」

「なるほどねえ。じゃあ死にたい?」

「死にたいというほどのエネルギーもないのです。エネルギーのタンクが空っぽになってしまった、そんな感じです」

 私の口は思いもよらぬことを紡いでいると思うと同時にその通りだと納得している自分が居ました。

 ふーん、と頷きビールを傾けます。私は手持無沙汰でジョッキを眺めます。黄金色の液体は体内にするする侵入して迷路のような体内を舐めますように進んでいくのでしょうか。内側にはてらてら光る桃色の肉が潜んでいるのでしょうか。それともそこにはなにもないのでしょうか。

「妹さんには会えましたか?」

「まだだ」

「会いに行かないのですか」

「ここに来るんだよ。佐藤さんは会えた?」

「いいえ」

 会いたい人、細く長い腕の温もりが脳味噌を擽ります。でも会ってはいけないのです。

「まあ、わざわざ話すことはない。大切な思い出程誰にも穢されないほど深いところにそっととっておいた方がいい。良い思いでならなおさらな」

 その言葉はじんわりと体に浸み込んできました。

 局長さんに呼ばれ、私はきかざるさんのサポートをするべく外へと出ました。殴られているような暑さの中、ニイさんの言葉が脳味噌を反芻します。あの甘く閉じた世界。あの人と離れて「普通」といわれる世界で私たちは異物だったことを知りました。それでも、それは私にとって非難されるようなことではないのです。


 遊び疲れた太陽が眠りにつくころ皆さんが去り、夕食が始まります。今日は冷しゃぶです。ひんやりとしたお肉と胡麻だれが絡み合い口の中で広がり、火照った体を癒します。

 今日はきかざるさんが持参した焼酎と共に話が始まりました。

「俺が会いたいのはずっと昔に一緒になった嫁だ。今日日の結婚のように好き合って結婚したわけではない。結婚適齢期の男女がいたから一緒になっただけだ。ぺちゃくちゃ喋る友達の嫁さんと違って、静かな人だった。家で粛々と家事をして俺の成すことには文句をつけない。たいていの無茶は受け入れてくれるから楽でありながらも物足りなさを感じていた。

 ただ、落ちてきそうな丸い月が昇る晩だけは違った。風呂から上がると一等上等な着物に腕を通す。そして黒の高級感のある布に覆われた箱から横笛を取り出す。神具を扱う様に恭しくそっと手に取り、外に出て月空の下寂れた家の前で笛を吹く。その音は言葉よりも雄弁に感情を綴り、俺に己を見せつけてきた。音楽の教養なんざこれっぽちもない俺でも圧倒されてしまったよ。彼女の持つ烈しさと美しさ、それはほかのどんな行為よりも濃密で強烈な時間だった。月が翳ってくると我に返ったように一礼し、家に戻り笛をしまった。激しかった彼女は消え、貞淑な嫁へと戻る。

 俺はその晩から月夜の彼女の姿の虜になっちまった。粛々と従う嫁もこの笛だけは煩い位月が輝く晩にしか吹けないのです、と決して吹こうとしない。俺が買ってきた笛ではあの魅力は出ない。あの笛出なければいけないのだ。

 満月に近い日は何をおいてもすぐに帰った。彼女の一挙手一投足を見逃さないよう息を潜めてみつめ、その笛の音で他にはないほどの甘い充足感を味わった。

 ある時待ちに待った満月の晩なのに雨が続いた。どれだけ笛をねだっても嫁は決して笛を吹こうとはしなかった。最初は俺も我慢した。でもそれが何晩も続くと若い頃の俺には辛抱ならなかった。だから俺は無理やり吹かせた。音色はほかの晩より弱弱しく痛々しい……、それでも俺はそれを貪った。もうやめてください、弱弱しく言う彼女を意に介さず三日三晩続けた。その翌日目を開けると彼女はいなかった。夜になっても帰ってこない。その翌日も。街の人に聞いても彼女を見た人は誰もいない。彼女はふっつりと消えた、あの笛と共に。

 どんなに時間が経っても俺の中にはあの音が巣くっている。消えない紋章のように。もう一度会えるのなら俺はあの音にもう一度抱かれたいんだ」

 きかざるさんは一気呵成に言い切ると焼酎を飲み干しました。釣られて口に入れた焼酎はその独特の味を口の中に住みつかせます。その味と紋章という言葉が私の過去の中枢と刺激します。私のあの人にとっての私ということが頭の中をぐるぐる回ります。あの人が私の中に残していった跡。あの人が好きだったお酒と一緒に浮かび上がってきます。私はもう一杯、もう一杯と杯を重ねます。喉が焼け付くように感じます。


 八月十六日、今日でお盆が終わりだからか、閑散としています。

「ニイさんは今日もいるんですね。今日も昼からビールですか」

「美味いんだから仕方ない」

 確かにこの人の飲むビールには美味しそうと思わせるだけの魔力があります。

「佐藤さんも酸いも甘いも知ったらこの美味しさが分かるよ」

「そうでしょうか。私も見たものはありますよ」

「もっと現実と向き合ったら分かる」

「現実は儚くて痛いです」

「そうだね。でも、見なきゃいけない時は来るんだ」

「なぜでしょう」

「思い出の中だけでは生きるのは寂しいから。辛いとき、思い出に縋って生きていくこともできる。逃げることに悪いなんて正論を投げつけるつもりはない。でも沈んで逃げて辿り着く先はたぶん楽園ではなくてひんやりとした荒野だと思うんだ。君にとっての会いたい人がまだ生きているのなら荒野のオアシスくらいを目指しても良いんじゃあないかな。なんだか説教臭くなっちまったな」

 ちいさなオアシス。それを私は目指しても良いのでしょうか。私の心を知って尚、まだそう言ってくれるのでしょうか。ニイさんを見上げると私を通り越してその目は遠くを見つめていました。がたんとドアが開き、みざるさんが顔を覗かせます。

「佐藤さん、ビールはまだ残っているかしら」

「はい」

 ジョッキにビールを注ぎ持って行くと気持ちいい飲みっぷりを披露してくれました。

「みざるさんはビールがお好きなんですか?」

「お好きでもあるし、仕事の後のビールは格別なのよ。私のお仕事はさっき最後の一枚を書き終えて終わったから」

「お疲れ様です。最後の一枚ってどんなお手紙だったんですか?」

「それは毎年決まっているの。最後の日は私自身のお手紙を書くの。他の誰の声も出ない自分の声をしたためて終わるのよ」

 そう言ってジョッキを傾け飲み干します。私は思わず見とれてしまいます。それは隣に立つ人も同じだったようです。

「じゃあ、俺は帰る準備するわ。佐藤さん、さようなら」

「あ、さようなら」

「あら、誰かいらしたんですか?」

 みざるさんが不思議そうに首をかしげました。

「はい。今から帰られるようです」

「そうなんですね。お元気で、はおかしいですね。また来る日まで、でしょうか」

 そう言ってみざるさんは手を振りました。それは明後日の方向でしたがニイさんは嬉しそうに手を振り返しました。

「佐藤さん、楽しかったよ。君はね、心に言葉を溜め込んでいるね。言葉にしてみるのも手だ。幸運にもここの人たちは聞くことに慣れている」

 それだけ私に言い残し、去っていきました。

 ご飯を間に私たちは向かい合って座りました。みざるさんはジョッキをニイさんと同じような角度で傾けずんずんと開けていきます。なくなるとセルフで注ぎに行きます。

「手紙ってとても独りよがりなの」

 唐突にみざるさんが口を開きました。

「何故ですか?」

「だって手紙は自分の思いの丈をしたためるものだから。誰にも邪魔をされずに相手の思いに関係なく自分の思いをぶつけるの。自分の思いだけをまっすぐに。静かに見えてとても激しい。手紙ってそういうものなのよ」

 にこりと微笑み、再びジョッキを傾けました。みざるさんのビールが消えていくのを眺めているうちにいわざるさんが降りてきて、きかざるさんも戻ってきました。いの一番にビールをジョッキに注ぎます。黄金色の液体は三人の体内へと消えていきます。四人で同じ卓についても夕食時と同じように話はしません。携帯電話も触りません。私はぼんやりと思考を巡らせました。


 日も翳り、人も随分と少なくなりました。局長さんが顔を出し、送り火をやるから、と外に出ます。まだまだ残る張り付くような暑さ中で送り火を焚きます。

「お精霊様、お精霊さま、日の明るいうちにお帰り下さい」

 火は燃え尽き残り香が鼻孔を擽ります。

 部屋にはもう誰も居ませんでした。片付けをし、残っている食事をまとめます。

「今日で終わりですから、あまりものを夕飯にしましょう」

 冷蔵庫から日本酒を持ち出し、お猪口に注ぎます。

「それでは皆様お疲れ様でした」

 局長さんがお猪口を掲げ、みんながそれに倣います。決して音は立てず、静かに口に運びます。お酒を飲みながらあまりものを摘まむ、それはいつにもなく気だるげな空気が漂っています。

「佐藤さんは今日までですね。お疲れ様でした」

「お世話になりました」

「今日は佐藤さんが話してもらえますか?」

「はい」

 私は辛い日本酒をぐいっと飲み、話す準備を整えました。

「私が会いたい人は父です。父はひょろりと背が高い人で私と話すときはいつもかがんでいました。父はいつも私を遊んでくれました。私は父が大好きでした。

 ある時私にちいさな妹が生まれました。ちいさな妹はころことしてとても可愛らしく、親戚中のアイドルでした。みんな二言目にはちいさな妹のことを話題に乗せます。ちいさな妹はふかふかの手と足で動き回り、黒目がちの瞳はくるくるいろいろなものを映し、お口には笑みを絶やしません。そんなちいさな妹にみんな心を奪われました。私の父だって例外ではありませんでした。

 私は遠くへ行きたがるちいさな妹の手をいつも握っています。小さくてふにりと柔らかく熱の絶えない手。お母さんは言います。「お姉ちゃんなんだからしっかりしてね」。お父さんは言います。「妹は小さいんだから目を離しちゃあ駄目だよ」。おばあちゃんは言います。「妹ちゃんは可愛いね、お姉ちゃんも思うでしょう」。お姉ちゃんだから、ちいさな妹を守ることは当たり前のことなのです。遊んでもらうことも抱きしめてもらうこともちいさな子の特権なのですから。私の心はもう大人にならなくてはいけないのです。

 それは家族で川に遊びに行った時のことでした。私はいつものようにちいさな妹の手を握ります。お母さんとお父さんはちいさな妹を私に任せ、車へと荷物を取りに行きます。川に入りたくて仕方ないちいさな妹は私の手を引っ張ります。私はされるがまま川に向かいます。ちいさな妹はずんずん進んでいきます。靴に水がジワリと浸み込み、ズボンの裾がぐっしょり濡れます。水は足元をざわざわと撫でてきます。それすらも楽しいのかきゃらきゃら声を立て前へと進んでいきます。私は立ち止まりました。ちいさな妹は私を見て、手を引っ張ります。ぎゅ、ぎゅっと。

 私はパッと手を開きました。ちいさな妹は勢い余ってころりとこけます。水は立ち上がろうとしたちいさな妹の足を掬いました。ちいさな妹はころころと音もなく流されていきます。音もなく静かに静かに、ころころころころと。

 ころころころころ転がってちいさな妹はどこへ辿り着いたのでしょう。美しい大海原でしょうか、秘密に満ちた密林でしょうか。はらぺこの魚が集う深い水の底でしょうか、蛆虫たちの生息する薄暗い森の中でしょうか。そのまんまるの瞳は何を見たのでしょう。その時も口元の笑みは絶えなかったのでしょうか。私は時折そんなことを考えます。ちいさな妹は未だに見つかっていません。

 ちいさな妹がいなくなり、みんな悲しみにくれます。家には消えない影が落ちました。両親は私の中に妹の面影を見出します。父は面影に縋り、母は拒絶します。父は長い腕で私を捕まえ、固い胸の中に閉じ込め低い声が「消えないで」と鼓膜に直撃します。痛いほど抱き締められ、私もその腕が消えないように掴みます。母は家から立ち去り、私と父の生活が始まりました。その生活は穏やかなものでした。父にとって私は私であり妹で在りました。なんでも二つ用意されます。料理も服も本も。

 でも時間は残酷にも流れ私は成長し、妹は時間の中に囚われます。父の中で矛盾が生じついに妹が消えたことを意識しました。残った娘、私が消えないように強く抱きしめます。私は私の全てを賭けて脆く美しい父を受け止めます。ずっと私のもので在ってほしいと思っているのです。

ある日私たちは切り離されました。同じ部屋にいるのは年の近い女の子、周りにも子どもばかりで抱きしめてくれる大人はどこにもいません。抱きしめてくれるのはそんな誰にも見えない人だけでした。ぬくもりは私を一瞬慰めます。でも父の残した後はかさぶたを張り、肉を形作るほど強固なものはありません。だから、私はもう一度父に会いたいのです」

話し終えお猪口を傾けます。それを合図に皆それぞれ立ち上がります。私はもう一杯お猪口に日本酒を注ぎお腹に落としました。それはじわりとお腹の底を暖めました。

後片付けをして帰路につきます。生暖かい風が私にまとわりついてきます。

冷房の効いた電車に乗り合わせた人々は顔に疲れを浮かべていました。車窓に映った私も同じ顔をしていました。私はレモンサワー片手に家に帰り、ぷしゅんと缶を開けました。


翌朝ベッドで目を覚まし、着替えを済ませ、鞄を持ったところではたと仕事は終わったことに気付きました。鞄を籠に放り込むとなにかがぺらりと落ちました。拾い上げるとそれは一葉葉書。端正な文字で私の名前が記されていました。裏には朝顔が描かれ紺色の文字が並んでいます。

「お久しぶりです。あなたに手紙を送るのは初めてですね。あなたの前から姿を消して以来、手紙の一つも書こうとしなかったのですから親失格ですね。

 あの子が消えてから私はずっとあなたのことを記憶の隅に追いやっていました。あなたのことが嫌いだからででも愛していないからでもありません。あなたを見るとあの子のことを思い出していてもたっても居られなくなるからです。あなたのなかにあるあの子の面影がもうあの子がいないことを浮き彫りにし、私があなたたちから目を離したからあの子が消えたことを見せつけてきます。弱い私にはそれが耐え切れず、すべてを捨て一人できるだけ忙しい仕事に打ち込みました。嵐のような日々に身を埋めることで全てを頭の隅に片寄せ心を消し去りました。そうでもしなくては生きていけなかったのです。

 ある時、私は昔ながらの友人に会いました。その友人との他愛のない話の中で、友人の叔母さんの話を聞きました。その叔母さんが花火を見て一筋の涙を流した、それが忘れられないほど印象的だったという話でした。その話を聞いて私はあなたたちのことを思い出しました。それでも会いに行く決心はつきませんでした。

 身を捨てるような生活のせいで体を壊しました。ただ白い天井を見つめているとあなたたちとあの人のことが私の心を占めます。許してもらえるとも会いに行けるとも思ってはいません。それでも声が聞けたら、そんな馬鹿なことを考えてしまう私が居ます。あなたたちはずっと、私の中にいます。ごめんなさい、感謝を伝えきれないほど愛しています。」

 昨日のみざるさんの言葉が蘇ります。私の感情を抜きにして語られる言葉、それはとても独りよがりです。でもそこには私の知らなかった母の感情がありました。

 私は近くの文房具屋で淡い藍色の便箋と白い封筒とボールペンを買いました。家に帰り机の上に置いて正座で向き合います。

「お父さんへ」

 まずは何から書きましょうか。この夏の出来事、大学生になったこと、お父さんと離れてからの日々、お父さんへの思い……、書くことは山ほどあります。ひとつひとつ言葉にして綴りましょう。そして宛名を書き、届けて貰いましょう。

ずっと私と父は手を伸ばせばすぐに手を握れる程近くに居ました。今は会いに行くこと禁止されていますし、行けば迷惑が掛かります。他人にとって歪に見えるあの時間は私にとって幸福な時だったのです。あの頃気持ちをまっすぐに伝えるのに言葉はいらないと思っていました。でも手間をかけてもどかしく言葉を綴りましょう。手紙という手榴弾を投げつけてみれば私たちの荒野に地殻変動が起こるかもしれません。もしかしたらちいさなオアシスも誕生するかもしれません。あの頃とは違う手段で、あの頃と同じ気持ちをあなたへ。




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紫伊 @43_shii

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