砦の攻防

 ナギのメテオの射程範囲に入ってきた。だが、ナギはまだ進むように指示を出す。


 ぎりぎりまで近づく。もう目の前に砦があると錯覚するほど近い。


 人の目には入っているようだが、まさか砦を攻めるとは考えてもいないようだ。


 ナギが停止命令を出した。メテオを唱え始める。威力は絶大だが詠唱時間が長く、その間ナギは何もできない。


 メンバーに緊張が走る。この瞬間を狙われたらまずい、この段階では魔人達のほうが圧倒的に優勢な戦力を持っているはずだ。


 カースの頭にはふと、砦の中にいるであろう人のことがよぎる。ワンサウザントマスターのメテオが直撃すれば、まず生き残れる人はいないはずだ。


 ただ、ここで起きている惨劇を見てしまえば、放っておけるものでもない。


 そんなことを考えているうちに、ナギのメテオが完成した。



 赤く


 大きく


 そして空気との摩擦熱で尾を引いている。


 巨大な隕石メテオ


 どういう法則なのか、遥か遠くから砦に直撃するコースで飛んでくる。


 これがナギの魔法だとしたら、ナギ、ワンサウザントマスターは本当に人間なのだろうか。


 カースはちらりと、ナギの方を見るが、きらめく魔力の奔流に囲まれて顔は見えない。


 数舜の後、耳をつんざくような轟音が聞こえる。選抜メンバーは身を伏せる。


 メテオが砦を完全に破壊していた。


 この衝撃から生き残る魔人や亜人などがいるのだろうかと思ったが、当初想定していたように、砦の残骸から魔人と亜人がはい出てくる。


 どうやら、こちらが見つかったようだ。


 魔人が7匹、亜人が3人生き残ったようだ。アデラがビッグと読んでいた大型の魔人も姿を見せていた。


 戦闘になると魔人は計算された動きになる。


 空を飛べる魔人が2匹、かなり上空からこちらを監視している。


 ビッグは後方にいるようだ。


 牙と爪のするどい前衛型の魔人が4匹、武器を持った亜人が3人襲い掛かってくる。


 そこに、ナギの第2撃、炎が放射状に広がる魔法が放たれた。ナギがぎりぎりまで近づいたのはこの魔法の射程距離を計算したのかもしれない。


 さらに、魔人2匹と亜人2人が高熱の炎に包まれ絶命する。残りは魔人3匹と亜人1人。


 しかし、さすがのナギもここまでの魔法の使用でかなり衰弱している、3撃目はおそらく撃てないだろう。


 魔人たちも気づいているのか、ナギ目がけている。


 空を飛んでいる魔人の口から弾丸のような硬い物質がメンバーへ放たれる。


 まだ直撃を受けた者はいないが、厄介な位置にいる。


 空の魔人については、アデラが引き受けてくれた。自身も飛び追い払う。


 空の魔人はアデラの強さが分かっているのか、距離を取って攻撃し、近寄ろうとしない。アデラをメンバーから引き離そうとしているのかもしれない。


 アデラは、もどかしそうに、メンバーと空の魔人の間を行ったり来たりしている。

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