連戦

 都への行軍の途中、何度か魔人と遭遇した。


 町に攻めてきた魔人達とは明らかに強さが違ったし、こちらのパーティーの編成も把握しているらしい。


 町に攻めてきた魔人達は、ナギ達の戦力分析のための捨て石だったのかもしれない。


 そう思えるほど、魔人は強く、そして統率力も取れた攻撃を仕掛けてくるようになった。


 ナギ達はそもそも迂回しながら都を目指していたが、さらに大きく迂回せざるを得なくなっていた。


 それでも、50匹単位の魔人の群れと接近する。


 3人の戦力で、ギリギリ勝てるかという数だ。ただ、現状の3人に1人でも欠けてしまえば、もう攻め入る戦力もなくなる。


 戦わずに逃げるという行動を繰り返す。


 飛ぶ魔人はアデラの風魔法で叩き落せるから、対応しやすいが、馬の魔人タイプはなかなか逃げ切れない。


 それが相手にも分かってきたのか、馬の魔人が大量に迫ってくる。


 今回は馬の魔人が30匹に爪と牙の魔人20匹、馬の魔人に乗った亜人が30人、大型の飛ぶ魔人が1匹だ。おそらく、飛ぶ魔人が司令官なのだろう。


 相手もじりじりと間合いを詰めてくる。


 右にカース、左にアデラ、後方にナギといった布陣だ。


 カースと亜人の剣が激突する。


 カースには常に3匹の馬の魔人とそれに騎乗する3人の魔人が囲む。


 防戦一方になるが、それでも深手は受けない。カースの強さもまた尋常ではなかった。


 カースは亜人ではなく、馬の魔人を攻撃し始める。体が大きいがゆえに攻撃も外れない。


 カースの神業とも言えるような剣技で、一匹また一匹と馬の魔人は倒されていく。


 

 アデラの方は、馬の魔人が、少し遠巻きにアデラを取り囲む。数は10匹。


 アデラが近づこうとすると距離を取る。


 アデラは、少し魔力をつけて飛んで距離を詰める。


 馬の魔人の予想よりもかなり速い。魔人と亜人は対応できずに、0距離まで迫られ、アデラの拳と蹴りの連撃で1匹、また1匹と倒されていく。


 ナギは2人の動きを見定めながら範囲魔法を唱えるタイミングを計っている。敵もナギの魔法は十分に知っているらしく、一か所には固まらないような陣形を取っている。


 ナギは範囲魔法を諦め、魔力消費の少ない個別魔法で対応する。雷魔法と炎の魔法を交互に打ち込み、1匹、また1匹と倒していく。


 魔人は戦力の3分の1が倒された時点で、それ以上の戦闘を諦め撤退を開始する。


 ナギ達は深追いせずに、3人集まって撤退を見守る。


 ナギはほぼ無傷だが、カースとアデラはさすがに無傷というわけにはいかなかった。


 シロがアデラに、ナギがカースに回復魔法をかける。


 傷がみるみる塞がっていくが、カースはさすがに消耗しきって、馬車に戻って大の字になって睡眠を取る。


 シロの回復魔法にはスタミナ回復の効果もあるらしい、それと、そもそもアデラの体力は底が知れない。アデラは戦闘が終わったばかりだというのにケロッとしていた。




 戦闘終了後、3時間くらいすると、第2波がきた。


 司令官は先ほどと同じ大型の空飛ぶ魔人。部隊は馬の魔人50匹、それに亜人50人が乗り、他に爪と牙の魔人が30匹だ。


 完全に包囲網に捕まっている。


 カースとアデラは数的不利を感じさせずに圧倒するが、キリがない。


 アデラはカースの方をフォローするような動きも見せている。さすがにカースの消耗を気にしているようだ。


 ただ、カースは魔人を倒せば倒すほどその魔力を吸い取り、絶対的な力が上昇していく。


 敵の数が多くなれば多くなるほど、カースの成長速度も上がっていく。


 おそらく、カースは都への遠征に出る前とは比べ物にならないくらい強くなっている。


 いくら、疲れていても、魔人の姿を見ると、カースは憑りつかれたように斬りまくる。


 第2波も退けたナギたちは、休む間もなく馬車を走らせた。とにかく、一度包囲網から抜け出さなくてはならない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る