第28話 クロウ、まじおこ



「そもそも何故お前達に、ルビーを責め立てる権利があるのだ…!」



ごもっともなお言葉マジありがとじゃん。


リック以外の取り巻き男子の目を見て訴えるクロウ。

そのクロウの様子を見る限り、もうリックは言う必要はないという第一王子の判断だろう。


しかし弟は馬鹿だった…。

イケメンの顔が醜く歪んで、「それは…! こやつが美香を…!虐めたからです…!」と、言い放つ。


馬鹿な弟持つと大変じゃーん。

私の弟、頭良ーかんなー。頭良くて助かったわ弟よー。

クロウ見てると可哀想だもーん。



そのクロウの気持ちを反映してか、フロアの中から覗く空は、ぐるぐると黒い雲が渦巻いている。


え?

クロウ…、の魔法…じゃないよね…?

流石に規模大き過ぎて、え…?



「ルビーは虐めたつもりは無いと、それに、謝ったではないか…!」

「なら美香の気持ちは、考えなくともよいと言うのですか…!!」



『あぁ苛つく…!』とでも言いたげに、前髪を荒々しくかき上げるクロウ。


うわ。

イケメン罪だわ…。

ドキッとした自分、間違えてないよね…?

え?

ちゃんと周りの女子もドキッとしてるよね…?


よし。

してるし。



「お前は、何故ルビーが注意したかも分かっていない。 その美香と言う者より、ルビーの、婚約者の気持ちを考えるのが先ではないのか…!?」



『その通りだー!』


と、私達は揃って掲げる拳のみで応援。



「分かっていないのは御兄様だ…!! 御兄様こそ騙されているのです…!! その悪女に・・・!!」

「あぁ…、もう、分からないのか。 ルビーが言っていることが。」

「御兄様までこやつの味方をするのですか…!?」

「はぁ…。 頭が痛いよ…、全く…。」



クロウは呆れたように首を横に振って、大きく溜め息をつく。

覚悟を決めたように、弟を見つめた。

『言わなければならない馬鹿なんだ』と、覚悟を決めて。



「ルビーは、お前を想って注意したのだ。 婚約者が居ながら他の女性と腕を組んで歩き、いつも一緒にいる。」

「それは…! 美香が異世界の者だからでしょう…!?」

「誰だろうと一緒だ…!! 婚約者を蔑ろにし、その言葉も受け入れず、周りの貴族達の目も気付かない・・・。 不貞行為なのは誰が見ても明らかだ…! 婚約者が居ながら、別の女性と関係を持つなど!! それは美香さんに対しても誠実とは言えないのでないのか・・・!? お前は・・・! 今のお前は・・・!! 誰に対しても誠実ではない・・・!!!」



あまりのクロウの勢いに、弟であるジェードも少しばかり威勢を落とす。

外では雨と風が吹き荒れている。



「何故…! お前は、ルビーと婚約を破棄したのだ…!」



諭すように、クロウはそう聞く。


『自分が間違っていました。 もう一度、チャンスを下さい』


と、その言葉を期待して・・・。


だが、ジェードは頭の隅まで終わっていた。



「そ、れは、美香の方が、女性の役割を、しっかりと…、」

「何…!?」



強く吹き荒れる風が、窓ガラスを叩く。

クロウの青い瞳が、刺すように弟を貫く。



「男に媚び、機嫌を取り、着飾るのが女の役割だと言うのか・・・!!? お前は何様なんだ・・・!!! それが未来の王などと語るな・・・!!」

「なッ、で、ですが、私は、しっかりと勉学も…!」

「まだ分からないのか…!? ルビーが言った意味を・・・!! どれだけ才能があろうが…! 地位があろうが…! 努力を怠るなと言っているのだ・・・!! お前達は努力を怠っている…!! それが目に見えて、その能力に出ているだろう・・・!! 女性にうつつを抜かし…!よく考えもせず行動し…! 誠実でもない男が…! それでもお前は…! 国民の手本と言えるのか・・・!!」



ピシャアアァアアン────!!


と、外では雷がなる。


何処かで落ちたのか、物凄い音を轟かせて。



「ぐッ・・・・・・、」



そこまで、噛み砕いて、ようやく分かったらしい。

努力とは何かを。

ルビーが怒っている事は何かを。



取り巻き男子達は、ただ、黙っていた──。



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