第20話 最後の会話

(凛ちゃんが転生する前の 最後の会話です)


アモン

「停滞し不平不満ばかり言っていた魂たちが こうも簡単に満足して純粋エネルギーに昇華していくとは、キツネにつままれたようだ」


凛ちゃん

 「マズローの欲求の5段階にあわせたの。これを私流に解釈して魂の昇華に結び付けてみました」


「生理的欲求:これは生存のための必要条件が満たされること。

  原始的社会では これが満たされて満足のうちに死ぬことができれば人間は昇華したわ。

  自然環境の厳しさに負けて死んだ魂たちは 不屈の精神・パイオニア精神の塊として転生し、人間社会を進歩させる原動力となり満足して昇華した」


「安全・社会・承認欲求:

 人間集団が自然環境に打ち勝てるようになった時に、人間集団の中で序列ができたり、支配する者・搾取される者もできてしまった。


 その結果、他者のモノを奪って得をしたいとか 他人を痛めつけることによって自分が偉くなったという満足感を得たいとかと言う卑賤な輩の欲求が生まれたり、

 自然相手に戦えないなら他人と争って勝ちたいという 原始のパイオニア欲求の変形バージョンが発生したり

 そこから派生して 前世で他人に負けたから今生こそはという傷ついた魂たちのリベンジ欲求がいりまじったもの、それらが 冒頭の3つの欲求に分類された。


 だから私は 攻撃衝動を そのパターンごとに存分に発揮させるワールドを作って

魂たちが抱え込んだストレスを完全に発散させることによる昇華をねらったわけ」


「さらにまた 謹厳実直まじめな魂たちにとっては 安全欲求を究極まで満たすことのできるポケモンワールドのような世界も用意しました。

 前世において脅かされることへの警戒心と、自尊心を保ち続けるために生じたストレスを癒すための世界」


「自己実現欲求:

 社会全体として構成員が安全に飢えることのない社会が実現した時 それは現世における天国の実現につながるはずであったのに、

「理想」を唱える者達が 「精神の高みをめざそう」なんてたわごとをふきまくったせいでできた欲求。


「めざせ自己実現スローガン」によって 決して実現することのない理想を追いかけるストレス「隣の芝生」症候群にかかってしまった魂たち、この者達が 神々の転生待ち世界に滞留してしまった無気力魂・決して満足することのない不平不満の魂たちの実態と考えました。


「どれほど 充実した人生を送っても まだ何か足りないものがあるはずと言う思い込みほどやっかいなものはない。


 実直な精神は レジャーや憧れの世界を「夢」として楽しむ余裕をもって人生をおえることができるのだけど、それでも 「あなたも夢の実現を!」なんてコマーシャルを毎日毎日何十回も無意識化に働きかけるコマーシャルにさらされ続け、「夢を手に入れよう 其れこそが人生!」なんてスローガンを子供のうちにすりこまれてしまったら・・死んでも死にきれない思いを抱え込むことになってしまう。


そういう 本来なら背負わなくても良かったストレスを背負わされてしまった魂たちの為に作ったのが レジャーランド世界。


もとが充足した人生を送っていた魂たちだから 思いっきりはっちゃけて 外から刷り込まれた不満足感を発散させれば それで幸せに昇天できる。本来の自分自身にもどって。」


「そして観念に凝り固まった魂たちもまた 己の信念や観念の実現めざして、各種ワールドの原動力となることを選んで結果的に純粋エネルギーとして昇天」


「この仮説的世界観で構築した各種ワールドに 神々も含めた多くの魂が満足していただけたのなら 私も満足です。」


 「というわけでおやすみなさい。 人生ほどほど 満足した時に昇天できるのが一番のし・あ・わ・せ♡」


アモン

 「おいおい 俺がまだ手に入れてない幸せは結婚してから作る家庭生活なんだが」


アマテラス

 「そういう実直な人生は リアルワールドで実現してください

  リアルワールドでかなえられる夢と満足は 何度でも転生して再チャレンジできますから。


  リアルワールドで傷つき停滞した魂の再生のために こちらの夢ワールドがあるとわりきってしまえばいいのです」


アモン

 「では 俺は 眠りの世界でリアルワールドで暮らす夢をみることにするか。

  おやすみアマテラス」


ゼウス

 「マズローの欲求仮説をマーケティング戦略に利用されては 傷つく魂ばかりが増えるのも道理だわい。

  やはり その世界を滅ぼすことこそが 魂の循環を良くするためには必要だな」

  

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光、あれ!? 木苺 @kiitigo

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