第一回イトリ川短編小説賞によせて

秋砂鯉

第一回イトリ川短編小説賞によせて

はじめまして。魚は眺めるより食べる方が好き。秋砂鯉です。

2020年の暑い夏、第一回イトリ川短編小説賞に参加させていただきました。

闇の評議員の皆様、講評たいへんお疲れ様でした。主催のイトリトーコさん、素敵な企画をありがとうございました。


私はこの度、謎の夜更かしさんより 御調金梟賞 を賜りました。講評がリリースされ、冒頭で「御調金梟賞」の横に並ぶ拙作のタイトルを見つけたときは、ひととき時間が止まった感覚で、にわかには信じられない気持ちでした。

と言いますのも、私自身は全くと言っていいほど拙作に自信がなく、こういった賞に絡む可能性は微塵も考えておりませんでした。3名もの評議員の皆様に講評していただけるだけでありがたいという気持ちでおりましたので、あまりの事に一夜経った今でもまだ実感がなく、ただ嬉しい気持ちだけが少しずつ沸き起こり、仕事中でも食事中でもニヤニヤ笑いを抑えられません。

作者自身の話になりますが、私は、これまで2次創作界隈で2、3作書きpixivで公開した程度の者です。ですがこの度、通りすがりに見かけたイトリ川短編小説賞のレギュレーションを拝見した際、「たったひとつの望み」というテーマがあまりにも美しくて、自分の脳のどこかが"ぐわりと揺れ"たのです。こういった小説賞への挑戦は初めてでしたが、素敵なテーマと、下限3000文字という初心者に優しい文字制限、そして"KUSO小説"でも良いという懐の広さから、参加を決意致しました。


拙作「スターゲイザー」は、衛星兵器と陸上兵器の恋の物語です。私は、機械の永遠の命という題材をおかずに白米3合食べられる程度のSF好きで、そういった題材をよく空想しているのですが、不死ゆえに「永遠に蓄積されていく記憶を持て余すこともあるのだろうな」という発想から、「外付けの記録端末があればいいのでは」と思い至り、人工衛星と見つめあって「ピピピ……」と交信しているロボットの映像が脳裏を過ったのです。それが、「スターゲイザー」の元となりました。

衛星兵器である「わたし」自身は衛星軌道上を揺蕩うだけの静かな存在ですが、その内側では日々目まぐるしく情報処理がなされています。また彼らには、交信する術も、交流する術も、戦争に不必要な機能は一切ありません。無機物である彼らの生態(生態?)は私なりに拘った部分であったので、評議員の皆様にそこを読み取って頂いて、とても嬉しく思います。

ラストシーンのテーマ回収は、「たったひとつの望み」には沿っていないのではないかと、最も不安だった部分です。そこを認めてくださるどころか評価して頂き、また、タイトル「スターゲイザー」に込めた意味もしっかりと拾って頂き、そこまで読み込んで下さったことに本当に感謝しかありません。タイトルとラストシーンは、自分でも最も気に入っている部分です。


しかし、脳内には描きたい映像が巡るものの、それを作品として言語化するにあたって大変な力不足を痛感しました。自分でどうこねくり回してもちっとも洗練されない文章を前に頭を抱えました。もっと表現したいことが沢山あったのに表現しきれず、大変悔しい気持ちで、最後はもうどうもしきれないと、えいやっと投稿してしまった有り様です。そして、"KUSO"で良いはずの小説賞、周りのレベルが死ぬほど高い……どういうことだ……と、作品を引っ込めようとすら思いました。(結局そんな勇気もなく……)

ですので、今回評議員の皆様が大変優しく、私が表現したかったことを奥の奥まで読み込んで下さり、まさか賞まで頂けるなんて、、、感無量です。

今回の経験は、私にとって宝物となりました。心から、参加してよかったと思います。これからも機会があれば、こういった企画に参加させて頂きたいなと、調子に乗った気持ちでおります。もっともっと練習して、上達したいと思えたのは、この企画と、闇の評議員の皆様のおかげです。本当にありがとうございました。


重ねてのお礼になりますが、イトリトーコさん、素敵なテーマと企画をありがとうございました。この企画が無ければ、作品を書こうと思わなかったでしょう。藤原埼玉さん、「彼」のメッセージを、情感を読み取って下さってありがとうございました。大変嬉しかったです。

そして、御調さん、素敵な講評と素晴らしい賞をありがとうございました。この経験を大切に、今後も励んで参ります。



ありがとうございました。



◆PDF本は記念に製本して本棚に加えたいな~と楽しみにしております。製本作業大変かと存じます。まだしばらく暑い日が続きますので、くれぐれもご自愛ください。◆

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