結(3)

 空が蒼白みかけてきたのがカーテン越しにわかる。



 スグルは、目の前に老いた自分自身の顔が見えるのに気がついた。

 見る見るうちにその顔が遠ざかる。

 どういうわけか、いつの間にかドローンを起動してしまったらしい。

 そう思いながら部屋の隅を見ると、待機したままのドローンが見える。

 今度はどうしたんだ……。

 戸惑っているうちに、スグルの身体は天井を突き抜けた。



 ふいに、だれかがスグルの手をとった。



 目をあげると、白いブラウスと緑のスカートの少女が、長い髪をなびかせ、スグルの方を見て、優しく微笑んでいる。

 サエコだ。

 見た目は違うけれどスグルにはすぐわかった。

 彼女の手につながっている自分の手は、浅黒くすらりと長い、少年のものだ。

 これは、明け方の夢だろうか。

 それとも、その時が来たんだろうか。



 山並みの彼方から、朝の陽光が射す。

 雲間から光の筋が伸びる。

 スグルは、あらためて思い出した。

 今までずっとすごしてきた苦しい日々、たのしい日々、哀しい日々……。

どれもが、いとおしく、かけがえのないものだった。



 スグルはサエコに笑いかけ、彼女の手を引き、光射す彼方へと駆け出した。

 彼女の笑みを何よりも心強く感じながら。


(完)

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スグルとサエコと廃墟と宝物の夏 安岐ルオウ @akiruo

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