第18話 めんどい案件
「あっ、あのっ・・・!!美優様っ・・・!是非今度私と一緒にパーティーに…!」
「あ、わ、私もっ…!」
「メイク・・・!」
「ドレスはどこの・・・!」
「先日の夜会で・・・!」
「お茶会でも・・・!」
「わかったわかったぁ~~・・・、あたしのことは呼び捨てで良いし、皆、今度一緒に遊ぼーね~~・・・」
どーした!?
夜会が終わって2日後の週明け、学園内を歩いているだけでこの調子。
みんな歓迎してくれるのは良いんだけどぉ~~…。
教室に着く頃にはもうヘトヘト。
ガラっ──、
「はよーーーっす」
「おはよう」
そこにはいつも通り、誰よりも早く教室に来ているクロウの姿。
私は、この騒ぎだけどいつもよりほんの少し遅れて教室に着いた。
途中からなんか怖くなって、超早歩きしたし・・・!
「・・・・聞いて良いか…?」
「ん?」
「お前の身に一体何が起こった…。何だこの騒ぎは…。どこも美優の話で持ちきりなんだが・・・」
ずうぅううん。って効果音が似合いそうなクロウ。
何時からそうしていたのか、組んだ手はおでこに引っ付けて下を向いてる。
「あーーーー、ねー。 何だろうね」
「はっ?」
「なんかー。今日来たらこんな感じだったー、みたいなー。」
「い、いやいや・・・」
ガラ──、
「お早う御座います、お二人共お早いですわね。」
「はよ~。 まー、今日も朝からミカミカ祭りだったからねぇ~。てかルビーも十分早いし!」
「淑女ですからっ!」
「じゃあたしも淑女じゃね?」
「美優はその他が全然ですわ。」
「おいっ!」
最初の頃からは想像できないけど、ルビーと冗談も言えるようにまでなった。
やっぱ公爵令嬢と言えど、普通の女子だし?
「それよりもっ!ですわっ!」
「ほ?」
うっきうきした顔で身を乗り出すルビー。
私は最近そんなルビーに見慣れたけど、クロウは少しビックリしたみたいで目を見開いてる。
「もー先日の夜会から美優の話題で持ちきりですのよ!」
「あー…、まー…、ね? そーみたい・・・ね?何でか知らないけど~…」
全くもって思い当たる節がない・・・。
や~~・・・あるとすれば・・・・一人でティーパーティー・・・ぐらい・・・。
「も~、惚けたって無駄ですっ!」
「や、夜会…、だと・・・? み、美優は夜会に行ったのか…?」
ピシャアァアン・・・!とクロウの雷雲。
もー、この世界はすぐ自分の属性魔法使うじゃーん。
そんな感情表すのにいちいち魔法使わなくたっていんですけどー。
何だろ・・・漏れちゃうのかな・・・。
勝手に漏れちゃうのかな・・・。
尿漏れパッド的な魔法漏れパッドとか付けらんないのかな・・・。
感情駄々漏れとか超ハズくない…?
それか使う場所無さすぎて定期的に出してんの…?
「え、エスコートはどうした・・・、ダンスは誰と・・・」
より、ずうぅううん…。となるクロウ。
忙しい奴だな。暗雲立ち込め過ぎじゃね?
つーか何に対しての感情だし。
「エスコート…?ダンスって、何? え?クラブか何かなの?そんな腹に響くような音楽じゃなかったんだけど・・・どっちかっつーと・・・クラシカルーな感じだったよーな・・・てゆーか踊ってないし」
「え・・・?」
「・・・は?」
何言ってんの?とお互いに顔を見合って首を傾げる。
そんな私達を見てルビーは、「くっ…!」と笑いを堪えている。
「で、殿下…!違いますわっ…! 殿下が想像しているような正式な夜会ではなくホームパーティーのような砕けたパーティーですっ…! ふ、ふふっ…!」
「な、何だ…そうなのか…?」
「えぇ、元々マリンしか誘われていなかったのですけど…、折角ね、美優が来たことですし、私達も一緒にとお願い致しましたの。」
「そう、か・・・」
なんとも気の抜けた返事のデンカ!
『デンカ』って面白いな。
私も今度デンカって呼んでみよう。
「え?てゆーか正式なやつって何か違うの?」
「えぇ、社交界での正式な夜会は上流階級がその名の通り、社交の場として開かれるパーティーです。 基本的には男性にエスコートしてもらい、ダンスを披露します。 知識や品が求められ、領地のことや、貿易、政治…今だと誰を王にするか・・・なども勿論話されますが…、まぁ昨今は戦争もなく私達世代は平和な時代しか知らないので認識としては婚約者を探したり、新たなビジネスのヒントを得たり、その逆で蹴落としたり、愛憎劇なんかも・・・その様な認識で構わないかと・・・」
「ふーん、何かよく分かんないけど~」
「そんな事はどうだって良いんです!」とまた乗り出すルビー。
「今学園のみならず、社交界で美優の話で持ちきりなんですっ!」
「えー? そんなに1人ティーパーティーが印象的だった~?」
「何を仰いますかッ!」とボフンと炎を繰り出す。
「誰にも真似出来ないファッション、そして女性を美しくして歯に着せぬ物言いと、万年スレ違いの二人をくっ付けた『漆黒のキューピッド』だと…!もうそれはそれは・・・、しかも『悪を正し美を制す』なんて前置きまでしっかりと付けられてますわよ」
「う、うっわ~~~~・・・。 何それめっちゃ恥ずいじゃん。」
「はぁ・・・それにしても・・・、美優が思ったより豊満で何だか私、ちょっとショックですわ・・・。」
腕組みから自分の頬に上品に手を添えるルビー。
そんなルビーの胸はちっぱ・・・いやいや・・・すっきりとされていらっしゃる…!
えーっと、背ぇ高いし?プロモデルみたいで良くね…?とか有る奴に言われても的なやつ…!
まぁ~~、こう見えて私Dカップあるし…?
隠れ、巨乳とまではいかないけど、おっぱいはしてる感じ
「ほ、豊ま・・・!?」
と会話を聞いていたクロウはまた魔法で感情表しがち。
「おいおい~、想像してんじゃねーぞデンカ~~」
「なッ! だ、誰がッ・・・! 女性に対しその様に失礼な事は決して・・・」
「あっははっ・・・!コーコーセーなんだからそれぐらい普通っしょ…!つうかルビーもデンカの前でなかなか攻めたこと言うじゃん!」
「あッ・・・!私ったら…!申し訳ありません、失礼致しました・・・!」
ルビーは顔から火が出るほど、いや、出てんだけどね、真っ赤に染めながら「ふぅ」と一息。
「はぁ、全く…、美優と一緒に過ごしているとついつい口が本音で喋ってしまいますわ…。」
「こらぁ~、人のせいにすんじゃなぁ~~い」
「ふふっ!ま、それだけ素で居られると言うことですわ!」
「あ、そーゆー言い方しちゃう?」
そんないつも通りの学園生活───。
の、ハズだった。
学園のみならず、社交界でも私の噂で持ちきり・・・。
そんなのであの女が黙ってるハズがなかった!
「おい、君。」
「は? あぁ、」
帰り道、呼び止められ振り向くとキラキラ金髪イケメン。
コイツ、ルビーの(一応!)婚約者の・・・
「ジェード?だっけ?」
「そうだ。」
後ろをみるとミカちゃんの取り巻き男子。
「敬称は付けた方が良いんじゃないか?」
と氷の魔王様ことクラウス・リー。
クラウス先輩はいかにも氷の魔王~って感じの態度。
ちょー感じ悪いんですけどー。
「・・・・・デンカって呼べば良いワケ?」
「それでいい、」
ちょっとムッとしながら最近気に入ったワードを使ってみちゃう。
「何かさー、人種が違うよねー。スッゴク庶民ってオーラしてる」
そっぽ向きながら黒いこと言ってるこの男。
可愛い顔して腹ん中、真っ黒クロ助野郎だ。
なんだっけ・・・なまえ・・・、
「あ、リュックだ!」
「リックです…!」
「あれ。」
「ったく、一度で覚えられないなんて、ぐちぐち、ねちねち・・・」
リックは丁度聞こえるぐらいのトーンで何か言ってる。
けどキョーミ無いしどーでもいーよねーー。
「君、団長の気を引くためにわざと転けたんだってね。そう言う行為は、誠実とは言えないな。 ま、今更それを責めるつもりもないけど」
「・・・は?」
次から次にっ!うっさいなぁ~もーー。
副団長だっけ?
え?何でそんな話になってんの??つーか逆でしょ。
ミカちゃんがわざとぶつかってたんじゃん?
そう言う風にあの女が言ったワケ?
あのクソビッチまじくそ~。
てかこの男も何なワケ??
超正義感ですみたいな感じで来るけど。
振りかざす相手違うんですけどー。
「は~~~」
めんどっ。
「何だそのため息は。」とジェードデンカ。
「何だも何も、メンドって思っただけなんですけど?」
「面倒って事ですか?正しい言葉も使えないなんてさっすが庶民ー。」
「美香とは大違いだな。」
「あぁ、向こうの世界では大きな商会の娘だっけ?」
「きっとお父様方が心配しておられるだろうに・・・」
「なのに何か天音さんってさ、能天気ですよね。美香さんは毎日辛い日々を送っているって言うのに」
ふーん。
ミカちゃんって金持ちんとこの娘なんだ。
そりゃ私は庶民ですけど?
つーかミカちゃん全然辛そうじゃないんですけどー?
「この世界で右も左も分からない美香に私達は優しく教え、接していると言うのに…。君はルビーと共謀して美香を貶め辱しめようとしているのだろう? 全て知っているのだぞ?」
「・・・・・超、は??」
このゴミみたいな男は何言ってんの???
脳ミソ腐ってんの??
つーか自分のこと棚上げ過ぎてんですけど!?
「確かに私はルビーと婚約している。 だがそれが何だ。 異世界から来て何も知らない美香にする態度か?」
「学園に美香の良からぬ噂を流しているのもお前達だろう?」
「それにさ、第1王子のクロウ様まで引き込んでるんですよね?」
「うちの団長にまで手ぇ出しやがって…。」
ほんっとタチ悪ぃー。
超めんどい。
まじで。
キレそー。
「婚約しているそれが何だって何?女の子の心に傷を付けてる事さえ気付かない王子とか他に何が出来んの?」
「なッ・・・!?」
「この国の第2王子であらせられるお方にその口の聞き方は何だ…!!」
「は?あたし一応コスプ・・・いやいや、神官様に喚ばれた身ですけど?」
「いやっ、しかし…!」
「喚ばれたって言っても美香さんの副産物でしょ!?」
「それマジで言ってんだったら超ウケる。」
「…はァ!?」
「貴様ッ…!いい加減にしろッ…!これ以上自分の悪事を認めず皆に無礼を働くなら殿下に許可を取りここで取り押さえても良いのだぞ…!!?」
グイっと私の胸ぐらを掴む副団長。
「ふーーん。女性の胸ぐら勝手に掴んじゃうんだ?まだ許可も取ってないのに?」
「ぐッ・・・!」
「女性に手ぇあげるとか。あたしの世界の庶民のクズ男と変わんないねー」
ギリギリと歯を食い縛ってる副団長。
なんでこの男が騎士団入ってんのか謎だわ。
やっぱミカちゃんに狂わされたとか??
「もう良い…!天音さんの言う通りだ。こんな場所で女性に手を上げるのは良くない。」
ジェードデンカに言われ、副団長は乱暴に私を放す。
つーか
こんな場所でって。
他の場所だったら良いのかよ。
頭悪すぎなんですけど。
頭のネジ全部タピオカかよ。
いやそれめっちゃ美味しそう。
乱された制服を直しながら「つーかマジで何の用なワケ?帰っていい?」とジェードに聞くと、「待て」と一言。
「美香さんから聞きましたよ?」
「ったく、胸クソ悪ぃ・・・」
「先日の夜会で着ていたドレス、」
「そうだ。その件についてだ。」
「はぁ?」
ドレスって、アキナに作ってもらったあのドレスしか無いよね…?
「それが何?」
「私ばかり貰っているからきっと嫉妬してルビーさん達の伝を使って強制的に作らせたんだ。・・・と、」
「はっ?」
シット???
は??
つーか強制的に作られたの間違いじゃね??
「命令されて作ったなんてその人もドレスも可哀想だと、美香は優しいからな、そう申していたよ・・・」
「私だけのドレスなんて、そんな素敵なもの私だって欲しいけれど、けど誰も傷付けたくないからそんな事言えないってな・・・。あの娘は慈悲深い娘だ。それに比べ・・・、」
「は?何?」
「と言うか何処にも売ってないドレスを天音さんが着るだなんて烏滸がましいと思わないんですか?」
「はぁ??」
「美香に作った方が絶対美しいドレスが出来るに決まっている」
「はぁ・・・」
まじでさっきから「は行」多過ぎて疲れたんですけど。
てゆーかミカちゃんでアキナのインスピレーション湧けば良いですけどー?
「で? どこのどいつに作らせたんだ?」
「・・・・」
えっ?
結局それミカちゃんに貢ぎたいだけじゃね??
つーかそれだけ聞くのにあんなメンドい前置き要る!??
ま、アキナの売り込みのために着てるんだし?
別に名前が知られる分には全然良いけど。
「平民棟のアキナ・ココだけど?」
「ふん、意外と素直に教えるんだ。」
「平民と言う断れない立場に・・・、なんと醜いこと…。」
「まぁ、これでどちらが相応しいか分かる筈だ」
「もう良いでしょ?あんたらに付き合ってるほど暇じゃないんですけど。新しいカラバリ増やしたいし?」
じゃ。と言ってさっさと退場。
あー、ウザかったー。
アキナに連絡しとかなきゃ~。
たぶん作れって言われちゃう・・・。
言うて相手王子だし?
アキナは平民だし??
強制的に作らせんの、ミカちゃんならやりそ~。
皆にも、相談しとこうかなー。
あーあ。
超めんどっ・・・!!
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