第16話 何か思ってたのと違うんですけど感ぱない。



「まぁっ!ルビー様っ!本当に来てくださって・・・、と言うか何ですの!?その!?目のキラキラした粉! う、美しすぎます・・・!!」

「ありがとう! 私も無理にお願いしてごめんなさい…!でも連れてきたい友人がいたのよ…、って、あら…?」





ぐ、とうとう来てしまった・・・。

夜会とかゆー、謎のパーティー・・・!



今回は分かりやすくアピールする為それぞれ名前通りのカラーのドレスと、メイクを施してマリンのお友達のパーティーに馬車に揺られやって来た。

つーか馬車って乗り心地悪ぅ~。めっちゃガタガタするしお尻いった…!やっぱ車とか電車ってすごー。



あーもう慣れないから苦しいしドレスって…。

つーかさ、自分で言うのもハズいけどさ、いや、何かさ、エロくね…?大丈夫!?私が着て…!?




───「いやぁ~~~ん!やっぱりあたしが選んだモデルだけあるわ!すっごく似合ってる! 貴女の"脚"、存分にアピールしてきてね!」


夢中になりすぎてオネェ感でてるな~と着せられながら思っていた。まぁその後すぐハッとして誤魔化してたけど…。

いや別に隠す必要ないんじゃあ・・・。


ま、それはともかく。

あの時は試着だったし、皆がどんなドレスなのかも異世界者の私には分かんないから何とも思わなかったけど…。

(ルビーとマリンのドレスもスレンダーなデザインだったし?)

いざ乗り込んできたらよ…!!

ロマンチック・クリノリン・バッスル・・・。スタイルで言うとそこら辺のドレスばっかり…。

わりと皆可愛いドレスじゃね!?しかもそんなドレスって事はめちゃめちゃ脚出さないヤツじゃね!?


その人のキャラクターに合った装飾やドレススタイルなんか見ると、私が向こうの世界で習ったような時代ごとの流行りとはやっぱり違う感じ。



そんな私が着てるドレスはと言うと・・・。

生地はブラック一色。

ホルターネックでデコルテはシースルーになっていて、谷間が生地越しに見える。

フロントは股下までスッキリしたデザインでパッと見マーメイドドレスみたい。で、太股のわりと際どめのところからデコルテ部分と同じシースルーになってる。

だけど最初のドレスだからなのか太股のシースルーは3枚ぐらい生地を重ねてる。いや太股が見えてることには変わらないけどね。

背中はざっくりと開いててお尻から大胆なフリルでボーリューミーな感じー。

裾は5センチ程のリボンテープであまり可愛くふりふりしないよう重さを出してる。


なんつーかこんなブラックドレスでメイクもがっつりしたら夜の女満載かなーと思って、落ち着きのあるブラウンゴールドのシャドウにキャットラインの目元。

リップは赤!といきたいところだけど、この世界では真っ赤なリップは結婚した女性が使う色的なイメージがあるらしい。

この前は知らなかったけど、学園だったしルビー自身が目立つ人だったからギリセーフ…!名前もルビーだしね…。


ただ今回の夜会は、パーティーだし知らない人も来るかもだから、ルビーでさえ赤み強めのオレンジにしといた。

私も今回は遠慮しとく。結婚したババァだと思われても嫌だしね…。

だからリップはオレンジベージュでアイメイクと同じちょっと落ち着いたカラーにしといた。でもマットなリップは年齢的に大人しすぎるから落ち着いたカラーでもぷっりんぷりんだよ!




つーかちょー恥ずかしいんですけど…!

こんなドレスとか着ちゃってる自分が恥ずい!!

勘違いイイ女ぶってて気取ってるヤツとか思われたらどーしよーー!


いやいや、私の為に作ってくれたんだし…

ちゃんと堂々としなきゃドレスが可哀想だしっ…!



「美優? どこ行ったのかしら…」



やっべー、なんか呼んでる~~

え?小走りで寄ってけばいいの??

いや、それはさすがに品がねぇ!

そもそも何か挨拶に決まりでもある・・・「もう!美優ったら!」



「ふぁい!?」

「こんなとこで何やってるんですの!?ルビー様が探してますよ!」

「あ、そ、それはその…!」



意味もなく広いホールの隅の柱に隠れていたが、ついにマリンに見付かってしまった。



「ホラホラ、行きますよっ!」



ぐいぐいと押されマリンのお友達の前まで出された。

これまた美少女のパステルイエローのドレスがよく似合う、ピンクベージュのくりくりヘアー。

薄いブラウンの瞳も小動物のような愛らしさだ。


「もう!どこに行ってらしたのよ!」とルビー。

呆れた様子で腕を組んでいる。




「あら、此方が?」

「ごめんなさいシャロン!この子、パーティーは今日が初めてなのよ!」

「此方が私の紹介したい友人ですわ!」

「ご、ごきげんよう…!天音 美優です…!」



恥ずかしがりながらドレスの裾とか持ったりして貴族っぽい挨拶をしてみた。



「ふふふ、もう!慣れないことして、いつも通りで良いんです! いつもは王子殿下とも話しているでしょうに・・・あと!全ッ然なってないですからね!?その挨拶…!」

「だ!だって…!」



淑女の鑑だからなのか、私の下手すぎる挨拶を見てゴゴゴゴゴ・・・!とルビーから炎が出てくる。

あ、喩えじゃなくてマジだかんね?

魔法使ってマジで炎出してきてっかんね!?



「天音…美優さん・・・?ってあの異世界から来た…?」

「そ、そうだよ…?」

「まぁ!」



シャロンと呼ばれたその子は乙女らしく口に手を当て、顔をまじまじ見ると、今度は頭の先から爪先まで見る。


え、なに。こわい…!

似合ってない…!?



「学園でお見掛けするときとは雰囲気が違うから分からなかったわ! ドレスアップするととってもお綺麗なのね!」

「う、うえ…?? ま、まじ…?」

「えぇ!」



マリンとルビーの顔を見るもどうやら本当のようで…。

「えへへ、ありがとう…」と素直に照れてしまう。



「皆さん!私達も混ぜて下さいな!」

とシャロンの屋敷に着いたときから姿が見えなかったペリドットが、何処から引き連れてきたのか4、5人の令嬢を連れて私達のところへ来た。



「きゃあ!ルビー様!今日は一段と美しくて眩しいですわっ!」

「マリン様もペリドット様も一体どうして今日は一段と美しいのかしら!?」

「そうですわよぉ~!そのお化粧はどちらで…!?」



きゃあきゃあと騒ぐ乙女達は、憧れの宝石達3人にしか目がいっていないようで・・・

てゆーかこの女子女子した感じに気圧される・・・!

かなり乙女とゆーか、ある程度育ちが良いとこうなるんだな…。



私が一生なれないであろう"女子"に圧倒されているとき、ペリドットはそのメイクについて質問され「待ってました!」と言わんばかりの顔をしている。



「ふふん…、このメイクはですね・・・、今度うちで発売予定の新商品…!『アイシャドウ』ですわ!」



ばばーーん!!と見せつける様子は水戸黄門ばり。



「あい、しゃどう…?」

「とっても可愛いらしい見た目ですわね!」

「まだ発売はしてませんの!?」

「どうやって使うのですか!?」



わちゃわちゃと興味津々の令嬢達に説明するのは饒舌なペリドット。

適材適所ってやつー。



「まずこちらの"パレット"。 銀で作られ、魔法属性をイメージした宝石の原石を埋め込んでいます。銀と石はアクセサリーなどを作る際カットされた部分を使っておりますので経費削減しております。これは平民の方々にも女性を楽しんでほしいとの思いで極限までお安く提供できるように。」



ふむふむ。と聞いてはいるが平民が使うと聞いて少し微妙な顔をしてるご令嬢方…。

しかしこれも作戦ですわ!とウキウキしてたのを思い出す…。



「そして・・・!貴族の方限定のプレミアムライン!!」



それがコチラ!!とばばーーん!!とまた見せ付ければ、

「きゃあ!」「まぁ!」「プレミアム、ライン…!?」なんて・・・これどっかで見たことあんな・・・。



「こちらのプレミアムラインは私が我儘を言って特別に!作っていただいた物です!!全ては、貴族のお嬢様方の生活に似合う逸品として持っていただくため!!」

「「「きゃーー!!」」」

「丁寧に精製された銀は、不純物が少ない特定のダンジョンの奥でしか取れない希少なもの!」

「「「おぉおーー!」」」

「更に更に将来を期待されたデザイナーがこのパレットの為にデザインした紋様、それを自ら丁寧に作り上げる様はデザイナーの卵と言う域を越えて職人レベル!」

「「「すごーーーい!!」」」



レオの事めちゃめちゃ良い風に言ってんじゃん!間違ってないけど!!



「そして、こちらのパレットに埋め込まれている宝石・・・、分かりますか?美しくカットされ、輝きを放つ宝石…。なんとSランクの宝石を贅沢にあしらっているのです!」

「Sランク!?」「って、高級品じゃ…」「自国で採取しようと思うと辺境のダンジョンでしかもモンスターが居るから隣国の冒険者を雇わないと面倒なダンジョンですわよね!?」

「うふふ!それは勿論、うち独自のルートですわ!」

「「「流石シャトルーズ家ですわ!!!」」」



ものすごい掛け合いだ…。

私が入る隙 全然なっ!


つーか何か見覚えありすぎると思ったらコレさ・・・、

『今から約10分間!オペレーターを増やしてお持ちしております!』ってよくやってるTVショッピングじゃね?

しかも海外製のリアクション大きめのやつ!



「そしてこのアイシャドウ!!なんとコチラ・・・天音美優様が自身の魔法で造り出したものなのです!!」

「「「えぇえええーーーー!!」」」



と今まで見向きもしなかったご令嬢方の視線が一気に私に集まる。



「魔法って、魔法ですの!?」「属性は!?」「と言うか天音様…って異世界者の!?」「雰囲気が違いますし、ドレスも相まって てっきり他国の方かと…」「よく見ると天音様のお化粧も美しいですね…!」「大胆なドレス!お似合いですっ…!」「と言うか魔法ですの・・・!!?」

「お、ぉお・・・すごい…急に来られる」



ぐいぐい迫られ色んな質問が飛び交いすぎて私にはもう分からない。



「もう!皆さん!説明は私の担当ですのよ!」

「「「あら、そうでしたわ!」」」



って、担当が皆分かってんの?逆にすごくない?



「美優の世界ではそれはそれはメイクのバリエーションが豊かだそうで…、こちらの世界に喚び出され…お化粧の少なさに衝撃を受けた美優はまず私達にお化粧する楽しさを教えて下さいました。」



なんか語りが始まったんだけど・・・。



「そう言えば…!いつでしたかルビー様が美しいメイクをしてらっしゃいましたね…!」

「そうだわ!確か、あの時も天音様がお化粧を施したと一時話題になりましたわよね!」

「その通りですわ。 しかし、あの後・・・あまりにも少な過ぎるメイクカラーに絶望し、そしてその願いがカタチとなって、美優はこの魔法が使えるようになったのです。それは美優が心から皆さんを可愛くしたいと言う、乙女の味方だから得たもの…!」

「「「まぁ! なんて・・・素晴らしい人なのかしら・・・」」」



いや盛りすぎーー・・・!

何なの!?私聖女なの!?確かに生娘ですけど!?選ばれしものですけど!?



「その素晴らしい気持ちを皆様にお届けする為!シャトルーズ家の私がお力添えを致した次第でございますの!」

「「「まぁ・・・!流石ペリドット様ですわ・・・!!」」」

「ささ!見ても分かりませんわ!御自身で美優のメイクの素晴らしさを体験して下さいな!」

「え"…!?」

「「「きゃあ!良いんですの!?」」」



聞いてなっ…!

実演販売的な!?

良いけどさ!喜んでくれるなら!そーゆー役目だし!?



「ブラウンはどんな人でも似合う色と伺い、本日は色味の違うブラウンを数種類持って来ました。」



「へ~」と感心してるけど・・・、だから数日前皆に似合う色ってどんな色か聞いてきたのか~…!

私に「肌色や瞳によってブラウンも使い分けるとより似合うよ」って聞き出して、ブラウン中心に作らされたんだ…!

ぐーーー…!まんまと手の平で踊り狂わせやがってー!楽しいけどっ!



「驚きますよ?美優のお化粧は本当に身も心もキラキラさせてくれますの!」

「や、やめてよ!照れるし…!」



横でペリドットの説明を聞いていたマリン。

ずいずいっと体を乗り出し物理的にも心理的にもキラキラの瞳で訴える。



「まぁ、本当の事ですわ! だって私だってこんな素敵な目元にして下さいました!自分でやったら踊り子になってしまいますもの」

「そうよ美優、私だってメイクされたら自信に満ち溢れるわ!」



ふん!と腕組みするルビーだけど、そもそも自信に溢れる人なのに満ちたら大変だわ。

つーか美しいのに本気出したらミカちゃんなんか屁のカッパじゃね?


いや、無理かな・・・種類が違う…。

ミカちゃんは確かに顔は可愛いんだけど最大の特徴はうるうる瞳と守ってあげたい感!ルビーとは真逆…。

たぶんルビーが自信に満ち溢れる程ジェードは離れていくんだろうなぁ。

阿呆な男だなぁ・・・。

今のご時世、女も強くなきゃやってけねーつぅーーのぉーー!



「美優!まずはシャロンから!お願い致しますわ!」



ハッと見るとフロアの一画がサロンに早変わりしている。

人ん家なのに準備良すぎ~。



少し呆れながらも可愛い魔法をかけていく私だった。



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