第8話 方法がないわけではない

「せーんぱい! 聞いてますか?」



「あ、すまんすまん」



なぜか今日、朝から朝比奈にカフェに来いって言われて断わろうとしたら鬼電されたのだった


「だから、今週の日曜日のお祭り行きましょうよ!」


「なんで祭り...」


日曜日って、桜の彼氏のフリしてって言われた日だし、重なってる

桜には夜に一緒にご飯食べに行ってくれと言われてるから、どっちもは無理だぞおい


「日曜日以外なら〜」


「ダメです 日曜日なんかあるんですか?」


これだから勘の良いガキは...



「バイト先の人にも電話しちゃいますよ? 

先輩が私に意地悪するって〜」


「ちょ、まじ勘弁」



クッソ断りずれぇ...


「あと、今日はもう一つ話したいことがあります」


「なに?」


朝比奈はもはや何言ってもこえーよ!

次はどんな要求を〜


「上野先輩についてです」





朝比奈は全てを話してくれた






俺は朝比奈から話を聞いたあと、急いで家に帰った

だが、上野はどこにもいなかった

そういえば、最近は家じゃなくて相談所のとこに行っている

もう力にはなれないし、上野がわざわざ家事なんてやる必要ないか



「ってか家2.3日で汚くなったな」



○○○

「ちょっと なんか用?」


相談所の階段の途中で呼び止められる


「う、上野今いる?」


「いや、さっき帰ったけど

なんかあった?」


ちょうど入れ違いみたいだ

俺は回れ右をして家まで走り出した


「なんかあった? 汗やばいし、ちょっと休んでいきなよ」






俺は桜に言われた通り相談所に一度行った

おじさんにも聞きたいことがいくつか...


「で、何があったの?」


「えっとだな」


「その前に、一つだけ話しておきたいことがあるんじゃ すまんが桜、席を外してくれないか?」


「は、はい」









「簡潔に話そう

上野かな は今週の日曜日の夜に天国に行くんじゃ」


「えっ?」


俺の脳はどんどん負荷がかかり、もはやショート寸前だ


「それは彼女が望んだことじゃ」


「ある人から聞いたんですけど、あいつって」


「生き霊じゃろ?

上野さんが自分から全部話してくれたんじゃ」


俺が朝比奈から聞いた話はこうだ

朝比奈が昨日親に会ったのはとある病院

そこのベッドで気持ちよさそうに寝ている上野がいたという

特に体のどこかに異常は見られないが、目を覚まさないそうだ

そこから俺は察した 


上野は生き霊であると



「彼女は橋で自分の身を投げ出した

そこで幽体離脱が起こったんじゃ

とても稀なケースじゃぞ」


「なんとか天国に行かせるのを止められないですか」


「それは無理じゃ

来週の日曜日が1年で一番現世と天国が近くなる日なんじゃ

彼女が天国に行きたいと思えばを霊体を失うじゃろうな」


「それであんたは良いのかよ」


俺は気が荒ぶってじいさんの肩を掴んでしまう

正気に戻った俺は椅子に座り直して、「ご、ごめんなさい」と呟いた


「そう言われてもな、霊体の彼女がどこかに消えても、病院にいる彼女が死ぬわけじゃないぞ」


「どういう...」


「おそらくあの子には新たな魂が宿る

すなわち記憶喪失ってやつじゃ

霊体の彼女が消えれば実体の記憶が蘇ることはないじゃろうが」


上野が消えることを望んでんのか

なら...

俺が何かして良い問題ではないのか





「まあ、方法が無いわけではない」


「それってなんですか」


「それは〜」







俺はそれを聞いてすぐに外に出る

その日は晴れのち雨で俺が外を走っている時はどしゃ降りだった

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