第14話 おねぇ・・・



「ん~~~・・・!お腹いっぱーーい!」



「食った食った~」とお腹をポンポンすると「もう!女性がその様なことをするもんじゃありませんよ!」と3人から叱られる。

流石、名門貴族のご令嬢!淑女だねぇ~!


だいぶ、貴族とかゆー存在には慣れた。けどやっぱ自分の素は隠せねーっつうか、私は私って感じでまぁ生きてる。


たまにため息つくのは、SNSであがってくる向こうの友達の情報。

美味しそうなデザート、美しい料理、そんなものはこっちでも十分楽しめる。十分とゆーか貴族様方に出すお料理ですから?質は良すぎる!

でも…!SNSで…!恋い焦がれるのは…!!ジャンキーなご飯!!

ポテトチップス、バーガーにポテト、コーラにカップ麺…!!

あと、おばーちゃんの豚汁…!!

くそうくそう、みんなとカラオケ行って馬鹿みたいに騒ぎたい…!!


ま、その分、映えをクッソ羨ましがられてっからいーけどっ!?

いきたーい!って言われても来れねーから!

私、選ばれし者つーか…!!

あ、まぁ、ミカちゃんも居るけどさぁ~。




「さて、では、参りましょうか」

「「えぇ!」」

「おっしゃ!」



そう、今日は待ちに待った平民棟へ行く日だ。

きゃっきゃと名門貴族の美女3人がこんな映画かよって感じの学園歩いていると本当に様になる。

つーか、並んでて化粧で盛ってる私が恥ずかしーわ!




ひそひそ・・・


「わぁ、見てよ…!」

「うっそ…!」


「学園の宝石だ」

「初めて見たけどすんげー美人だな。スタイルもいんだろーな~」

「おい聞こえっぞ…!」




いや、聞こえてんぞー。




「ごきげんよう皆さん。」


「えっ、あっ…!ごっ、ごきげんようあそばせッ…!」

「ご機嫌麗しゅうっ…!」

「あ、あ、あ、」



ルビーがひそひそと話していた男子学生に挨拶をすると、物凄く焦った感じで挨拶を返す。…が何か違うよーな…。

しかもなんか1人カオ◯シみてーなの居るし。


少々可愛らしい反応にクスクスと笑うウチら。



「人を探しているの。"レオ・ハモンド"と言う名前に聞き覚えはないかしら?」


「えっ、あ、レオなら、さっきまだ教室に…」

「2-Lに居るっす!」

「あ、あ、あ、」


「2-Lね、ありがとう」



ひらり、と手を振り教えられた教室へ向かう。



「オ、オーラが違うな」

「うおーやべー!クソ美人じゃね!?自慢しよ!」

「あ、き、きんちょうしちゃって・・・」



「ふふっ、何だか新鮮で面白いわね…!」

「そうね、可愛いわね」

「貴族棟とはやっぱ全然違うなー」




貴族って責任もあるし、なんか疲れそうだしー、ゆーて私の世界じゃ高校生じゃん?

まだまだ遊びたいお年頃なのになー。


まぁ、異世界だし、どっちが正しいとかそんな押し付けキモいし。

郷に従えー的なー?



そんな事をボーッと考えながら、すっとすれ違った別の男子学生。



「ねぇ、そこの君!」



ん?と皆で振り替えるとどうやら私を見ているらしい…。



「えっ…?あたし…?」



癖っ毛というか、スパイラルパーマ?な茶髪で、目は少しキリッとして顔は整っているが、何だかふんわりした雰囲気の男子。




何だろうか。私どっかで会ったっけ?

それとも私の事だから何かしちゃった?



「そう、君!」



ずんずんと近付いてくるので、少し身を構える



「は…?な、なに…?」



ガシッと両手を包み込まれグッと瞳を見つめてソイツは・・・



「まさにインスピレーション・・・!!!」



「え、は…?は…?」



え、ナニコイツ。と3人に助けを求めると無言で首を振る。



えーー・・・!??

タスケテヨー・・・!



「僕のイメージ通り・・・!!!」

「え、ちょ、まじ、こわっ!」

「君だよ!探していたんだ!君みたいな子を・・・!!!」

「は?は?いやっ、ちょ、まって…なになに!?こわいこわい!急にこわいから!マジ何なの!?」



何とか掴まれた手を振りほどいて少し距離をとる。

3人を見ると更に距離を取っている。


え、ひどっ!

お嬢様めっ!保身に走ったか!



「あ、あぁ、ごめんなさい。あた、僕ったら…。」



ハッと我に返ったようで、その男子学生は「ふぅ」と一息ついた。



「で!?なに!?急に!!」

「僕、Sデザイナー学科の生徒なんだ。だけれど僕のデザインは、なんと言うか…この国には少々時代を行きすぎているようで…。」

「はぁ・・・」

「女性の脚は美しい。これからは胸だけじゃなく脚も出せばもっとデザインの域が広がると思うんだ」

「ほぉ?」

「だけどこの国では脚…太ももは恥部でしょう?」

「そう、らしいね?」



まぁ、私も一度恥かいたし?

たぶん履いてるタイツでもこの世界の女の子的にはアウトだと思うんだけどー。



「だから、デザインを出しても"この国では売れない"と…先生とも相容れず、作って見せれば納得するかと思ったけど、着てくれるモデルも居ない…。」

「ふむ…。」

「この年で卒業なんだ。卒業作品の出来で斡旋先が決まるんだけど…どうしても、メゾン・ド・パリシアで働きたいんだ…! その為には、ちゃんと自分のやりたいこと、表現したくて…」



眉間にシワを寄せ両手を胸の位置で ぐーにして「だから、ね?」とまるで女子のように小首を傾げる。



「僕の作ったドレス、着てくれない?モデルとして、君にお願いしたいの!」



「まぁ!素敵ですわ!」

「ねっ、美優なら適任だわ!」

「アバンギャルドなデザイン。そうね、きっと美優にしか出来ないわね」



いつの間にやら隣で聞いている3人。



いや!保身に走ったくせに!

やっべー奴キタ!と思って距離とったくせにー!

お洒落には敏感なんだからッ!



「なかなか無いですわよ? デザイナー学科、しかもS!と言えば、ドレスや下着、帽子など様々なデザイナーの卵ですが、卒業すれば皆一流ブランドへ斡旋されるほど才能ある学科ですわ!」

「しかも専属モデル!」

「丁度夜会のドレスを探していたじゃないの、やってみたら?」



ペリドットはいかにもビジネスを捕らえる目付きで、

マリンはウキウキしちゃって、

ルビーはいつものお決まり腕組みポーズでにっこり笑う。



え…?

これは、モデルに…なるやつ・・・?



「いや、まぁ…いいけど…」

「本当っ…!?いや~~~ん!!うれしい~~~!!!」



また両手を包み込まれるとブンブンと縦に振られめちゃくちゃ喜んでいるが、ん?待てよ?


いや~~~ん???


ピキッ、と私達の時間が止まった。



あ、あ~~~~!

オネェ、オネェの方ですか。

自分のこと"あたし"って言いかけたし、何か言葉遣いとか挙動とか女の子っぽいなぁ~とは思ってたけど…。



恐らく隠しているのか、またハッと我に返ると「ごほん…」と無かったことにしようとしている。



いや、バレバレじゃん…?



「そ、そう言えば自己紹介がまだだったね。 僕は見ての通り平民棟に通っているアキナ・ココ。」

「あたしは別の世界から来た天音 美優。」

「あぁ!貴女が?そうなの!だからインスピレーションが湧いたんだ!」

「そ、そうなの…?」



それぞれ自己紹介をして連絡を取れるように魔法契約を結び、

「夜会のドレスね!?任せて!今度採寸させてね!」とアキナは去っていった。




「いや、なんか本題とズレちゃって・・・え・・・?あたしら何しに来たんだっけ…??」

「もうっ!アイシャドウの入れ物でしょうっ!」

「あ、あぁ~~~!そうだった!」




と、少々予定より遅れて私達は2-Lに到着した。



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