マオマオくん作中作『閃光王女狐狸姫』

第〇〇話・山のキャンプ場と海の家が崩壊⁉新たな仲間『古代のミイラと即身仏の姫』①

『狐尾ゆるり』たち、閃光王女は夏休みの定番。海水浴&山のキャンプに来ていた。

 海派と山派に、意見が真っ二つに分かれ。

 両方の意見を取り入れた、山と海が同時に満喫できるキャンプ地を、ゆるりたちはネットで探し出して来た。

「う~ん、空気がおいしい。やっぱり夏は涼しい山よね、ヤッホー! 海のバカヤロー!」

 海に向かって、皮肉っぽく叫ぶ。火焔王女・火車姫を、水着姿でキャンプ参加している。


 水竜王女・みずち姫と、雷獣王女・鳴神姫が嫌そうな顔で眺めている、蛟姫が呟く。

「なんで、あたしと鳴神が水着姿でキャンプしなきゃならないのよ……だいたい、ゆるりが山派の火車に賛同して挙手するから、こんなややこしいコトに」

「あたしは、公平な立場で……山も海もどっちも楽しめるようにと」


 薪を火の中に放り込みながら、ヤブ蚊に刺された体をボリボリ掻きながら蛟がぼやく。

「これだから、山は嫌い……鳴神もそう思うでしょう」

 紙皿に乗せた焼きソーセージを食べながら、水着姿の鳴神姫が言った。

「オレは、別にどっちでも良かったんだけれどな……虫刺され防止のスプレー持ってきているから」

 怒鳴る蛟姫。

「裏切り者!」


 そんな、娘たちがキャンプ場でワイワイやっているのを。

 キャンプ場近くのバンガロー管理室の窓から、管理人アルバイトの男子大学生がつまらなそうな表情で眺め呟いていた。

「ふざけやがって、 こっちは夏休みなのにずっと楽しんでいる連中を横目で見ながら、管理人のバイトで住み込みだ……ふざけやがって」


  ◇◇◇◇◇◇


 狐狸姫たちが、キャンプサイト場でバーベキューを食べ終わった頃……時計のアラームが鳴った。

 途端に生き生きとする蛟姫。

「海の時間だぁぁ! 海ぃぃぃ、海があたしを呼んでいるぅぅ!」

 水着姿で駆け出した蛟は、キャンプ場から続く石段を駆け下りて、地盤沈下で沈み込んだ石段から直接、砂浜になっている海水浴を走って。

 海に波飛沫をあげてダイブした。

「気持ちいぃ! やっぱり海最高! きゃはははっ」


 蛟姫から遅れて石段を下りてきた、狐狸姫たちもキャンプ衣服を脱いで水着姿になると、ビーチシートを砂浜に敷いてから海へと渋々顔で入った。

 そんな、海遊びをしている狐狸姫たちを、海の家の女性バイト店員は、不満そうに眺め呟いていた。

「あたしだって、海で遊びたいわよ……なんで、人手が足りないからって朝から晩まで海の家で仕事しないといけなのよ。最初の話しと違う……たっぷり海で遊べると思っていたのにぃ、イラついてくる」


 バンガローの管理人室の男子大学生と海のいえの女子短大生の、体から目に見えないドス黒い何かが湧き上がっていた。


  ◇◇◇◇◇◇


 浜では泳ぎに飽きた、閃光王女たちがビーチバレーに興じていた。

 閃光乙女たちの声が浜に響く。

「そっち、ビーチボールいったよ。鳴神、顔面で受けて」

「ブギッ」

 鳴神が顔で受け止めて頭上に上がったビーチボールを、ジャンプした蛟が容赦なく狐狸姫の陣地に打ち返す。

「くらえっ! 激流の波動アタック!」


 蛟姫が打った、水の波動をまとったビーチボールが砂浜に決まると。

 火車姫の体から、メラメラと闘争心の炎が湧き上がる。

「そっちが、その気ならこっちだって考えがある……くらえっ! 地獄の業火ブロック!」

 とんでもなく危険なビーチバレーをしている、閃光王女たちを海の家の物陰から見ている二つの人影があった。

「呑気なものね、敵がこんな近くにいるのに気づかないなんて」


 一人はハロウィンのカボチャの被り物をして、手に死神の大鎌を持った女だった。

 フリルのスカートを穿いていて。

 えりにフワフワの毛が生えたコートとヘソ出し服には、クリスマスの飾りつけがされていて夜になるとイルミネーションが点滅して、カボチャの被りの中にもオレンジ色のライトが灯る。

 服の胸にはリボンを付けたハート型の飾りがあって、ドキドキ動いている。

 ハロウィンとクリスマスとバレンタインが融合した派手な敵幹部『ハロクリ・バレンタイン』


 もう一人は、顔色が悪い痩せた男性で額に三角の頭布をしている。白い着物姿で足が幽霊尻尾のようにクルンとしていて、ナスに割り箸を刺したナスの馬型生物を連れて人魂のオプションまで付いている。

 背中には正月飾りの門松を背負い、ついでに七夕の短冊笹まで背負っている。盆と正月と七夕が融合した陰気な幹部『タナバタ・ボンショー』だった。


 ボンショーがボソボソとした声で、バレンタインに言った。

「帰ってもいい? 暑い昼間は苦手だから」

「はぁぁ? あんた何言ってんの何もしないで帰ったら、ボスの『ネガティブ・キング』さまに顔向けできないでしょう、閃光王女を倒すために来たんだから……ふぅ、それにしても暑い」

 バレンタインがカボチャの被り物を脱いで、汗だくの素顔をタオルで拭きながらペットボトルの水を飲んでいる様子を、盆と正月と七夕が一緒に来たような男はジッと眺める。

 水を飲みながら、溶けたチョコレートを口に放り込んだバレンタインが、眺めているボンショーに言った。

「何か問題でも? あたしが被り物を脱いで水を飲みながら、ベトベトに溶けたチョコレートで口の周りが汚れている姿に何か問題でも?」

「いや、別に何も」

 バレンタインが、カボチャの頭をかぶって言った。


「さっさと、閃光王女の小娘を片付けて、クーラーの涼しい風に当たりたい……ボンショーは海の方、あたしは山の方で邪魔スルナヤよりも強い『ニュー邪魔スルナヤ』を出現させて陽動作戦で……なんでも、ネ暗なネガティブ・キングさまの話しだと。この辺りの山と海に新たな閃光王女が潜んでいるみたいだから、復活する前に今いる閃光王女たちを倒さないと……やっかいなコトに」

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