第6話

「陽一、一つ聞きたいんだけど」

「ん?」


 今は昼休み、昨日とは違い皆静かにご飯を食べている。やっぱり平和が一番だな。

「聞きたいことって?」

「昨日の先輩のことなんだけど」

「ああ、あの人か」


 陽一は俺の聞きたいことを理解したのか一つ一つ丁寧に説明していく。


「あの人の名前は山田 純(やまだ じゅん)。

 俺たちの一つ上の三年生だな」

「やっぱり先輩か。それで?」

「まあ、あの容姿だから大層女子には人気らしいがあまり良くない噂があって」

「へぇー、それって?」

「強欲、というかなんというか。欲しいものは全て手に入れる主義らしい。意外と被害者も多いんだとか」

「強欲、ねえー。ますます関わりたくねえな」

 何となく嫌な予感がしていたが、やっぱり当たっていた。まあ少なからず関わらない方が良いというのは確定だな。

「けど、その強欲も去年ぴったり収まったらしい。何でか分かるか?」

「うーん。……あっ、もしかして」

「ああ、今のお前の彼女兼学年一の美少女でもある葉山さんが入学してきたからな」

「関係ありありじゃねえか……」

「最初の一年は自分からいかなくても相手から来るだろうと思っていたらしいが、全く来る気配も感じられなかったらしい」

「自意識高すぎるだろ……」

「だから今年から猛烈アタック中なんだと。色々根回しもしているみたいだけど、女子の守りが堅いから難航中っぽい」

「良くない噂を知っている人達が、ガードしてくれているってことか」

「まっ、簡潔に言えばそうだな」


 特に面識がない人達のおかげであまり被害はないらしい。感謝だな。

「一応頭の片隅にでもいれておけ。いざっていう時のためにな」

「ああ、助かったよ。ていうか一つ言って良いか?」

「ん?何だ?」


 話しながらずっと気になっていたことを言う。

「葉山遅くね?」

「確かにもう結構時間経ってるんだけどな」

 スマホを取り出してみると、気付かない内に連絡が来ていた。内容を確認すると、

『遅れるかもしれません。ごめんなさい』

「うわっ早速かよ……」

「手が早いなあ。あの人」

「ちょっと行ってくるわ」

「おう。一応遠くで見とくよ」

「サンキュー」


 俺は分かったと返信をし、隣のクラスに向かう。だが、直ぐに原因が分かった。

「……何してんですか?先輩?」

「ん?お前は昨日の!」


 山田先輩は葉山のクラスのドアのところに立っていた。そのせいで葉山が出れなくなっていたっぽいな。

「全然出てこないんだがどうすれば良い?」

「変態に教えるほど俺も馬鹿じゃないんで」

「へ、変態?!」

 俺は葉山の教室に入り、女子が集まっている場所に向かう。

「ごめん、ちょっと良い?」

「あっ、葉山さん来たよ」

「後は頼んだよ~」

 どうやら本当に守っていてくれたらしい。

本当に感謝しかない。

「葉山、行くよ?」

「えっ」


 俺は葉山の手を取り、教室を出る。

 後ろから「はわ、はわわ。て、手が触れています!」と、聞こえるが今は放っておこう。

 俺も意識すると赤くなってしまう。

「あっ、は、葉山さんどこに行くんだい!」

「あんたと話すことなんかねぇーんだよ。

 早く帰れ!」

 俺はそう言って、近くにいた陽一と中庭に向かう。昼はそこで食べることにした。


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