中央集落

 アデラの下に現れたのはたった1人の少年だった。


 「アデラ様とお見受けしますが」


 「そうだ」


 「私はカースと申します。中央集落の剣士です。アデラ様には是非我が町へお越し願いたく参りました」


 「町か」

 

 「こことは違って、風や雨をしのげる建物もあります、湯あみなどもできるでしょう」


 「ああ、それはありがたいな」


 「では、是非」


 「それにな、カースと言ったか、お主も気に入った、あの中に入ってくる度胸もいい、なによりイケメンだな」


 「では、よろしいのですか?」


 「ああ、大丈夫だ、カースとやら」


 「では、こちらへ」


 

 アデラが招かれて行くと、馬が準備されていた。そこに乗るように促され、カースの前に乗る。


 カースが手綱を持ち馬を走らせる。


 実はアデラは男性がこんなに近くに寄ったことはなくだいぶ緊張していた。


 顔を赤くして固くなっていると、カースが心配そうにアデラを見てくれた。


 そのカースの顔が、かっこよく見えて、さらに緊張する。


 そのまま3時間走って馬は中央集落へと着いた。



 集落に着くと、カースは、まずはガンツに紹介した。


 「アデラ様、こちらが町長のガンツです」


 「なんだか、苦労をしているような顔だな」


 「そう見えるか、魔王の姫よ」


 「魔王の娘と分かって受け入れると?」


 「そうじゃな」


 「不思議だな、何を考えている?私は父から逃げていても、父と戦おうとは思わないぞ」


 「それで充分です」


 「そうか、そして、そこにいるのが」


 「名指しとは光栄です、私はナギと申します」


 「ワンサウザントマスターか」


 「お耳に届いているとは光栄です」


 「都では知らぬものはいない」


 「それは、それは」おどけた表情の中にもアデラの心の底まで見据えるようなするどい眼光が光っている。


 「なにか監視されているとは思ったが、夜盗ではなく、この町の者であったか」


 「アデラ様を発見したのは、ここにいるカースです。この町にいる間アデラ様のお世話はカースにさせますので」


 「そうか、分かった」

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