残された2人

 カースはラーナが出て行ったあと、少し荒れていた。


 アデラとの組手でも、無茶な攻めをして怪我をしたりしていた。


 周りから見ても、カースが落ち込んでいるのが分かる。


 食事もまともに取っていないらしかった。


 

 ある日、カースが兵士たちの鍛錬を終えて帰ってくると、部屋にシチューがあった。


 見た目にも、初めて作りましたと言わんばかりの不細工なシチューだが、アデラが初めて作った料理に違いない。


 カースは一口食べてみた、まずい。でも、暖かい。アデラはちょっと離れた位置から心配そうにカースの食事の様子を見る。


 シロはそんなアデラの様子を見て、やれやれといったような顔をしている。


 「アデラ様、ありがとうございます、美味しかったです」


 「礼は良い、そなたが、まともな食事もしないのでは稽古のつけようもないのでな」


 「はい、申し訳ありません」


 「ラーナのことを考えているのか?」


 「はい」


 「この町にいては危ない、それは分かっているであろう」


 「はい、そうです」


 「カースも私も戦士だ、いつ死んでもおかしくない、守るべき者を安全な場所へ逃がしてやることは悪いことではないだろう」


 「はい」


 「それに、私は、カースとずっと一緒にいるぞ、ずっとだ」


 「え、アデラ様?」


 「私は求婚されても、したことはないから、なんと言えばいいのか分からないが、結婚して欲しい」


 「え・・、あ、考えさせてください、ただ、ありがとうございます」


 「考えるのはいいが、一つ、敬語はもうやめてほしい、せめてアデラと呼んでくれ」


 「あ、うん、アデラ」


 その日から、カースも少し吹っ切れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る