第2話 古代の技術レベル

二人の少女が出会ってから十年後、篁伊織は通学路を歩いていた。伊織は黒髪の耳かかるまでの長さをしており、前髪は眉毛にかかる長さである。伊織は二重で鼻筋が通っている端正な顔立ちをしていた。痩せ型ではあるものの筋肉は付いているようである。伊織は学校の帰り道に一人で暮らす家に続く道を歩きながら溜息をついていた。


「はぁ……今日も家に帰る時間か……家族がいないって淋しいよな」


伊織は子供の時に悠久の都を守護する騎士に冤罪をかけられて殺されそうになった。実際に伊織が犯罪をしたわけではなく上流階級の子供がしたことであったが、その子供が伊織がしたと嘘をついたために伊織が断罪をされることになった。しかし、伊織の両親が私たちの命で伊織を助けてと言ったので、騎士は伊織の両親を斬り殺すことで伊織の罪を不問としたのである。


「父さんと母さんが生きていればまた違ったのかな……」


伊織は自身の境遇を不幸に思いながらも、騎士のしたことだし俺には何も出来ないと考えていた。すると、左下に走っている電車の上に誰かが乗っていることに気がついた。


「誰だあれ? 何で電車の上になんか……」


すると伊織は、最近抵抗軍がまた動きを活発化させているとニュース番組で言っていたことを思い出した。


「抵抗軍か。 あの電車は貨物電車だから何か奪うのかな?」


伊織は普段なら興味を感じないのだが、今は抵抗軍が何をしているのか知りたいと感じていた。その貨物電車が伊織の場所から遠ざかると、突然爆発をした。


「ば、爆発!? どうして!?」


伊織はその爆発があった貨物電車に走って近寄ると、黒いフードを被っている人が線路に複数倒れていた。伊織はその中の一人に大丈夫ですかと声をかけた。伊織が声をかけた人は爆発の影響で吹き飛ばされたようで、痛む身体に鞭を打って身体を起こした。


「うぅ……身体が……」

「だ、大丈夫!? どこが痛いの!?」


伊織が話しかけると、黒いフードが外れてそこには赤い髪色の伊織と同い年の女の子がいた。その女の子の右手には薄汚れた布で幾重にも巻かれていた。


「この剣を……この剣が鍵に……」

「剣がなに!? 鍵ってなに!?」


伊織が赤い髪色の女の子を揺さぶるも、気絶をしてしまったらしく起きる気配がない。伊織は女の子の持っている剣を掴むと、頭を中に鈴が鳴る声が響き渡った。


「な、なんだ!? 急に頭の中に声が……な、何を言っているの!?」


伊織が驚くのも無理がなかった。女の子が掴んでいた剣を伊織が持った瞬間に、頭の中に鈴が鳴るような綺麗な女の子の声が響き渡ったからである。その声は伊織にその剣で世界を救い真実を明らかにしてと言っていたのである。


「その剣を持って世界を救い、世界に本当の真実を明らかに……」

「どういう意味だ! 俺に何をしろって言うんだ!」


伊織は空に向かって叫ぶも、答えは返ってこない。


「その剣と共に世界を救って……」


次第に声が聞こえなくんると、消え際に世界を救ってとその女の子の声が言った。伊織は俺に何が出来るんだと剣を抱いて立ち上がると、壊れた貨物電車の先頭車両の方から騎士が数人歩いてきた。


「抵抗軍が邪魔してきたようで、この貨物に積まれているある武器を狙っていたようです」


茶髪の短髪の若い男性騎士が、黒髪で長髪の中年の男性騎士に話しかけていた。黒髪の長髪の男性は、壊れている貨物列車の部品を跨ぎながら抵抗軍かと呟いている。


「抵抗軍はただの住民だろ? 何でここまで出来るんだ?」


その長髪の男性の問いに茶髪の若い男性が、ただの嫌がらせじゃないですかとへらへらとした顔で答える。


「そうか? 何か目的があってのように思えるが……」

「騎士に恨みを持つ人や、スラム街の住人のうっ憤晴らしだと思いますがね?」

「うっ憤晴らしならいいが、この貨物車両が襲われたことに何か意味があるように思える」

「この貨物車両ってどんな武器が乗せられていたんでしたっけ?」


そう茶髪の若い男性が聞くと、黒髪の長髪の男性が外から見つかった古代の剣だと答えた。


「古代の剣ですか? 初めて聞きましたけど……」

「まだ上層部にしか伝わっていない事実だからな。 その剣は選ばれた人物しか扱えない代物で、剣にはとてつもない力が宿っていると言われている」

「とてつもない力ですか? 古代にはそんな武器を作れる力があったのですか?」


そう茶髪の若い男性が小首を傾げて聞くと、黒髪の長髪の男性は外の技術は古代であってもこの世界の技術よりも、数十段階も上の技術レベルだと前を向いて答えた。

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始まりの世界の物語~少年は聖なる剣で運命を切り開く~ 天羽睦月 @abc2509228

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