消去法

吉川 「飯、何食う?」


藤村 「そうだなぁ。特にこれってのもないし」


吉川 「じゃ、消去法でいくか」


藤村 「まずサイゼリヤ」


吉川 「近くにあるね。別に俺はそれでもいい」


藤村 「のミラノ風ドリアはないな。半熟卵のミラノ風ドリアもない。チーズたっぷりミラノ風ドリアもないな。小エビのサラダもないし、小エビのサラダLサイズもないな」


吉川 「待ってくれ。その細かさで消去していくの? サイズ違いも? サイゼリヤだけで? すべてのお店にそれを適用させる気か。これは途方もない大事業になるぞ」


藤村 「消去法で決めるっていうから」


吉川 「消去の網の目が細かすぎるのよ。もっと大枠で。初手は大きく消していかないと」


藤村 「言われてみればそうだな。最初はもうざっくり半分にふるい分けるか。まずは南半球料理か北半球料理か。俺は南半球料理はなしだな」


吉川 「そういう意味で半分なの? 世界の料理の種類の半分が南半球にある? そもそもなんだよ南半球料理って何も思い浮かばない。代表的なのは何?」


藤村 「アフリカゾウ丼とかカンガルー丼とか」


吉川 「聞いたことないよ! なんで丼にしてるんだよ。料理法が一種類じゃん」


藤村 「どの道、南半球料理はなしだから」


吉川 「それでなにか絞れたか? 俺の感覚では何一つふるいにかけられてない」


藤村 「次は子午線で分けて、日本のある側かアメリカのある側か」


吉川 「そんなワンピースの世界観みたいな区別の付け方したことないよ。いまいちどの国がどっちだったかもすぐ思い浮かばない」


藤村 「さっき南半球は消去したから。アメリカ側はアメリカやカナダとポルトガル。イギリス、フランス、ポルトガルあたりはまたいでるので西側の料理か東側の料理かで別れちゃうな」


吉川 「面倒くせー! 例えばフランス料理を食べるにして、これはどっちだっけ、って考えるの?」


藤村 「イギリスもだよ」


吉川 「イギリスの料理は消去でいい」


藤村 「もう国単位での消去に入ったの?」

 

吉川 「いや、最初から料理に関しては国単位で考えてたよ。普通の人はざっくりとそうじゃない? 和食、洋食、中華、エスニックとかそのくらいで考えるでしょ」


藤村 「そうだったのか。かなり消去したなー」


吉川 「最初からそのくらいなんだよ。お前がやってる世界をグランドラインで分断するような消去法は俺にとっては何一つ消えてない!」


藤村 「ドン!」


吉川 「ワンピースみたいな効果音入れないでよ。そんな名言でもないのに」


藤村 「和食、洋食、中華、エスニックと絞り込んだとして。次はあれかな、過去の料理か未来の料理か」


吉川 「時空で? お前の感覚では未来の料理が選択肢にあるの? 例えば何だよ、未来の料理って」


藤村 「虫の料理とか」


吉川 「まぁ、未来は昆虫食があるとは言われてるよな。食べたくはないけど」


藤村 「あとは合成肉の。ハンバーグ?」


吉川 「ハンバーグ自体は別に過去の料理だろ」


藤村 「サイコロステーキ?」


吉川 「あれも屑肉なんかを成型したやつと言われてるけどな」


藤村 「カロリーメイトとか」


吉川 「なるほど。カロリーメイトもかなり昔から存在してるけどな。あれは未来の料理か」


藤村 「inゼリーとか」


吉川 「言いたいことはわかった。ただ今は食べたいかどうかを決める段階だから未来の料理は?」


藤村 「なしだな」


吉川 「よかったよ。全然未来の料理に食指が動かなかったから」


藤村 「だいぶ絞れたか?」


吉川 「時空の件は全然絞れてないな。もっとざっくりいこう」


藤村 「そうだな。じゃあズバリ、食べられるものか、食べられないものか?」


吉川 「うん、よし。ラーメンにしよう! ラーメンで決定! もうこの話終わり!」



暗転

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る