第5話

「好きです!付き合ってください!」

「ごめんなさい。無理です」

 あーやっぱり無理か。そりゃそうだろう、だって告白されてるの葉山だもの。


 今は昼休み、葉山と俺の教室で昼飯を食べていてようやく食べ終わったと思ったのも束の間。どこからか見知らぬ生徒が教室に入ってきて、いきなり葉山に告白した。


 たぶん上級生だろう。良く見れば陽一以下だが、顔は整っている。何人か告白の場面を見て絶望した顔をしているので、もしかしたら案外人気者なのかもしれない。


 まさかあっさり断られると思っていなかったのか、男子生徒は呆然としている。

「と、友達からとかは無理かな?」

「無理です。私には彼氏がいますので」

「ど、とこのどいつだい?その人は。僕よりかっこいいのかな?」

 おいやめろ、周りは俺と葉山が付き合っているのを知っているため色々な視線が突き刺さってるんだよ。


「はい。私はあなたよりは断然かっこいいと思っています」

「っ!誰なんだ?!」

 葉山が席から立ち、こちらに歩いてくる。

 なんだか嫌な予感が……。

「この人が私の彼氏です」

 俺の顔を見た男子生徒は、これまた意表を突かれたかのような顔をしている。

 ごめんな!イケメンじゃなくて!

「こ、こいつが僕よりカッコいいだと?」

「はい。私はそう言いました」

 分かる、その気持ちは分かるから殺意に満ちあふれた目で見ないでくれ!

 俺が一番アウェーなんだ!


 こういう時に陽一みたいなイケメンだと堂々としていることが出来るのだが、生憎そこまで自分に自信も無ければ、自惚れてもいない。

「そ、そうかわかった。今日のところは一旦帰ろう」

「いや二度と来ないでください」

 葉山の罵倒にも拍車がかかっている。

 男子生徒はそそくさと教室を出ていった。

 めちゃくちゃ緊張したー。い、胃が痛い。

「あ、もう昼休みが終わります。私は行きますね」

「お、おう。また後で」


 誰もが惹かれる笑顔で颯爽と帰っていく

葉山。俺はいたたまれなくなり近くの陽一のところに向かう。

「大人気だな、お前」

「皮肉でもやめてくれ。俺は主人公じゃないんだよ」

「葉山さんの、主人公だろ?お前は」

「……どうだか」

 本物の主人公みたいな奴に言われても嫌味にしか聞こえないんだが。

 最近は環境が変わったこともあり、周りの俺に対する視線が変わった気がする。主にマイナス方向に、だが。特に男子。

「けど、今は楽しいんだろ?」

「……まあな」

「じゃあ今を楽しんでおけ。いつまでも続くはずはないんだからさ」

「陽一、お前……」

「俺も見物人として楽しませてもらうし」

「お前やっぱ楽しんでるだろ!」

 周りもどんどん変わってきているが、今の状況を楽しもうと思った今日この頃だった。

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