第20話 集合
翌日指定された坑道の前に行くと、仮設テントに受付が用意されたのでそこに参加証を提示する。
受付のお姉さんは裏の数字を見て名簿にチェックを通し、背後の地図を使って俺が所属するグループの集合場所へ行く様指示した。
「結構な数だな……」
周囲を見渡すと、軽く100人以上は集まっている。
俺の番号が168と考えると、ぶっちする奴を考慮しなければ最低でも168人はいると考えて良いだろう。
まあ広く複雑な坑道内の魔物を全て退治し、かつその巣まで潰そうと言うのだから、大人数なのも当然だ。
複雑な坑道内の全ルートを同時に攻略していかないと、討ち漏らしが出てしまう。
「えーっと……キュレの3番ってここであってますか?」
腕に赤い布を巻いている赤毛の女性に声を掛けた。
赤い布はグループリーダーの証だ。
「番号を見せな」
女性は大柄で筋肉質な体つきだった。
身長は190位あるだろうか。
腕とか肩の筋肉がエグイ。
だが不思議な事にそれだけの筋肉がありながら、身に着けている胸当ての胸元は大きく膨らんでいた。
地球人ならこれだけ筋肉を付けると大抵胸元はぺったんこになるのだが、流石は異世界クオリティだ。
「あ、はい」
参加証を見せると、彼女は顎で横の人達を指した。
彼らが一緒に回るメンバーなのだろう。
「宜しく」
「おいおい兄ちゃん。そんな装備で参加とか、ウォーアント舐めてんじゃねぇのか?」
挨拶したら、髭面のおっさんにいきなり凄まれた。
男は筋肉質な体に、金属製の胸当て等のガチガチの装具類を身に着けている。
方や俺は装備の大半が革製だ。
金属系の装備が思った以上に高かったので、腕につけるタイプの小型の盾以外は革製で妥協していた。
まあ彼から見れば、確かに貧弱な装備と言えるだろう。
「それを言い出したら、あっしだって代わりやせんよ。ヴォークの旦那」
絡んできた男はヴォークというらしい。
口を挟んできた男は小柄――160前後のちょび髭のおっさんだった。
彼も俺と同じで革製の軽装だ。
但し盾は持っておらず、腰には細身のショートソードが刺してある。
「おめーは回避が売りのシーフだろうが?こいつはどう見ても戦士系だ。こんな貧弱装備じゃ、死にに行く様なもんだろうが」
「そん時はそん時でしょう」
ちょび髭は笑顔でサラリと恐ろしい事を言う。
だがまあ同じ仕事を受けたとはいえ、別に仲間や友達ではない。
死んだからなんだと言われれば、確かにそうなのだろう。
「ふん。おい兄ちゃん。死ぬのは構わんが、俺達の足を引っ張るなよ」
それだけ言うと、ヴォーグはのっしのっしと大股で少し離れた場所に行ってしまった。
俺は気を取り直し、他のメンバーにも挨拶する。
「バーンです。今日はよろしくお願いします」
バーンと言うのは勿論偽名だ。
滝谷という本名だとこの世界で浮いてしまうので、この世界用に名を考えた。
「ああ宜しく」
「よろしく頼む」
「……」
メンバーは今の所、リーダーっぽいごつい女性をいれて6人だ。
先程のヴォーグという強そうなおっさんと、ちょび髭のシーフ。
それに座禅を組んでいる軽装の禿げマッチョ――腰にはフレイルが駆けられている。
そしてとんがり帽子を被り、もろ魔法使い丸出しの女の子だ。
因みに女の子には思いっきり無視されてしまっている。
「時間だ。一人来なかったが、まあ6人なら問題ないだろう」
どうやらぶっちした人間が出た様だ。
まあ気にしても仕方がない。
「お前達、荷物を取れ。坑道探索に必要な物資はそこに一通り入ってある」
リーダーの指さす先には7つのリュックが置かれていた。
手にすると、ずっしりとした重量が伝わって来る。
事前の説明では、回復用のポーションや水などの必需品が詰められていると言われていた。
普通はこういった物資は自分で調達するのが常だが、大都市の依頼だけあって至れり尽くせりだ。
「では出発する。はぐれるなよ!付いて来い!」
全員が荷物を背負うのを確認し、リーダーは坑道の入り口へと歩いていく。
俺は黙ってその後に続いた。
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