クシャル

 城の領主クシャルは部下の双剣使いミッシと巨人ゴワンダと共に下層へ降りて様子を見ていた。


 魔人の斬られ具合からして、かなりの達人だろうと、推測ができた。


 また、撲殺されている魔人もいることから、おそらくアデラも侵入者に混じっていると考えていた。


 クシャルは、2メートル丁度の身長である。魔人にしては大きいほうではない。


 アデラが小さいときに武術を教えていたこともあり、アデラのことは良く分かっている。


 どうするか、そう考えていた時だった。




 天空を威圧する巨大なプレッシャーが城目がけて墜ちてくる。


 クシャルでも、もう避けきれない、そう覚悟していた。


 すると、巨人のゴワンダがクシャルとミッシを自分の体で庇う。


 直後に、メテオの隕石が数十万の破片に砕け散る。


 そこに居合わせた魔人は超高速の隕石の破片に貫かれて絶命していく。


 中層から降りてきた巨人型の魔人も、上層にいたさらに上位の魔人もことごとく息絶えた。


 クシャルとミッシは奇跡と言ってもいいほどの確率で無傷だった。ただ、2人を庇ったゴワンダは数百の破片が体に突き刺さり絶命していた。


城で生き残った者もクシャルとミッシだけのようであった。




 クシャルはゴワンダの体を抱きかかえ、涙を流した。



 そこに、ナギとアデラとカースが舞い降りた。


 ナギはさすがに魔力が枯渇しており、もう戦える状態ではないが、1人で放っておくわけにもいかず、城までは戻ってきた。ナギからすれば、メテオ改直後の状況を見ておきたかったのだろう。


 クシャルとミッシは静かに3人に近づいてきた。


 ナギ達はそれまで感じたことのないような圧倒的な力を感じた。


 双方、すっと構える。



 ミッシは双剣を持ち、カースの前に。



 クシャルは、アデラの前に。



 初めに動いたのはカースだった、皆殺しにされた人たちの恨み。目の前の亜人にぶつけるしかなかった。


 ミッシも、カースの動きに応じて双剣を構える。


 カースが踏み込み、水平に斬る。


 ミッシが左の剣で受け止め、右手の剣でカースの腕を狙う。


 ミッシの剣先が届く前に、カースが身を捻ってかわす。


 カースがそのまま距離を保とうとするが、ミッシが距離を詰めてくる。


 速い、そして的確な動きだ。


 ミッシの連撃にカースは受け止めるのが精いっぱいといった状態であった。




 クシャルとアデラは少し対面を懐かしく思っていた。



 「クシャル、すまんが、死んでくれ」


 そう言って、飛び込んで行った。

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