第29話 思い出の場所へ

エルが記憶喪失になった!!

私の事もロビンの事も覚えてないどころか、私と結婚したり出会った事さえ忘れてしまった!


いーやーー!!

こんなよくある記憶喪失展開!!


いや、雪玉を投げたのは紛れもなく私だけどね!!


ロビンかめちゃくちゃ睨んでるわ!


とりあえず混乱させないよう、私はエルの前で男言葉を使おうと決めた。ロビンにも一応話した。


心配で仕事も手につきやしない!当たりどころが悪くて、このまま一生思い出さなかったらどうしよう!?


と思っているとお父様とホラーツ様が訪ねてきて、久々に私はお父様に腹パンされた!!



「この大馬鹿者がああ!!一体何をした!?さあ、吐け!!」

とお父様は怒りMAXで首絞めてくる!

相変わらず容赦ない親父ね!!


しかし、原因を言ったら確実に息の根を止められるわ!!わざとじゃないのよ!!許してエル!


でもエルは私を見たりロビンを見たりして頰を染める。そりゃあいきなりこんなイケメンと美少年が自分の夫と息子だって言われたら私もそうなるわ。

うんうん、イケメンは得よね。


って言ってる場合じゃないわ!


「お父様…ちょっと落ち着いて…」


「そうだぞ、ゴッド君…」


「ホラーツ様がそう言うなら」


「私の話は無視!?」

だが、エルは


「お父様、私…本当にこの方と結婚し、この子を産んだのですか?何にも思い出せないわ…」

と言う。


「ああ…そうだよ、本当だ、きっとそのうち戻るさエルよ……ところでエル」


「何ですか?お父様」

ホラーツ様が目をキョロキョロさせ


「お前…まさか…記憶喪失になった演技とかをしてないか?」

と言った。ええ!?


「まあ、お父様、いくら私が子供の頃階段から落ちた時に遊びで記憶喪失のふりをしてお父様を困らせた事があると言っても



今回は本当に何も思い出せませんわ。私の記憶は15くらいかしら」

と言ったので皆は仰天した。


「えっ!15歳まで記憶が消えて!?」


「はい、確か私には幼い頃より婚約者がいましたがその方と一度もお会いしたことはないと聞いてましたが、まさか貴方がケヴィン様?」


「そ、そう…です!私が夫になったケヴィンです!!

と言うので精一杯だ。


「成る程、今のエルは15歳で記憶が止まっているのか」

とホラーツ様が考える。

すると医者の先生が


「とにかく、日常生活を続けるしかないですな。この家のことや見知った場所などに行けば…何か思い出すかもしれませんぞ」

と言われて私はハッとした!


「そ、そう…だ!!あの場所ならきっと!きっとエルは思い出してくれる!!」

と確信した!


「お父様?急になんです?」


「心当たりがあるようだね、とりあえずエルの額が治ってからそこへ行ってみるといい」

とホラーツ様が言う。


そしてお父様と


「では、エル。私は帰るとするよ、しっかり療養して安静にしたらきっと家族のことも思い出すから」

と笑う。そしてホラーツ様とお父様がギラリとロビンに目を向けてピクリとするロビン。


「お祖母様達…どうしました?」


「孫可愛い!」

「いつ見てもロビンは可愛いですな!!」

と孫可愛がりが発動した!!


「さあ、ロビン、ちょっと街へ買い物に行こうか!何でも好きなもの買ってあげよう!」


「わしも!ロビン遠慮はしなきてもいいぞ!」

と2人ともロビンを連れて街へ向かったようだ。


先生に薬を渡され、部屋にエルと2人きりになると


「あの場所とはどの場所です?」

と聞かれたので


「私とエルがボートに乗って……口喧嘩をした場所だよ!」

と言うと


「えええ!?な、何で私がケヴィン様と口喧嘩を?私が何かしたのですか?」

と言うので


「い、いやその、まあ…私がボート恐怖症でその……」

なんかそう言えば思い出したら恥ずかしいわ!口論の末、ファーストキスをかました場所だなんて!


でも、思い出すかも!


「とにかく額の怪我が治ったら、一緒に行こうね、ファインハルス家の別荘地にある湖畔だよ」

とエルの手を取ると新鮮なくらい真っ赤になり、もじもじして可愛いったらないわ!


今すぐ襲っちゃいそうだけど我慢しなきゃね!

記憶が戻ったら今度こそロビンの弟が妹を作ってやるわ。エルはロビンが産まれた時、死ぬ思いで産んだから当分無理とか言ってたけどそろそろいいと思うわ。


ロビンもお兄ちゃんになれば少しは丸くなるかもしれないわ。


「あの…一つ聞いていいてすか?」


「何だい?」


「何故、貴方みたいな素敵な方が私のような地味な娘と結婚を?それにずっと私と会った事のないのにどうして?


他に貴方に見合う可愛らしい方は居ると思いますし、その、たくさん…愛人がいてもおかしくないと…」

と言う。そう言えば、エルって…なんか私と出逢う前は私の事めちゃくちゃ遊び人みたいな感じに思ってたとか聞いたことあるわ!


そりゃあ私、引きこもりで昔は男に転生して悩んでたものね。


でもエルと会って少しずつ変わった…。

男の自分も受け入れて今は克服したし、普通にエルが大好きだし…私にとってエルは恩人だしたった1人の唯一なのよね。


「エル…。私は君と出逢って変わったよ。今まで誰とも打ち解けられず心を閉ざしていたんだ。


他の女なんていないよ。エルが唯一だから。だから私を信じてほしい」

と結婚指輪のある手でエルの手を握るとエルも自分の手に結婚指輪があるのに気付いた。


「……これは!」


「そう。私達の証しだよ。ゆっくり思い出して行こう。も、もし思い出せなかった時は…また一から君を愛するよ」


と言うとエルは赤くなり


「……ありがとうございます、ケヴィン様…ロビン君のことも…いつか思い出せるよう…私頑張らなきゃ…」


「ふふふ、そうだね…」

と言う。エルを元に戻すこと、最悪戻らなくてももう一度始めればいい。エルも私の顔好きなはずなのは知ってるし。


とにかくあの湖畔に行かなきゃね!!

と私は決めた。

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